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第1章
第88話 ダンジョンの決まりごと
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「マナーとして、先に攻撃を始めたほうに優先権があるが、ああして無視するやからも多い。戦って勝てる相手じゃないなら、譲るしかないんだ。──死にたくなければな。」
「そうなんだ……。」
なんか理不尽だなあ。
獲物を奪われたパーティーの人たちも、諦めて他に行くみたいだ。
「クエストを受けていれば横取り禁止だが、ダンジョン内のルールなんて、あってないようなものだからな。冒険者ギルドの目が届かない場所なんて、そんなものだ。」
叔父さんはそう言って先に進む。僕らは下に行く必要があるから、0階のフロアを抜けて、そのまま階段を降りた。むしろ2人組が引きつけてくれていたから楽に抜けられた。
「だが、ダンジョンの中だからこそ、世間のルールが通じないことが、誰かのメリットにもデメリットにもなるんだ。」
「──どういうこと?」
僕は叔父さんの言っている意味がわからなくて、首をかしげて叔父さんを見上げた。
「アレックス、ダンジョンでパーティーを組まなくてはならないのは、なぜだと思う。」
「……危ないから?」
「それもある。森の中と違って身を隠せる場所や、盾にしながら戦える場所があるわけでもないからな。だがそれが理由じゃない。」
「うーん……。助けを呼べないからとか?」
「そうじゃない。冒険者ギルドの目が届かないし、ダンジョンの中で人殺しがあっても不問にされるからだ。なぜなら死体も目撃者も出てこないからな。それが1番の理由だ。」
「怖っ……。」
「その決まりが出来るまでは、殺したい相手をダンジョンに連れて行って、中で始末したと思われる事件があいついでな。」
「だからルールを作ったの?」
「ああ。殆どのダンジョンは冒険者ギルドが管理をしている。町の管理下にあるダンジョンも、冒険者ギルドに報告が必要なんだ。」
「そこで誰と誰がダンジョンに一緒に入ったかを把握するようにした、ってことだね?」
「そうだ。1人以上が戻って来なかった場合は、冒険者ギルドで捜索隊を派遣する。」
「──戻って来なかった人を助ける為に?」
「助けられる場合は助けるが、主には遺体を探す為だな。1日やそこらじゃ、ダンジョンに遺体は飲み込まれないからな。」
「……人殺しをしてないかっていう、確認の為ってこと?魔物にやられたのか、人間にやられたのかを、調べる為に……。」
「そうだな。ダンジョンで逃げ遅れて死ぬってのは、なくはないが、よほど無理な場所に無理やりに行かなければ、普通はスタンピードでもない限りは逃げられるからな。」
「無理な場所に無理やりに連れて行ったことで、その人が死んでたらどうするの?」
新人なら程度が分からなくて、無理して突っ込んじゃうこともありそうだよね。
「程度にもよるが、基本は冒険者ギルドからペナルティがかせられる。だが程度によっては逮捕もありうるからな。だからお前を連れて来れるのは、このレベルってことだ。」
「お、叔父さんがいれば死なないよね?」
「ここより凄いと分からないぞ?俺が1度に守りきれないほどの魔物が現れたら、隙をつかれて、なんて、いくらでもあるからな?」
だからと言って油断するんじゃないぞ、と叔父さんは言った。
確かにデビルスネークの時も、僕らを守りながらだと厳しい、と言っていたものね。
相手に有利な地形だと、戦えない人間を守りながらだと、戦い方が限られて、正直かなり、やり辛いものなんだそうだ。
僕らがやられちゃわないか、気にしながらは神経を使うし、戦闘スタイルが決まってる人なんかは、それを崩されると戦力が落ちると、家庭教師の授業で聞いたことがあるよ。
「さっきの奴らの話だがな……。」
叔父さんは少し滑りやすい、狭い階段の壁に、片手をついて降りながら言う。
「この国は魔物や他国の攻撃には積極的に自衛をするが、対人間相手にはそうじゃない。
人間同士の小競り合いには、間に入ってくれる人がいないってことだ。」
「つまりどういうこと?」
「誰かが誰かのものを奪おうとした時に、現行犯でないと捕まらないことも多い。それが物でない場合は捕まることすらない。」
「物でない場合……。」
「例えば労働力だ。お前が誰かに暴力で脅されて、安い賃金で働くよう強制されたとしても、それで相手を捕まえることはない。」
「ええ……。」
「この国にはまだ奴隷という制度がある。万が一捕まって奴隷として登録された場合、お前の生きる権利が他人のものになるんだ。」
