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第1章

第150話 気になっていた焼肉屋さん

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「お二方は、いつもアレックスさまを手助けしてくださっているのですよね?今日はわたくしからごちそうさせてくださいませ。」

「ホント!?」
 ルークくんはそう言って、パアッと顔を輝かせたあとで、ミアちゃんの表情をうかがった。ミアちゃんも逡巡してるみたいだ。

「いいんじゃないかな?僕も行くからさ。」
 僕がそう言うと、2人の表情が明るくなった。僕らはオフィーリア嬢の誘いで、市場の入口に最も近い焼肉屋さんに向かった。

 ずっと気になってたんだよね!
 焼肉屋さんてどんなお店なんだろう?
 黒塗りの壁と柱が遠くからでも目立つ感じで、とってもいい匂いがいつもしてるんだ!

 入口でグレースさんが、6名です、と店員さんに告げると、店員さんが奥の個室へと案内してくれた。貴賓室ってわけじゃないみたいだけど、とってもキレイな内装だったよ。

「この網の上で各自肉を焼くのです。」
 とジャックさんが教えてくれる。
 へえー!こんな食べ方はじめてだよ!

 肉はグレースさんにおまかせすることにした。店員さんが次々と生肉とタレと取り皿を持って来てくれる。

「ミノタウロスのタンです。こちらは左からミノタウロスの脇肉、もも肉、腕肉、頬肉、こちらはミノタウロスの腸になります。」
 腸!?内臓を食べるの!?

 僕が驚いていると、
「とても美味しいんですのよ。わたくしこれがとても好きですの。」
 とオフィーリア嬢が笑顔でそう言った。

 オフィーリア嬢がそう言うのなら美味しいんだろうね。タンはかるく炙ったくらいで食べるのがいいらしい。軽く塩を振ってもいいし、タレで食べてもそこはお好みらしい。

「──美味しい!!」
 ミノタウロスの腸も美味しいけど、僕はタンのほうが好きかも!タレよりも塩だね!うん!塩も白くていい塩を使ってるみたいだ。

 僕の出した塩に似てるかも?
 そう言えば商人ギルドに店舗を借りに行った時に、塩を頼まれていたっけ。後で商人ギルドに立ち寄らないとなあ。

 ミアちゃんもルークくんも、美味しそうにモリモリ食べていた。みんなにも食べさせてやりたいな……、ってポツリと言うところがルークくんの優しいところだよね。

 2人がやっていた魚屋さんだって、みんなのご飯の為だって言ってたもんね。自分たちだけがお腹いっぱい食べられたら、それでいいとは思っていないみたいだ。

「申し訳ありませんが、塩はこちらで終了です。残りはタレでお楽しみください。」
 追加の肉を持って来てくれた店員さんがそう告げる。

「あら、そうなんですの?残念ですわ。」
「ここの塩は1級品ですからね、そう簡単には手に入らないのでしょう。」
 とジャックさんが言っている。

 まさか……ね。
「オフィーリア嬢、用事を思い出してしまいまして。食事の途中で大変申し訳ないのですが、少し抜けてもよろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ。かまいませんわ。」
「2人はこちらで見ていますので。」
「すみません、よろしくお願いします。」

 僕は慌てて商人ギルドに駆け込むと、頼まれていた塩を持ってきました、と告げた。
 今回は前回の5倍で、塩の入った小袋が5つ。1つ大金貨2枚だから小白金貨1枚だ。

 代金を受け取って、急いで焼肉屋さんに引き返すと、何ごともなかったかのように食事を続けた。すると、店員さんが、塩が入荷しましたのでお持ちしました、と入って来た。

 ……やっぱりかあ……。
 あんな高い塩、どこが買ってるのかと思っていたけど、そのうちの1つがこのお店だったらしい。確かに肉に塩、大事だよね!

 ミアちゃんとルークくんは、なにも知らずに食べているけど、ミノタウロスって、Aランクの魔物で、買い取りがとってもお高いって冒険者ギルドの掲示板に書かれていたよ。

 そんなお高い肉を食べるお客さんだもの、神の塩くらい使うよね。
 それにしても、ここ、いくらするんだろ、Aランクの肉とか高そうだなあ。

 毎回こんなご飯を食べてるってわけじゃ、さすがにないだろうけどね。はじめたばかりの冒険者で、そこまで稼げるとも思えないもの。ヒルデも経費がかかると言ってたし。

 とっても美味しかったから、今度叔父さんと来てみたいな。ヒルデも冒険者ギルドに呼ばれて連れて来れなかったし、ミーニャはもちろん、レンジアも連れて来てあげたい。

 そういえばレンジア、今日はお店出してなかったな。僕についてくる必要があるからお休みなのかも。こんな美味しいお肉を食べてる僕らを、どこかでただ見てるのかな?

 だとしたら、王家の影の仕事って辛いなあ……。人が豪華なごちそうを食べているところを、ただ眺めているだけだなんて。
 うん、レンジアは絶対つれてこよう!
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