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第2部

第60話 飴作り職人への新作提案①

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 リッチがニャラララのニオイを感じ取ったのか、早く食べたそうに羽をバタつかせていたが、もう少しだけ待ってくれな、と頭を撫でてやった。そうかい、そんなにワシの飴が食べたいか!と、ゲッヘルさんも嬉しそうにリッチに微笑みかけている。

「最近は飴だけだと、あんまり買って貰えなくてなあ。こういう何かと合わせたもんじゃないと売れないから、材料が仕入れられんとなんも出来んのよ。それに作ったところで仕入れてくれる商人がこんのじゃなあ。」
 ゲッヘルさんが寂しそうに笑った。

 確かに飴って、そんなに毎日のように食べるものじゃあないよなあ。大人になると特にそうだ。俺なんかだと、食べても1粒とか、せいぜいそんなもんだ。子どもか女性が家にいないと余らせるだろうし、他のお菓子があれば、普通は飴よりも他のお菓子を食べたがものだからな。飴は主役になりにくいよな。

 飴が主力商品の土地柄なのに、飴だけで売れないとなると、どうしても飴と何かを合わせれば売れるのであれば、それに頼ることになるだろうな。だがそれはその分仕入れが発生するから、薄利多売な商売だ。それ自体の数が売れないことにはキツイだろうな。

 飴自体に魅力があって、人の興味を引き付けることが出来れば、ここで手に入る材料だけで作れる分、当然利ざやもあがるわけだ。
 正月に売ってる飴細工や、七五三の千歳飴なんかは、特別美味しいわけじゃあないが、人が買うことの多い商品だ。そういう伝統があったら、飴だけでも売れるんだろうが。

「──そういやそろそろ日が暮れる頃だが、あの子は戻って来たのかね。」
「……マーティン……!!
 あの子、また山に行ったんだわ!山は主人との思い出の場所なんです。飴の材料を取りに主人とよく行っていたから……。」

「魔物が出る山です。魂を抜く魔物が出なくても、他にもたくさん魔物がいる。暗くなるほど奴らは凶暴になります。一緒に探しましょう!こう見えても俺はSランク冒険者なんです。力になりますよ。」
「助かります、お願いします!」

 店の入口を閉めて、カリーナさん、ゲッヘルさんとともに、俺とリッチはもと来た山を登って行った。リッチが先行して偵察に飛んで行き、何かあれば知らせてくれる手はずになっている。──その時リッチが警戒を知らせる鳴き声をあげた。

「何かがいます。気を付けて。俺が見てきますので、皆さんはここに……。」
「マーティン!……マーティン!!」
 止める間もなく、山道を必死の形相で駆け上がって行くカリーナさん。
 俺とゲッヘルさんも慌ててその後を追いかけ、山道を駆け上がる。

「あ……、ああ……!!」
 カリーナさんの目の前に、カリーナさんがいる。──こいつがそうか!!
 魂が抜かれる恐怖に固まるカリーナさん。
「早く!早く倒してくれ!息子の嫁が!」
 叫ぶゲッヘルさん。

 俺は偽物のカリーナさんの後ろの木の陰に隠れるように、マーティン君が心配そうにこちらを覗いているのを発見した。
 ……そうか。
 この魔物は、そういうことだったのか。
 カリーナさんもそれに気が付いて、震える声で、それでもこちらに来るよう叫んだ。

「マーティン……!早く、お母さんとお爺ちゃんのところに……!」
「ウソだ!どうせすぐいなくなるくせに!!
 ほんとのお母さんじゃないくせに!!」
 マーティン君が叫んだ。え?という悲しそうな表情を浮かべるカリーナさん。

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