上 下
63 / 486
第1章

第118話 リアムに再会する為に

しおりを挟む
「……僕たちはどうなるの?」
 ルークくんが心配そうに見上げてくる。
「もちろん2人にも引き続きお願いするよ。僕の店を助けてくれる?」

 目線の高さにしゃがんでそう言うと、心配そうにしていたルークくんとミアちゃんが、パアアッと明るい笑顔になった。

「もちろんだぜ!売りまくってやるよ!」
 ルークくんが拳を握って僕を見上げる。
「頼もしいな、よろしくね。」
 僕はルークくんたちにお礼を言った。

 ラナおばさんの息子さんたちが来てくれることになったから、僕は帰り道で正式に店舗を借りる申込みをすることにした。

 正直買えるお金はあるけど、さすがに店舗を買うのはやめたよ。この先もずっとここの場所で商売するかもわからないからね。

 あくまでもお試しのつもりで場所を決めたんだ。ちなみに、ラナおばさんの肉の焼串屋の向かいの店舗だ。常連さんがいるし、急に場所が変わるよりいいかと思ったんだよね。

 それにラナおばさんの店にも、僕の魚屋さんからお客さんを流しやすいからね。
 おばさんが肉の焼串屋さんを続けるつもりなら、そのほうが絶対にいいもの。

 この市場は、レンガのある壁際にそって露天が並んでいて、その反対側に店舗があるんだ。マジックバッグとか、魔道具店とか、そういうお値段のする商品の店ばかりだ。

 食べ歩きになる露天と違って、ちゃんとテーブルに座ってご飯の食べられる、レストランなんかもたくさんあるよ。

 高級なところと違って、もう少し平民が入りやすいお店っていうのかな。ラナおばさんやポーリンさんたちも、そこでたまの外食を家族で楽しむことがあるみたいだよ。

 だけど借りやすい露天とは違って高いからね。ずっと空いてる店舗があるなとは思ってたんだ。露天は短期間しかこない商人もいるから、入れ替わりで空くこともあるけど。

 そういうのと違って、ずっと扉が閉まってて人の気配がない感じっていうのかな。やってないんだなってひと目で分かるんだ。

 買ったほうが良ければ買うし、そうじゃなければこのまま借りてやるつもりだ。
 ひょっとしたら今の場所より、いい場所に移れるかも分からないからね。

 市場の入口近くの1番いい場所でも、借り賃は変わらないから、みんな当然そこに入りたいけど、そこに入る為には審査があるらしい。市場の為になるかどうかが大切なんだ。

 1番入口に近いお店は、馬車や馬を預けられるお店だ。遠くから来るお客さんが来やすくなるから、これは当然だね。この為に設計したと思える建物の造りをしてるんだ。

 2番目に近いお店は焼き肉屋さんだ。ここが食べ物屋をやっている中で、1番いい場所だと思うよ。焼き肉っていう料理方法は初めてだけど、いい匂いがして興味がひかれる。

 匂いって大事だよね。入口近くにあることで、たくさんお客さんを引き付けてる気がするな。気になってはいるけど、いっつもお客さんが並んでて、入ったことはないんだ。

 店舗はもともと、料理が出せるところはそれ用に設計されてて、そうじゃないところだと、厨房が存在しないんだ。

 僕の借りる予定のところは、最初から厨房がないタイプのところだから、中で料理なんかは出来ないんだよね。

 ラナおばさんに中で魚を焼いてもらおうかとも思ったんだけど、そもそも厨房があるタイプの店舗に、今はあきがなかったんだ。

 やっぱり食べ物屋さんは人気みたいだね。
 アルムナイの町と比べても、バッカスの村の市場のほうが、食べ物屋さんが多い気すらするよ。敷地面積は全然違うのにね。

 新鮮な野菜とかが手に入るから、このあたりのレストランでは、市場唯一の生鮮食品店から仕入れをしているらしいよ。

 たくさん物を運べるようなマジックバッグはどうしても高いからね。小売の価格を考えたら、例えば小さなマジックバッグをたくさん用意するとしても費用対効果が合わない。

 小売の商売をしている人が、たくさん、または大きなマジックバッグを買えるだけのお金を、用意するのは難しいからね。そこまでかせげたら、そういう商人もいるけど。

 キャベンディッシュ侯爵家に食材をおろしているのは、そういう卸問屋だ。貴族の要望にそった商品を色々用意することが出来る。

 それをすることが出来る、巨大な資本を持つ商人だけが、卸問屋って仕事につくことが出来るものなんだそうだ。

 安定供給がはかれること、小売と違って掛け売りに対応出来ること、たくさん人が雇えること。他にも色々。そういう色んな条件をクリアしなくちゃならないんだ。

 だけど僕がキャベンディッシュ侯爵家に出入りできる商人になって、定期的にリアムに会えるようにする為には、この卸問屋ってやつに、最終的にならなくちゃならないんだ。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。