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第1章
第111話 貴族制度の違いと冒険者の叙爵
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「ただ、エンジュがそれで納得してくれればよいのですが。……時間をかけて説得するしかありませんが。ですが、あんなにも恐ろしい目にあったのです。恐らくは……。」
──?
なんでザラ王女さまは、僕の顔をジロジロと眺めているんだろう?
「あなたさまは、ラウマン卿のご子息でいらっしゃいますか?」
ザラ王女さまが首を傾げて僕を見る。
「いえ。僕は甥です。アレックス・キャベンディッシュと申します。」
僕は叔父さんと同じように、胸に拳を当ててお辞儀をした。
「まあ……!火魔法使いの名家ですわね!
お会いできて嬉しく思います。」
両手のひらをパチンと合わせて、嬉しそうに微笑んで下さるザラ王女さま。
やっぱりキャベンディッシュ侯爵家は、火魔法使いとして国内外で有名なんだなあ。
リーグラ王国でも知られているんだね。
「僕も嬉しく思います、ザラ王女さま。」
僕も笑顔を返した。こんな美人に会えて嬉しいと言われたら、普通に嬉しいよね。
「……それで、その……、キャベンディッシュ令息は、エンジュにお顔を見られませんでしたでしょうか?」
「──?
さあ。分からないです。」
「そうですか……。もしも見られていたら、ご要望にそうのは難しいかも知れません。」
なんで?
「出来るだけ説得は試みさせていただきますが、もしもそうなってしまった場合の為に、別の対応もお考えいただいたほうがよろしいかと存じます。きっとエンジュは、あなたさまの行方を追うことでしょうから。」
まあ、命の恩人ともなると、必ずお礼は言いたいよね。僕だって探すと思うな。
だけどそうなると困ったな……。
クラーケンさえいなければ、そっと船をレグリオ王国の近くまで運ぶだけのつもりだったのに。なんでこんなことに……。
「他国とはいえ、あなたさまは貴族。
王族からの要請があれば、エンジュの要求を断ることは出来ないでしょうし。」
「──あ、実は僕はもう、平民なんです。」
「え?」
「単に貴族籍を抜くのが間に合っていないだけで、僕は跡取りではありませんので。」
ああ、だから……、と、僕の平民服を見ながらザラ王女さまが言う。
叔父さんほど、貴族の雰囲気がまだ抜けてないんだろうな、僕は。
「リシャーラ王国は、後継者のみが貴族籍をつぐのでしたね。財産を分散させない為に。
我が国では後継者以外の貴族令息には、次男以降も僻地に領地があれば領地を、領地がない場合でも、一代限りの準男爵位を与えるものですから、その感覚でおりました。」
「我が国も今でこそ大国と言われてはおりますが、リーグラ王国に比べれば、まだまだ後進国です。鉱山こそ豊富ですが領地は狭い。
領地経営にじゅうぶんな領地を与えるとなりますと、どうしてもそうなります。」
叔父さんがザラ王女に言う。
リーグラ王国はそういう感じなんだね。さすが1、2を争う広大な敷地面積を持つだけあって、分け与える土地も多いんだろうな。
「……まあ、名ばかりの準男爵位を与えられたところで、貴族らしい暮らしが出来るわけではないですものね。平民より少し扱いがよくなる程度と聞いております。」
「平民の暮らしもよいものですよ。何より金さえ稼げば何ものにも縛られなくてよい。」
と叔父さんが嬉しそうに言う。
「リーグラ王国の準男爵の暮らしぶりを聞きましたが、貴族としての特権がなく、わずかな金で静かに暮らさなくてはならない。つける仕事も制限される。俺はごめんですね。」
「そういうものでしょうか……。」
自国の制度を批判されて、ザラ王女さまが戸惑っている。──叔父さん大胆過ぎない?
「確かに衣食住は保証されますが、一発逆転を狙えない。男なら自分の道は自分で切り拓きたいものです。俺も元貴族ですが、俺は放逐されて良かったと思っていますよ。」
「それでこんにちまで、叙爵を断られていらっしゃるのですか?……自由でいる為に。」
とザラ王女さまが言う。え?どゆこと?
「確かSランクになって3年で准男爵。
5年で男爵。7年で子爵。10年で伯爵。
15年で侯爵でしたわよね?
以前おうかがいしたお話ですと。」
──え!?そうなの!?
叔父さんがSランクになって何年経つのか知らないけど、望めば貴族に戻れたんだ!
「冒険者の数のほうが、貴族の数よりも多いですからね。有能な平民を取り込みたい国側と、冒険者の地位向上をはかった冒険者ギルドで、昔取り決めたらしいですね。」
まあ、だからこそ俺を王族の護衛に雇えたわけですが。と叔父さんは言った。つまり他国の冒険者であっても、貴族扱いで、何かあったら叔父さん自身が保証しろってことか。
──?
