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第1章

第104話 再びレグリオ王国へ

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 Cランク以上は、試験の免除は存在しないから、が理由らしい。ほんとならそれ以上の実力を既にお持ちなんですけどね、と眉を下げて申し訳なさそうに職員さんが言った。

 僕の実力はスキル頼みだから、普通に戦ったら勝てないと思うんだよね。さすがに今のままじゃ、Cランクは厳しいと思うよ。

 というか、これ以上あげるつもりもないから、別にそれはいいんだけど。ヒルデに知られたら、ちょっと面倒そうだなあ。
 ヒルデは真面目に地道に頑張ってるもの。

 精算が終わって、新しくDランクの冒険者認定証を受け取って冒険者ギルドを出ると、僕は気になっていたことを叔父さんに言おうとした。

「リーグラ王国のお姫さまたちのことか。」
 僕が何も言わなくとも、叔父さんはそれを察して先に僕にそう言ってきた。

「わかるの!?」
「さっき話を聞いてから、それだけソワソワとしていればな。」
 ハア、と叔父さんがため息をついた。

「船なら海にあるものだよね。スキルの力で、船を出せないかと思ってるんだ。」
「出してどうする。」

「どうって……。それで遭難している場所から安全なところに移動出来たらなって。」
「リーグラ王国の王族や船に乗っている人間たちに、スキルをわざわざ知らせるのか。」

「それは……。」
 この国の王族にもまだ隠しておこうとしているのに、知られるのは確かにまずい。
 それはそう、なんだけど……。

 叔父さんは腕組みをしながら、僕の言葉を待っているみたいに、じっと僕を見つめて黙っていた。

「ニナナイダンジョンの、リザードマンがきたフロアに隠せば、いずれ船がダンジョンに飲まれて消えるんじゃ……。」

「今あそこには、アルムナイの冒険者ギルドから人が入っている。今回のことで、冒険者ギルドの管理下に置かれるまで、封鎖されるだろうな。それに船の中の人たちに気付かれずに、どうやって船から下ろすんだ。」

「ええと……。」
 叔父さんは僕に何を求めてるんだろう?
 ──そうだ!!

「時空の扉!!時空の扉の、レグリオ王国の騎士のアイテムボックスから、レグリオ王国まで飛んで、そこの海に船で出て、安全な海の上に船を出すのはどうかな!」

「……いいだろう。行こう。」
「やっぱり無理だよね……って、えっ?」
 まさか叔父さんが認めてくれるとは思わなくて、僕は思わず目をパチクリとさせた。

「海には昔から、不思議な空間が存在すると言われていてな。突然船が行方知れずになったり、突然現れたりすることのあるものなんだ。消えた船が突然レグリオ王国近くに現れたとしても、少しも不思議じゃない。」

「──叔父さん……!!」
「ニナナイ村近くの森の中に隠れて、アイテムボックスの海を出そう。急ぐぞ。」

「うん!!」
 僕と叔父さんは、もと来たニナナイ村へと走り出していた。

 ニナナイ村の森の中で時空の海の扉を出現させると、急いで95番目の扉へと駆け下りる。アイテムボックスの中で時空の扉を出現させ、再び丘の上へと降り立った。

「海までは遠い。辻馬車を捕まえよう。」
 叔父さんの助言でふもとに降りると、たまたま近くを通っていた辻馬車を捕まえて、港の近くまで運んで貰うことにした。

 海の近くまで辻馬車で移動して、昔母さまと旅行に来た時にも乗った、貸船屋さんで船を借りると、叔父さんが船を動かした。

 魔道具を使って動く船だから、船員さんがいなくとも、自分たちで動かすことが可能なんだ。叔父さんは小舟なら操れるからね。

 そういうお客さんもいるから、貸船屋さんは代金を受け取ると、いってらっしゃいと脱いだ帽子を振っておくりだしてくれた。

「陸地から見えないところまで移動するぞ。
 そこで船を海に出すんだ。」
「わかった!」

 叔父さんが全速力で船を沖に進めていく。
 そしてちらりと陸地を振り返ると、
「ここまで来ればいいだろう。
 アレックス、船を出してくれ。」

「わかった!
 ──生命の海、リーグラ王国の遭難した、王女さまたちが乗った船を出して!!」

 僕には船の形は分からないけど、今の僕のスキルは、名称指定したものを取り出すことが出来るんだ。これで名称指定したことになるのかは、正直賭けだけど……。

  ──その時、僕の目の前が発光する。
 思わず目をつむると、眩しい光の奔流に包まれていくのを感じた。

 目を開けると、そこには僕よりも背の高い木で出来た扉があって、手も触れていないのに、扉が勝手に開いていく。

 そしてその扉からはみ出る、というか、まるで通るとは思えない、巨大で豪華な木の船が、なぜか斜めになった姿で、ゆっくりと見える、でも早い速度でこちらへやって来た。

「な、なんなの!?これ!?」
「こりゃあ……、クラーケンか!!」
 僕と叔父さんは、生命の海の扉から出てきた船の船体を見て、驚いて目を見開いた。

 船は船だけじゃなかった。その船体を抱きしめるようにへばりついた、巨大なクラーケンに、全体を絡め取られていたんだ。
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