「それは困るよ……。」
「そうだな。だがそれが現実だ。1度登録されてしまうと、奴隷解除はとても難しい。」
叔父さんが少し怖い表情をして言った。
「そうなんだ……。」
なんか理不尽だなあ。
獲物を奪われたパーティーの人たちも、諦めて他に行くみたいだ。
「クエストを受けていれば横取り禁止だが、ダンジョン内のルールなんて、あってないようなものだからな。冒険者ギルドの目が届かない場所なんて、そんなものだ。」
叔父さんはそう言って先に進む。僕らは下に行く必要があるから、0階のフロアを抜けて、そのまま階段を降りた。むしろ2人組が引きつけてくれていたから楽に抜けられた。
「だが、ダンジョンの中だからこそ、世間のルールが通じないことが、誰かのメリットにもデメリットにもなるんだ。」
「──どういうこと?」
僕は叔父さんの言っている意味がわからなくて、首をかしげて叔父さんを見上げた。
「アレックス、ダンジョンでパーティーを組まなくてはならないのは、なぜだと思う。」
「……危ないから?」
「それもある。森の中と違って身を隠せる場所や、盾にしながら戦える場所があるわけでもないからな。だがそれが理由じゃない。」
「うーん……。助けを呼べないからとか?」
「そうじゃない。冒険者ギルドの目が届かないし、ダンジョンの中で人殺しがあっても不問にされるからだ。なぜなら死体も目撃者も出てこないからな。それが1番の理由だ。」
「怖っ……。」
「その決まりが出来るまでは、殺したい相手をダンジョンに連れて行って、中で始末したと思われる事件があいついでな。」
「だからルールを作ったの?」
「ああ。殆どのダンジョンは冒険者ギルドが管理をしている。町の管理下にあるダンジョンも、冒険者ギルドに報告が必要なんだ。」
「そこで誰と誰がダンジョンに一緒に入ったかを把握するようにした、ってことだね?」
「そうだ。1人以上が戻って来なかった場合は、冒険者ギルドで捜索隊を派遣する。」
「──戻って来なかった人を助ける為に?」
「助けられる場合は助けるが、主には遺体を探す為だな。1日やそこらじゃ、ダンジョンに遺体は飲み込まれないからな。」
「……人殺しをしてないかっていう、確認の為ってこと?魔物にやられたのか、人間にやられたのかを、調べる為に……。」
「そうだな。ダンジョンで逃げ遅れて死ぬってのは、なくはないが、よほど無理な場所に無理やりに行かなければ、普通はスタンピードでもない限りは逃げられるからな。」
「無理な場所に無理やりに連れて行ったことで、その人が死んでたらどうするの?」
新人なら程度が分からなくて、無理して突っ込んじゃうこともありそうだよね。
「程度にもよるが、基本は冒険者ギルドからペナルティがかせられる。だが程度によっては逮捕もありうるからな。だからお前を連れて来れるのは、このレベルってことだ。」
「お、叔父さんがいれば死なないよね?」
「ここより凄いと分からないぞ?俺が1度に守りきれないほどの魔物が現れたら、隙をつかれて、なんて、いくらでもあるからな?」
だからと言って油断するんじゃないぞ、と叔父さんは言った。
確かにデビルスネークの時も、僕らを守りながらだと厳しい、と言っていたものね。
相手に有利な地形だと、戦えない人間を守りながらだと、戦い方が限られて、正直かなり、やり辛いものなんだそうだ。
僕らがやられちゃわないか、気にしながらは神経を使うし、戦闘スタイルが決まってる人なんかは、それを崩されると戦力が落ちると、家庭教師の授業で聞いたことがあるよ。
「さっきの奴らの話だがな……。」
叔父さんは少し滑りやすい、狭い階段の壁に、片手をついて降りながら言う。
「この国は魔物や他国の攻撃には積極的に自衛をするが、対人間相手にはそうじゃない。
人間同士の小競り合いには、間に入ってくれる人がいないってことだ。」
「つまりどういうこと?」
「誰かが誰かのものを奪おうとした時に、現行犯でないと捕まらないことも多い。それが物でない場合は捕まることすらない。」
「物でない場合……。」
「例えば労働力だ。お前が誰かに暴力で脅されて、安い賃金で働くよう強制されたとしても、それで相手を捕まえることはない。」
「ええ……。」
「この国にはまだ奴隷という制度がある。万が一捕まって奴隷として登録された場合、お前の生きる権利が他人のものになるんだ。」
「それは困るよ……。」
「そうだな。だがそれが現実だ。1度登録されてしまうと、奴隷解除はとても難しい。」
叔父さんが少し怖い表情をして言った。
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