なんでザラ王女さまは、僕の顔をジロジロと眺めているんだろう?
「あなたさまは、ラウマン卿のご子息でいらっしゃいますか?」
ザラ王女さまが首を傾げて僕を見る。
「いえ。僕は甥です。アレックス・キャベンディッシュと申します。」
僕は叔父さんと同じように、胸に拳を当ててお辞儀をした。
「まあ……!火魔法使いの名家ですわね!
お会いできて嬉しく思います。」
両手のひらをパチンと合わせて、嬉しそうに微笑んで下さるザラ王女さま。
やっぱりキャベンディッシュ侯爵家は、火魔法使いとして国内外で有名なんだなあ。
リーグラ王国でも知られているんだね。
「僕も嬉しく思います、ザラ王女さま。」
僕も笑顔を返した。こんな美人に会えて嬉しいと言われたら、普通に嬉しいよね。
「……それで、その……、キャベンディッシュ令息は、エンジュにお顔を見られませんでしたでしょうか?」
「──?
さあ。分からないです。」
「そうですか……。もしも見られていたら、ご要望にそうのは難しいかも知れません。」
なんで?
「出来るだけ説得は試みさせていただきますが、もしもそうなってしまった場合の為に、別の対応もお考えいただいたほうがよろしいかと存じます。きっとエンジュは、あなたさまの行方を追うことでしょうから。」
まあ、命の恩人ともなると、必ずお礼は言いたいよね。僕だって探すと思うな。
だけどそうなると困ったな……。
クラーケンさえいなければ、そっと船をレグリオ王国の近くまで運ぶだけのつもりだったのに。なんでこんなことに……。
「他国とはいえ、あなたさまは貴族。
王族からの要請があれば、エンジュの要求を断ることは出来ないでしょうし。」
「──あ、実は僕はもう、平民なんです。」
「え?」
「単に貴族籍を抜くのが間に合っていないだけで、僕は跡取りではありませんので。」
ああ、だから……、と、僕の平民服を見ながらザラ王女さまが言う。
叔父さんほど、貴族の雰囲気がまだ抜けてないんだろうな、僕は。
「リシャーラ王国は、後継者のみが貴族籍をつぐのでしたね。財産を分散させない為に。
我が国では後継者以外の貴族令息には、次男以降も僻地に領地があれば領地を、領地がない場合でも、一代限りの準男爵位を与えるものですから、その感覚でおりました。」
「我が国も今でこそ大国と言われてはおりますが、リーグラ王国に比べれば、まだまだ後進国です。鉱山こそ豊富ですが領地は狭い。
領地経営にじゅうぶんな領地を与えるとなりますと、どうしてもそうなります。」
叔父さんがザラ王女に言う。
リーグラ王国はそういう感じなんだね。さすが1、2を争う広大な敷地面積を持つだけあって、分け与える土地も多いんだろうな。
「……まあ、名ばかりの準男爵位を与えられたところで、貴族らしい暮らしが出来るわけではないですものね。平民より少し扱いがよくなる程度と聞いております。」
「平民の暮らしもよいものですよ。何より金さえ稼げば何ものにも縛られなくてよい。」
と叔父さんが嬉しそうに言う。
「リーグラ王国の準男爵の暮らしぶりを聞きましたが、貴族としての特権がなく、わずかな金で静かに暮らさなくてはならない。つける仕事も制限される。俺はごめんですね。」
「そういうものでしょうか……。」
自国の制度を批判されて、ザラ王女さまが戸惑っている。──叔父さん大胆過ぎない?
「確かに衣食住は保証されますが、一発逆転を狙えない。男なら自分の道は自分で切り拓きたいものです。俺も元貴族ですが、俺は放逐されて良かったと思っていますよ。」
「それでこんにちまで、叙爵を断られていらっしゃるのですか?……自由でいる為に。」
とザラ王女さまが言う。え?どゆこと?
「確かSランクになって3年で准男爵。
5年で男爵。7年で子爵。10年で伯爵。
15年で侯爵でしたわよね?
以前おうかがいしたお話ですと。」
──え!?そうなの!?
叔父さんがSランクになって何年経つのか知らないけど、望めば貴族に戻れたんだ!
「冒険者の数のほうが、貴族の数よりも多いですからね。有能な平民を取り込みたい国側と、冒険者の地位向上をはかった冒険者ギルドで、昔取り決めたらしいですね。」
まあ、だからこそ俺を王族の護衛に雇えたわけですが。と叔父さんは言った。つまり他国の冒険者であっても、貴族扱いで、何かあったら叔父さん自身が保証しろってことか。
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