上 下
94 / 504
第1章

第94話 1万体のリザードマン

しおりを挟む
 マジックバッグにスクロールをしまうと、更に下の階へと進んだ。階段をいくつか降りると、かなり開けた明るい場所に出た。
「まぶしっ……!」

 さっきまで薄暗かったから、突然明るくなったことで、かなりまぶしく感じる。
 夏草の匂いがする草原が広がってて、そこが地下であることを一瞬忘れさせられる。

「え……空?」
 天井にはまるで雲ひとつない空が広がってるみたいで、外に出ちゃったのかな、と僕は一瞬勘違いしたくらいだった。

「初めて見るとそう思うよな。
 ここは単なる天井だ。ダンジョンにはこういう場所もあるのさ。もちろん実際に外につながっているケースもあるぞ?」

「へえー……。」
 かなり奥のほうに視線を向けると、なにやら武器を持ってウロウロしている、大勢のリザードマンたちの姿があった。

 僕よりかなり背丈が大きくて、なんなら叔父さんよりも大きいものがいる気がする。
 素早さこそダイアウルフの方が早いけど、力はリザードマンの方が強いんだ。

 おまけにそれが武器と防具を身に着けているんだから、本来の僕1人の力じゃ絶対に倒せるような相手じゃなかった。

 リザードマンには階級があるのか、武器だけを携帯していて防具のないものもいた。
 兜をかぶっているのもチラホラいるね。

 兜をかぶっているリザードマンの数は少ないから、恐らく隊長格なんだと思う。
 うわあ……、おっかないなあ……。

 兜をかぶっているリザードマン1体に対して、武器と防具を身に着けているのがおよそ30体、武器だけを携帯しているのが70体ってとこかな?100体で1つの小隊だ。

 その兜をかぶっているのが、ぜんぶで100体いるわけだから、ここには1万体以上のリザードマンの群れがいるってことだよ。

 叔父さんが、兜をかぶっているのがリザードマンリーダーというちょっと強いやつで、兜のない鎧を身に着けているのは、普通のリザードマンの一種だと教えてくれる。

 僕らに気が付いた、遥か遠くの方にいたリザードマンたちが、ギャギャギャ!となにやらわめいているのが聞こえてくる。

 すると、1番奥のほうにいた大っきなリザードマンが何かを叫んだかと思うと、リザードマンたちが一斉にこちらに走って来た!!
 たぶんあれが奴らの1番上なんだろうな。

 鎧も1番豪華なのをつけてるね。
 叔父さんが、あれがボスリザードマンという、強いが臆病な個体だと教えてくれる。

 弓を持ったリザードマンは、僕らがこちらに向かって来た時の為か、弓を引いた状態で構えて待っていた。

 リザードマンたちはものすごい勢いでこちらに近付いてくる。とてもじゃないけど、ダイアウルフと同じやり方は通用しない。

「──あいつらを1度に倒してみるんだ。」
「ええっ!?無理だったらどうするの!?
 あいつらが一気に向かって来るよ!?」

 1万体ものリザードマンを、僕の力で1度に倒せるとは到底思えないし、ましてや僕のスキルは1発1発に時間がかかるのに!

「その為の俺だろう。いいからやってみろ。
 デビルスネーク・亜種を倒したんだ、威力さえあれば、出来る可能性がある。」

 叔父さんはリザードマンくらいなら、1万体でも造作もないってことなのかな?
 これがSランクの自信なんだ。

 よ、よおし……。
 僕は忘れずにスキル経験値2倍のスクロールを発動させた。スクロールは違うジャンルのものなら重ねて使うことが出来るものだ。

「来い!大津波!!!」
 僕はデビルスネーク・亜種を倒した時以上の、巨大な波をイメージして、スキルを発動させた。僕の目の前が発光する。 

 眩しい光の奔流に包まれて、僕よりも背の高い木で出来た扉が現れて、手も触れていないのに、扉が勝手に開いていく。
 僕は弓を構えてリザードマンへと向けた。

 そこへ、
「お、やってるやってる。」
「なんだ、さっきのあんたらか。」
 ──さっきの乱暴な2人組みだ!

「おい、さっさとこの場を譲れよ。
 さっき俺たちが譲ってやっただろう?」
 彼らは懲りることなく、ニヤニヤしながら僕にそう言ってきたんだけど。

 僕は叔父さんと目線を合わせて、こっくりとうなずき合い、はっきりと、
「嫌です。ここは僕たちが先なので。」
 とリザードマンの方を向いたまま言った。

「なんだあ……?急に強気じゃねえか、このお坊ちゃん。さっきまでオッサンの後ろでビクビクしてた癖によ。」

「まったくだな、ちょっとダイアウルフごときを倒したせいで、自信でもつけたか?
 ダイアウルフは倒せても、俺たちは倒せないって、さっき見てて分かっただろ?」

 2人組があきれたように言ってくる。
 そうだね。さっきまでの僕なら、当然それが正解だよね。戦い方も知らずに挑むには、彼らはじゅうぶんに強い冒険者だもの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...