まもののおいしゃさん

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第2部

第61話 一晩で消える家③

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 たとえばこれが召喚士となると話は別だ。
 魔法概念としての魔物を呼び出すわけだから、食べ物だの生息地だのを気にする必要がない。スキルがなくても勉強次第で誰でもなれる職業である代わりに、なった後も日々これ勉強。それがテイマーという職業なんだ。

 だからスキルがないのになりたがる奴は、力や剣の腕に自信がなかったり、近くにテイマーの師匠になってくれそうな人がいたり、動物が好きな奴らが多い。俺は師匠になってくれる人が近くにいたパターンだ。ルーフェン村に引退した元冒険者でテイマーの爺さんが住んでいた。もう亡くなってしまったが。

 スキルのない孤児の俺を心配して、幼少期からテイマーのいろはを叩き込んでくれたから、俺はテイマーを目指すことにしたんだ。
 もちろん冒険者になってからも、ベテランテイマーに師事をあおいで、勉強は続けていたぞ。日々是精進。テイマーの基本だ。

 俺はテイマーのスキル持ちではなく、師匠について教わってテイマーになったくちだったから、一般的に転生者特典と言われるアイテムボックスだったり、鑑定なんかのスキルも何もなかった。自分のステータスすら見ることが出来なかった。だから最初はここが異世界だと気付くのに時間がかかったんだ。

 小さな村の名前なんて、地図にも当然乗っていないから、俺の知らない外国に転生したものだとばかり思っていたんだ。
 だが、大きくなるにつれ、俺の知っている常識がひとつも通じず、知っている国もひとつもないことがわかった。そこでようやく、異世界に来たことがわかったんだ。

 冒険者はそもそも、伝手のない孤児がつくことの多い職業だ。身一つでなることが出来て、一攫千金も狙える。もちろん死ぬことだって多いが、商人なんかは伝手がないとなることが出来ない。商人の家に生まれるか、貴族の三男坊だとか、教会で勉強を教えて貰えて読み書き算術に長けているだとかな。

 そうなると、教会で勉強させてもらえなかった俺は、商人になる道はない。当然前世の経験から算術は得意だったが、それを証明する手立てがない。なにせ就職試験というものがない。平民向けの学校がない。能力があることを証明する為には紹介状や推薦がいる、となると、もう打つ手がないというわけだ。

 だから選択肢はおのずと限られる。狭い村の中で、村人がやっている仕事を選ぶことは出来ない。縄張りというものがあるからな。
 狩人や木こりなんかは、代々受け継いだ家業として、その縄張りを親から譲り受ける。
 孤児にはなることが出来ない仕事だ。

 そんなわけで俺はテイマーになったわけだが、俺としては動物も好きだし、魔物たちだって可愛かったりもする。前世じゃ獣医に憧れていたからな。なりたい仕事に似た職業につけて、良かったとすら思っているよ。魔物は強さがピンキリだから、この先魔物を家畜にしようとする人が増えたら、またまもののおいしゃさんとしての仕事が増えるかもな。

 馬車を2回乗り継いでチャツグ領へと到着した。まずは砂漠近くの町で情報を集めることにした。キャラバンの作る砂漠の野営地のような移動可能な簡素な建物が多く、これで商売を営んでいるらしい。これも砂漠が広がった時に移動出来るようにする為だろうな。

 みずみずしい果物は、かなり値段がするようだ。砂漠ではあまり植物が育てられないから、当然こういった日常生活に必須でないものは他領頼みとなる。手に入らないからこそのちょっとした娯楽として、果物が人気なのだろう。割と買っていく人たちが多い。
 俺は買い物をしつつ、店主に話を聞いた。

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