128 / 134
第2部
第61話 一晩で消える家③
しおりを挟む
たとえばこれが召喚士となると話は別だ。
魔法概念としての魔物を呼び出すわけだから、食べ物だの生息地だのを気にする必要がない。スキルがなくても勉強次第で誰でもなれる職業である代わりに、なった後も日々これ勉強。それがテイマーという職業なんだ。
だからスキルがないのになりたがる奴は、力や剣の腕に自信がなかったり、近くにテイマーの師匠になってくれそうな人がいたり、動物が好きな奴らが多い。俺は師匠になってくれる人が近くにいたパターンだ。ルーフェン村に引退した元冒険者でテイマーの爺さんが住んでいた。もう亡くなってしまったが。
スキルのない孤児の俺を心配して、幼少期からテイマーのいろはを叩き込んでくれたから、俺はテイマーを目指すことにしたんだ。
もちろん冒険者になってからも、ベテランテイマーに師事をあおいで、勉強は続けていたぞ。日々是精進。テイマーの基本だ。
俺はテイマーのスキル持ちではなく、師匠について教わってテイマーになったくちだったから、一般的に転生者特典と言われるアイテムボックスだったり、鑑定なんかのスキルも何もなかった。自分のステータスすら見ることが出来なかった。だから最初はここが異世界だと気付くのに時間がかかったんだ。
小さな村の名前なんて、地図にも当然乗っていないから、俺の知らない外国に転生したものだとばかり思っていたんだ。
だが、大きくなるにつれ、俺の知っている常識がひとつも通じず、知っている国もひとつもないことがわかった。そこでようやく、異世界に来たことがわかったんだ。
冒険者はそもそも、伝手のない孤児がつくことの多い職業だ。身一つでなることが出来て、一攫千金も狙える。もちろん死ぬことだって多いが、商人なんかは伝手がないとなることが出来ない。商人の家に生まれるか、貴族の三男坊だとか、教会で勉強を教えて貰えて読み書き算術に長けているだとかな。
そうなると、教会で勉強させてもらえなかった俺は、商人になる道はない。当然前世の経験から算術は得意だったが、それを証明する手立てがない。なにせ就職試験というものがない。平民向けの学校がない。能力があることを証明する為には紹介状や推薦がいる、となると、もう打つ手がないというわけだ。
だから選択肢はおのずと限られる。狭い村の中で、村人がやっている仕事を選ぶことは出来ない。縄張りというものがあるからな。
狩人や木こりなんかは、代々受け継いだ家業として、その縄張りを親から譲り受ける。
孤児にはなることが出来ない仕事だ。
そんなわけで俺はテイマーになったわけだが、俺としては動物も好きだし、魔物たちだって可愛かったりもする。前世じゃ獣医に憧れていたからな。なりたい仕事に似た職業につけて、良かったとすら思っているよ。魔物は強さがピンキリだから、この先魔物を家畜にしようとする人が増えたら、またまもののおいしゃさんとしての仕事が増えるかもな。
馬車を2回乗り継いでチャツグ領へと到着した。まずは砂漠近くの町で情報を集めることにした。キャラバンの作る砂漠の野営地のような移動可能な簡素な建物が多く、これで商売を営んでいるらしい。これも砂漠が広がった時に移動出来るようにする為だろうな。
みずみずしい果物は、かなり値段がするようだ。砂漠ではあまり植物が育てられないから、当然こういった日常生活に必須でないものは他領頼みとなる。手に入らないからこそのちょっとした娯楽として、果物が人気なのだろう。割と買っていく人たちが多い。
俺は買い物をしつつ、店主に話を聞いた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
魔法概念としての魔物を呼び出すわけだから、食べ物だの生息地だのを気にする必要がない。スキルがなくても勉強次第で誰でもなれる職業である代わりに、なった後も日々これ勉強。それがテイマーという職業なんだ。
だからスキルがないのになりたがる奴は、力や剣の腕に自信がなかったり、近くにテイマーの師匠になってくれそうな人がいたり、動物が好きな奴らが多い。俺は師匠になってくれる人が近くにいたパターンだ。ルーフェン村に引退した元冒険者でテイマーの爺さんが住んでいた。もう亡くなってしまったが。
スキルのない孤児の俺を心配して、幼少期からテイマーのいろはを叩き込んでくれたから、俺はテイマーを目指すことにしたんだ。
もちろん冒険者になってからも、ベテランテイマーに師事をあおいで、勉強は続けていたぞ。日々是精進。テイマーの基本だ。
俺はテイマーのスキル持ちではなく、師匠について教わってテイマーになったくちだったから、一般的に転生者特典と言われるアイテムボックスだったり、鑑定なんかのスキルも何もなかった。自分のステータスすら見ることが出来なかった。だから最初はここが異世界だと気付くのに時間がかかったんだ。
小さな村の名前なんて、地図にも当然乗っていないから、俺の知らない外国に転生したものだとばかり思っていたんだ。
