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第1章

第151話 レグリオ王国の歓迎式典・その1

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「──本日はリーグラ王国より、ザラ王女さま、エンジュ王女さまをお迎えいたしての光栄な席です。皆さま、お手元のグラスを掲げてください。」

 レグリオ王国宰相、チャーリー・ウィルソン侯爵がグラスを掲げると同時に、パーティー会場にいた貴族たちがグラスを掲げる。

 レグリオ王国王宮の広間の中に、たくさんの着飾った貴族たちが集まっていた。
 その中に貴賓として、正装したザラ王女、エンジュ王女の姿があった。

 レグリオ王国国王、アイビス・ドゥ・マッカランがグラスを手にして玉座から立ち上がり、高々とグラスを掲げた。

「皆のもの、よくぞ集まってくれた。今日のよき日に、レグリオ王国、リーグラ王国、双方の発展を願って、──乾杯!!」

 乾杯を口にするのは国王だけだ。皆その言葉をきっかけにグラスに口をつけ、女性は周囲の親しいものたちと、男性は商売の話をはじめだす。

「ようこそお越しくださいました。今日のパーティーはお二方の為のもの。どうぞゆっくりとお過ごしください。」

 王妃、マリアンベル・ソユ・マッカランがザラ王女とエンジュ王女に微笑みかけた。
 リシャーラ王国に行く為の経由地であるとはいえ、王族が王族を無視は出来ない。

 面倒な政治の1つではあったが、こうして諸外国のパーティーに参加するのも、王女としての役割なのだ。

「ありがとうございます。光栄ですわ。」
 ザラ王女とエンジュ王女は、笑顔で返事を返した。だが今回ばかりは、エンジュ王女の用事のメインはパーティーではなかった。

「それと、王女さまがお探しの、我が国の優秀な水魔法使いの若者たちを集めました。冒険者にまで広く声をかけましたので、きっとお目当ての方が見つかると思いますわ。」

「──!!ありがとうございます!」
 エンジュ王女は嬉しそうに微笑んだ。
「お手間をおかけして申し訳ありません。」
 ザラ王女は申し訳なさそうにそう言った。

「とんでもないことですわ。聞けばこの国の領域で、お二方を危険な目に合わせてしまったとのこと。ですが、この国の若者がお二方を救ったともうかがいました。」

 マリアンベル王妃はこわごわとそう言った後で、誇らしげにそう言った。
「そのような者は褒美をとらせ、国をあげて保護しなくてはなりません。」

 レグリオ王国としても、他国の王女2人を救った英雄は、外交カードとしてぜひとも探し出したいと考えているようだった。

「それに、わが国でも、ななつをすべしもの探しをしておりましたから、そのおりにエンジュ王女さまのお探しの者を、合わせて探すことなどたやすいことですわ。」

 レグリオ王国の国教も、リーグラ王国、リシャーラ王国同様に、女神アジャリべを信仰する国だ。もちろん多宗教国家として、その他の宗教を信仰することに咎めはない。

「ななつをすべしもの……ですか。わが国でも探しておりますが、次代の勇者さまが、エンジュを救った方の中にいると?」
 ザラ王女がマリアンベル王妃にたずねる。

「それはわかりませんが……、強い力を持つものの中にいることは間違いないでしょうからね。優秀な者たちに声をかけることは、決して損にはならないでしょう。」

 それはそうですわね、とザラ王女もうなずいた。国力を高める為にも、優秀な人材の把握は必要不可欠な事案だ。

「さあ、お探しの者はあちらにおりますわ、ザラ王女さま、エンジュ王女さま、どうぞこちらへお越しください。」

 緊張した面持ちの、正装した若い男性たちが横一列に並ばされて、あちこちにせわしなく目線を走らせている。

 王侯貴族の集まるパーティーなど、参加したこともないような者たちが大半だ。緊張するなというのも無理というものだろう。

 全員がそれなりの見た目をしているのは、エンジュ王女が自身の救い主を、カッコいい若い男性だと評したからだ。

 全員王女を救った心当たりなどあろうはずもないのだが、王女もしくは、王女が駄目でも貴族令嬢となにがしかの可能性があることを期待して、集まった者たちばかりだった。

 ズラリと並べられた若者たちを見て、マリアンベル王妃はこの中に確実に、2人の王女を救った者たちがいると信じて疑わず、内心ニンマリとしていた。

 ザラ王女はナムチャベト王国王太子に嫁ぐことが決まってしまったが、広大な敷地を持つリーグラ王国の王女を狙っているのは、レグリオ王国とて同じことだ。

 救い主が平民であったなら、降嫁することは叶わないかも知れないが、並べられた若者たちの中には貴族の令息もたくさんいる。

 そのうちの誰でもいい。エンジュ王女を救っていさえすれば、婚姻を打診することが可能だ。なんなら1代限りの貴族籍を与えてもいいし、貴族の養子にさせてもいいだろう。
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