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第1章

第37話 遺品の思い出

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 僕はワクワクしながらアイテムボックスから出ると、時空の海の扉を消してお風呂に入って、普段なら叔父さんから借りた本を少し読んでから寝るところを、早めに靴を脱いでベッドに潜り込んだのだった。

 次の日、草むしりをしながら、妙にウキウキしている僕を見て、叔父さんが、なんだか楽しそうだな、と言ってきた。

 だって、あんなものを見つけちゃったんだからね!楽しみでしょうがないよ。
 早く探検したくて仕方がないもの。

 でも、どんなものが出てくるかも分からないから、叔父さんに報告するのはそのあとかな。お祖父さまのアイテムボックスの中身はそのままにすることにした。

 キャベンディッシュ侯爵家を出ることになった僕の、唯一家族との思い出を感じられる場所だし。何より母さまの物があるしね。

 いつでも行かれる訳だし、母さまのペンダントを僕が持ってることを、万が一父さまにでも知られたら、エロイーズさんにあげるために寄越せと言われちゃうかも知れないし。

 あの時は僕が小さ過ぎて、うまく言葉に出来なかったけど、母さまの物をエロイーズさんにあげちゃうことを、凄く嫌だなあって思って、大泣きしたのを覚えてる。

 それを見たお祖父さまは父さまをたしなめたけど、父さまは理解が出来ないと言って、ガンとして聞き入れなかった。

 お祖父さまも、それでアイテムボックスの中に隠したんだろうな。自分があげたわけでもないのに、妻の遺品を別の女性に渡そうとすることに、耐えられなかったんだと思う。

 もともとお祖母さまが母さまにあげたものだし、お祖父さまとお祖母さまとの思い出の品でもあるわけだしね。

 父さまは母さまを、完全に忘れちゃったのかな。だって母さまの形見を、簡単に人に渡すだなんてありえないよ。

 どれだけお金に困っても、一番最後に売るものだと思う。売らないとご飯が食べられない自分を悔やみながら。

 母さまのことを思い出すのが辛いのかも知れないって思った時期もあったけど、もともと愛してなかっただけなんだと思う。

 政略結婚だから仕方がないけど、母さまが可哀想だと思ったし、叔父さんが僕の父さまだったらなって思ったこともあるんだ。
 父さまは僕にあんまり興味がないから。

 それに僕は、母さまが亡くなってしまったことをまだ受け入れられていないし、母さまの持ち物を手放したくもないんだ。

 だからお祖父さまが隠してくれてて本当に良かったよ。エロイーズさんはもともと男爵家の令嬢で、僕が生まれる前からの父さまの公妾で、貴族や王族には珍しくもない。

 魔法スキルがなかったことと、家格が釣り合わなくて、父さまの婚約者にはなれなかったけど、もともと母さまと結婚する前から、2人は愛し合ってたんだと思う。

 たぶん、きっとエロイーズさんは、母さまが生きていた時から狙っていたんだ。母さまのペンダントと、父さまの妻の立場を。

 だからエロイーズさんは、母さまの子どもである僕のことが、初対面から嫌いだった。仲良くしようとしたけど、はじめから嫌われてたら無理だよね。だからすぐに諦めたよ。

 僕のことと母さまのことは別だと思うんだけど、エロイーズさんにはそうじゃなかったみたいだ。父さまを奪った憎き女の子ども。
 そして何より母さまにそっくりな子ども。

 父さまは明るい茶髪で青い目をしていて、リアムはエロイーズさんと同じ、ブルネットに青い目をしてる。僕はというと金髪に緑の目。何一つ父さまには似てないんだ。

 それが僕だ。僕は別に父さまに愛されてたわけじゃないのに、父さまの愛情を独り占めしておいて、更に僕のキャベンディッシュ侯爵家の後継者の立場すらも欲しがっていた。

 僕の持ってる、父さまに関するすべてのものを、僕から取り上げようとしたんだ。僕が父さまから貰ったものなんて知れてるけど。

 だから母さまが父さまから貰ったものは、お祖父様が隠してあったドレスと宝石を除いて、いつの間にか、ぜんぶエロイーズさんのものになってた。服も、宝石も、何もかも。

 幼い子どもの僕が、母親として受け入れられないまでも、仲良くしようと頑張ってるのに、大人げないなあとは思うけどね。

 頑張って草むしりを終えて、水やりも手伝って、お昼ごはんを食べて、叔父さんにいつもより早く馬車で町に送って貰った。

 早めにつけたから、市場でランタンとマジックバッグを探すことにした。帰りにまたヒルデが町の入口まで送ってくれるとしたら、迷惑かけちゃうから、寄り道しづらいしね。

 いくつか店を回って、最終的に、小金貨3枚の、広い範囲が照らせる魔道具のランタンと、飛竜種1頭が入る大きさのマジックバッグを、中金貨3枚で購入した。

 マジックバッグは高かったけど、長く使えるものだし、いずれもっと大きなものを買う時に売れるしね。
 先にお金を手に入れてて良かったよ。

 買い物を終えて、露天商の店の場所に行くと、もう既にヒルデも、ラナおばさんとポーリンさんも、先についてて、ヒルデは肉の焼串を5本も手に持って、更に1本を頬張っている最中だった。
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