だが、大きくなるにつれ、俺の知っている常識がひとつも通じず、知っている国もひとつもないことがわかった。そこでようやく、異世界に来たことがわかったんだ。
冒険者はそもそも、伝手のない孤児がつくことの多い職業だ。身一つでなることが出来て、一攫千金も狙える。もちろん死ぬことだって多いが、商人なんかは伝手がないとなることが出来ない。商人の家に生まれるか、貴族の三男坊だとか、教会で勉強を教えて貰えて読み書き算術に長けているだとかな。
そうなると、教会で勉強させてもらえなかった俺は、商人になる道はない。当然前世の経験から算術は得意だったが、それを証明する手立てがない。なにせ就職試験というものがない。平民向けの学校がない。能力があることを証明する為には紹介状や推薦がいる、となると、もう打つ手がないというわけだ。
だから選択肢はおのずと限られる。狭い村の中で、村人がやっている仕事を選ぶことは出来ない。縄張りというものがあるからな。
狩人や木こりなんかは、代々受け継いだ家業として、その縄張りを親から譲り受ける。
孤児にはなることが出来ない仕事だ。
そんなわけで俺はテイマーになったわけだが、俺としては動物も好きだし、魔物たちだって可愛かったりもする。前世じゃ獣医に憧れていたからな。なりたい仕事に似た職業につけて、良かったとすら思っているよ。魔物は強さがピンキリだから、この先魔物を家畜にしようとする人が増えたら、またまもののおいしゃさんとしての仕事が増えるかもな。
馬車を2回乗り継いでチャツグ領へと到着した。まずは砂漠近くの町で情報を集めることにした。キャラバンの作る砂漠の野営地のような移動可能な簡素な建物が多く、これで商売を営んでいるらしい。これも砂漠が広がった時に移動出来るようにする為だろうな。
みずみずしい果物は、かなり値段がするようだ。砂漠ではあまり植物が育てられないから、当然こういった日常生活に必須でないものは他領頼みとなる。手に入らないからこそのちょっとした娯楽として、果物が人気なのだろう。割と買っていく人たちが多い。
俺は買い物をしつつ、店主に話を聞いた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
164
お気に入りに追加
1,299
あなたにおすすめの小説
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

新グライフトゥルム戦記~運命の王子と王国の守護者たち~
愛山雄町
ファンタジー
“最後の地”と呼ばれるエンデラント大陸。その最古の王国、グライフトゥルム王国は危機に瀕していた。
国内では自らの利益のみを追求する大貴族が国政を壟断し、王宮内では毒婦と呼ばれる王妃が我が子を玉座につけようと暗躍する。そんな状況に国王は無力で、心ある家臣たちは国政から排除されていた。
国外に目を向けても絶望的な状況だった。東の軍事大国ゾルダート帝国は歴史ある大国リヒトロット皇国を併呑し、次の標的としてグライフトゥルム王国に目を向けている。南の宗教国家レヒト法国でも、野心家である騎士団長が自らの栄達のため、牙を剥こうとしていた。
小国であるグライフトゥルム王国を守ってきた“微笑みの軍師”、“千里眼《アルヴィスンハイト》のマティアス”は病と暗殺者の襲撃で身体を壊して動きが取れず、彼が信頼する盟友たちも次々と辺境に追いやられている。
そんな風前の灯火と言える状況だったが、第三王子ジークフリートが立ち上がった。彼はマティアスら俊英の力を糾合し、祖国を救うことを決意した……。
■■■
第12回ネット小説大賞入賞作品「グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~」の続編となりますが、前作を読まなくとも問題なく読めるように書いております。もちろん、読んでいただいた方がより楽しめると思います。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】
赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。
某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。
全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。
自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ!
宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造!
異世界やり過ぎコメディー!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる