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第2部
第57話 新しい関係性への第一歩②
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頭を下げたロベルタさんに、パチ……、パチ……、パチパチパチパチ、と拍手の渦が広がっていく。ロベルタさんは嬉しさのあまり頭を下げたまま泣いていた。
「ギッ、ギイッ!」
「お、出来たか。よしよし、見せて貰おうかな。──おお!完璧だ!これなら売り物になるぞ!さすがだな!ギイ!」
「ギッギッ!!」
「ロベルタさん、ホブゴブリンたちに謝礼をお願いします。」
「あ、はい、分かりました。」
ロベルタさんはギイに作業代金として小金貨を3枚渡した。ギイがそれをホブゴブリンたちに見せると、金貨が大好きなホブゴブリンたちが踊りだす。これで、貝殻の詰まった袋を叩くと金貨が貰えると分かった筈だ。
「ラパァの貝殻は本来捨てていたものだ。
この先養殖事業が成功すれば、たくさんの貝殻が捨てられることになるでしょう。
ですがこうやって売り物にしてしまえば、グジャナの町も潤い、ホブゴブリンも金貨が欲しいという気持ちが満たされる。どちらにもメリットのあることですよ。」
「はい、彼らと手を取り合って生きていけるということを見せる事業を、僕の生涯の仕事とします!ありがとうございました!」
ロベルタさんとグジャナの町の元孤児たちが、俺とリスタに頭を下げる。ロベルタさんはこの町を必ず変える人だ。1年でうまくいかなかったとしても、必ず成功させてみせるだろう。ギィと生きる未来の為に。
「うまくいくといいな、ギィ。明日も大事な仕事があるんだ。お前と、お前の息子さんなら必ず出来る筈だ。頼んだぞ。」
「ギィッ!」
「ギィ……。」
張り切るギィと、不安げに俺を見上げるギィの息子さん。だがその姿を見て、俺は勝利を確信していた。
依頼を終えた俺は、冒険者ギルドに現状を報告した後で、ロベルタさんが用意してくれた宿に、昨日に続きリスタと共に泊まった。
ラパァ料理と美味しい地酒の出る食堂が1階にある、冒険者に人気の宿らしい。
俺とリスタはたらふくラパァ料理を食べ、おおいに飲んだ。
「……うまくいくといいわね。
ギィには幸せになって欲しいもの。」
宿の食堂でラパァ料理を食べながら、酒に酔ってほんのり頬を染めたリスタが言う。
一度部屋に戻って着替えたので、今は肩の出た服を着ている。この間ロリズリー男爵に紹介された店で買った服だった。
「そうだな。再会出来るとは思ってなかったし、俺も討伐なんて事態はさけたい。」
「明日、みんなにお披露目するのよね。」
「ああ。最初の一歩だ。」
俺は周囲の視線がやたらと俺に向いている気がして首をかしげた。……いや、違う。リスタだ。酔ったリスタの色っぽい姿に、食堂にいる男たちの視線が集まっているのだ。
「……リスタ、そろそろ部屋に行こう。」
「えっ!?あ、う、うん……。」
ちょっとこんな状態のリスタを、あまりひと目にさらすのは危険な気がする。
「──今日は夜の間、部屋から出ない方がいいと思う。じゃあ気を付けて。おやすみ。」
「えっ。あ、あの……。」
俺はリスタを部屋までおくると、無事に部屋の中に入ったのを確認してドアをしめた。
なんとなく、俺もこれ以上一緒にいるのは危険な気がした。なぜだか分からんが。
夜中、薄い壁越しに、リスタが寝返りをうつ音や、ん……、と声が聞こえ、なぜだか物凄く落ち着かなくなり、寝付けなかった。
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「ギッ、ギイッ!」
「お、出来たか。よしよし、見せて貰おうかな。──おお!完璧だ!これなら売り物になるぞ!さすがだな!ギイ!」
「ギッギッ!!」
「ロベルタさん、ホブゴブリンたちに謝礼をお願いします。」
「あ、はい、分かりました。」
ロベルタさんはギイに作業代金として小金貨を3枚渡した。ギイがそれをホブゴブリンたちに見せると、金貨が大好きなホブゴブリンたちが踊りだす。これで、貝殻の詰まった袋を叩くと金貨が貰えると分かった筈だ。
「ラパァの貝殻は本来捨てていたものだ。
この先養殖事業が成功すれば、たくさんの貝殻が捨てられることになるでしょう。
ですがこうやって売り物にしてしまえば、グジャナの町も潤い、ホブゴブリンも金貨が欲しいという気持ちが満たされる。どちらにもメリットのあることですよ。」
「はい、彼らと手を取り合って生きていけるということを見せる事業を、僕の生涯の仕事とします!ありがとうございました!」
ロベルタさんとグジャナの町の元孤児たちが、俺とリスタに頭を下げる。ロベルタさんはこの町を必ず変える人だ。1年でうまくいかなかったとしても、必ず成功させてみせるだろう。ギィと生きる未来の為に。
「うまくいくといいな、ギィ。明日も大事な仕事があるんだ。お前と、お前の息子さんなら必ず出来る筈だ。頼んだぞ。」
「ギィッ!」
「ギィ……。」
張り切るギィと、不安げに俺を見上げるギィの息子さん。だがその姿を見て、俺は勝利を確信していた。
依頼を終えた俺は、冒険者ギルドに現状を報告した後で、ロベルタさんが用意してくれた宿に、昨日に続きリスタと共に泊まった。
ラパァ料理と美味しい地酒の出る食堂が1階にある、冒険者に人気の宿らしい。
俺とリスタはたらふくラパァ料理を食べ、おおいに飲んだ。
「……うまくいくといいわね。
ギィには幸せになって欲しいもの。」
宿の食堂でラパァ料理を食べながら、酒に酔ってほんのり頬を染めたリスタが言う。
一度部屋に戻って着替えたので、今は肩の出た服を着ている。この間ロリズリー男爵に紹介された店で買った服だった。
「そうだな。再会出来るとは思ってなかったし、俺も討伐なんて事態はさけたい。」
「明日、みんなにお披露目するのよね。」
「ああ。最初の一歩だ。」
俺は周囲の視線がやたらと俺に向いている気がして首をかしげた。……いや、違う。リスタだ。酔ったリスタの色っぽい姿に、食堂にいる男たちの視線が集まっているのだ。
「……リスタ、そろそろ部屋に行こう。」
「えっ!?あ、う、うん……。」
ちょっとこんな状態のリスタを、あまりひと目にさらすのは危険な気がする。
「──今日は夜の間、部屋から出ない方がいいと思う。じゃあ気を付けて。おやすみ。」
「えっ。あ、あの……。」
俺はリスタを部屋までおくると、無事に部屋の中に入ったのを確認してドアをしめた。
なんとなく、俺もこれ以上一緒にいるのは危険な気がした。なぜだか分からんが。
夜中、薄い壁越しに、リスタが寝返りをうつ音や、ん……、と声が聞こえ、なぜだか物凄く落ち着かなくなり、寝付けなかった。
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