スキル【海】ってなんですか？ 使えないと思っていたユニークスキルは、海にも他人のアイテムボックスにも入れる規格外の力でした。

第１章

第138話 パーティー未参加のＤランク冒険者リスト

「彼らのランクが低すぎて、２人以上Ｄランク以上がいないと、荷物持ちとしても参加させられないと言われたの。まあサイクロプスはＣランクだから、仕方がないんだけど。」

　私がＡランクだったら関係なかったんだけどね、とヒルデが言った。１人でも余裕で倒せるランクがメインのパーティーなら、他の人のレベルは関係ないらしい。

　僕と叔父さんの場合は、叔父さんが１人でも余裕のＳランクだから、どんなクエストでも関係がないってことか。

　叔父さんも、パーティーリーダーのランクが、受注の際には影響すると言ってたっけ。
　ほぼＢランクのヒルデでも、守りながらの戦闘となると確かに厳しいよね。

　ヒルデは１人でもサイクロプスを倒せるけど、さすがに群れともなると、無理と判断されたんだそうだ。

「だから急遽募集をかけることになって、その手続きに時間を取られたってわけ。
　ごめんなさい。こっちの都合で。」

「あ、ううん、だいじょうぶだよ。」
「ありがと。でも、めぼしいＤランクは大体よそのパーティーに加入しちゃってるから、難しいと思うのよね……。」

「そっかあ……。」
　このあたりに、パーティーに加入していない、Ｄランク以上の冒険者はいないのかな？

【回答、現時点でパーティーに加入していないＤランク以上の冒険者のリスト。
　アレックス・キャベンディッシュ。Ｄランク冒険者。以上です。】

　僕の疑問に情報の海さんが教えてくれる。
「あ、そっか、僕か……。」
　この間のニナナイダンジョンの討伐で、Ｄランクに上がったんだっけ。

　というか、そんなことまでわかるんだ！
　本当に情報ならなんでもわかるんだ。
　なんなら情報ギルドに入れちゃうかも？
　
　ちなみに情報ギルドっていうのは、王家の影が王家専門の諜報部隊であるなら、一般向けの諜報組織ってとこだね。

　お金をだせば情報が買える。優秀なところは貴族や商人も商売の為に使ってたり、戦争当時は国も依頼してたとかなんとか。

　専門のスキルを持った集団の集まりだというから、普通なら僕なんて、決して入れる場所ではないんだけどね。

　僕の言葉に、ヒルデがバッと振り返る。
「Ｄランク！？あんたＤランクになったの？
　聞いてないんだけど！」

　そう言えば内緒にしてたんだった。
　地道に頑張ってきてたヒルデに言い出し辛くて、なんとなく黙ってたんだよね。

「あ、うん、実は……。」
「いつ！？」
「こ、こないだ叔父さんと、ニナナイダンジョンに行った時に……。」

「──まさか、寄生狩りをしたの？
　あなた、元貴族だものね。」
　確かに貴族はそういう人が多いけど。

「ち、ちがうよ！叔父さんはあくまでも僕の安全の為にそばで見守っててくれただけで、僕１人で狩りをしたもの！」

「そ。ならいいわ。
　私寄生狩りとか、嫌いなのよね。
　彼女らも貴族だけど、連れて行って欲しいだけだというから承知したのよ。」

　オフィーリア嬢たちのことだね。
　まあオフィーリア嬢はしないだろうなあ、寄生狩りは。寄生狩りでレベルを上げると、レベルだけあって戦えない人になるからね。

　身の回りの世話こそ、令嬢らしく人に任せるけど、そういう張りぼてで威張る人のことを、彼女はとても嫌っていたしね。

「だったら、私たちと狩りをしない？
　新しく従業員を雇うんでしょ？
　店舗を始める前から、店は人に任せたら？
　練習がてらって感じで。」

　まあ、確かに、ザックスさんが来るまで店は始められないけど、いきなりする前に練習して慣れてくれたほうが僕も安心だなあ。
　今なら品数も少ないわけだしね。

「ラナおばさん、もしも店舗の前から、お店を任せたいと言ったら、息子さんたちにお願いすることって出来ますか？」

「ああ、こっちはいつでも構わないよ。
　もう畑を手助けしてくれる人手は、既に雇ってあるからね。」

　そうなんだ！まあ、農家のほうも、いきなり息子さんたちがいなくなる前に、新しい人たちに慣れて貰おうってことなのかな。

「そしたら、叔父さんに聞いてみます。
　叔父さんがだいじょうぶなら、明日か明後日にでも、サイクロプス狩りに行こうよ。
　帰りに聞いてみるからさ。」

　いきなり店を任されたとしても、お金の数え間違いくらいはあるかもだけど、今は３つの商品しかないわけだしね。

　これをまわせないのなら、たくさん種類を置く予定の店なんて、絶対に無理だよ。
　だから練習にもちょうどいいと思うよ。

　私も見ててやるよ、うちの息子たちの大事な出発点だからね、とラナおばさんが請け負ってくれたこともあって、僕は店を人に任せて狩りに行きたいと聞いてみることにした。