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第2部
第57話 新しい関係性への第一歩①
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生牡蠣の貝殻を120℃のオーブンで10分間焼いたものを砕くと、鳥の餌や野菜を作る為の有機石灰肥料になるのだ。
洗ったのは表面の塩分を洗い流す為だ。少しなら塩があるのは逆に土にいいこともあるが、貝殻そのものにも多少あるからな。
焼くことで殻に残っているカビやバクテリアを殺してくれるし、殻も乾いて割りやすくなるので一石二鳥である。
袋に詰めて口をしばるのは、ハンマーで叩く時に、飛散した貝殻で怪我をしない為だ。
袋を平らな地面に置き、ハンマーなどの鈍器で叩く。破片が最低でも指の爪のサイズくらいになるまで、殻を叩き割ってやるのだ。
殻が小さいほど鳥が食べやすくなるので、出来るだけ小さく砕いてやる。有機石灰肥料の場合粒状でもいいが、粉末にするならフードプロセッサーを使いたいところだが、そんなものないからな。今回は砕くのみだ。
「さあ、ギィ、お前たちの出番だ、こいつをみんなで叩き割ってくれ!」
俺は地面に袋に詰められたラパァを放り投げると、大人たちからギィたちに大きなハンマーを渡して貰った。ギィが手を上げ、ギィッ!とホブゴブリンたちに指示をする。すると一斉にガンッ!ガンッ!とホブゴブリンたちが袋に入ったラパァの貝殻を砕いていく。
これはホブゴブリンの性質を利用したものだ。獲物を叩いて仕留めるホブゴブリンの狩りの仕方。肉を柔らかくする為に、最初に徹底的に叩くのだ。だから教えなくとも、ボスの号令ひとつで目の前の獲物に攻撃をする。ボスほどの知性はないから、さすがにすべてをやり方を見せて教えるのは無理だからな。
「さすがホブゴブリン……凄い力だね。」
ロベルタさんが関心している。
「ラパァの養殖と、ラパァの貝殻の有機石灰肥料と、鳥の餌があれば、かなりグジャナの町が潤うことでしょう。なんならアキビスも洗って砕けば有機石灰肥料になります。それをホブゴブリンたちが手伝っているところを見せて、大人たちに納得して貰うんです。」
「納得……してくれるでしょうか。」
俺はロベルタさんを強く見すえた。
「変わるべきなのはホブゴブリンではなく、人間の大人たちのほうです。
確かにギィたちは人間の大人を恐れています。嫌っています。それを最初にしたのはこの町の人間でなくとも、子どもたちほどギィたちを受け入れなかったのではないですか?
ギィが群れを止めない理由はそれかと。」
「確かに……。それはそうだと思います。」
「共に暮らしたいのであれば、今は生みの苦しみの時間です。そこに耐えられないのであれば、冒険者ギルドが捕獲して、別のダンジョンに移動させるという方法もあります。
ただしその後彼らが冒険者たちに討伐されないという保証は出来ません。
みなさんはどうしたいですか?」
俺はこの場に集まってくれた、町民ひとりひとりを見つめた。
「大人たちがホブゴブリンをいじめないのだとわかれば、ギィたちも攻撃しなくなる。
もちろん時間はかかるでしょう。ですが養殖事業が実を結ぶ時には、ホブゴブリンと人間の大人たちの関係も、雪解けを迎えるのではないかと、俺は思っていますよ。」
ロベルタさんはグッとツバを飲み込んだ。
「……変えます。変えてみせます。今までだって変えて来たんだ。ゴミ捨て町だとされ、ゴミを食べて暮らすこの町の生活を。
僕たち孤児の人生は、彼らがいたからこそ明るい未来が出来た。この先の未来も、彼らと一緒に歩んでいきたい。──皆さん、僕に協力してください!お願いします!」
────────────────────
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洗ったのは表面の塩分を洗い流す為だ。少しなら塩があるのは逆に土にいいこともあるが、貝殻そのものにも多少あるからな。
焼くことで殻に残っているカビやバクテリアを殺してくれるし、殻も乾いて割りやすくなるので一石二鳥である。
袋に詰めて口をしばるのは、ハンマーで叩く時に、飛散した貝殻で怪我をしない為だ。
袋を平らな地面に置き、ハンマーなどの鈍器で叩く。破片が最低でも指の爪のサイズくらいになるまで、殻を叩き割ってやるのだ。
殻が小さいほど鳥が食べやすくなるので、出来るだけ小さく砕いてやる。有機石灰肥料の場合粒状でもいいが、粉末にするならフードプロセッサーを使いたいところだが、そんなものないからな。今回は砕くのみだ。
「さあ、ギィ、お前たちの出番だ、こいつをみんなで叩き割ってくれ!」
俺は地面に袋に詰められたラパァを放り投げると、大人たちからギィたちに大きなハンマーを渡して貰った。ギィが手を上げ、ギィッ!とホブゴブリンたちに指示をする。すると一斉にガンッ!ガンッ!とホブゴブリンたちが袋に入ったラパァの貝殻を砕いていく。
これはホブゴブリンの性質を利用したものだ。獲物を叩いて仕留めるホブゴブリンの狩りの仕方。肉を柔らかくする為に、最初に徹底的に叩くのだ。だから教えなくとも、ボスの号令ひとつで目の前の獲物に攻撃をする。ボスほどの知性はないから、さすがにすべてをやり方を見せて教えるのは無理だからな。
「さすがホブゴブリン……凄い力だね。」
ロベルタさんが関心している。
「ラパァの養殖と、ラパァの貝殻の有機石灰肥料と、鳥の餌があれば、かなりグジャナの町が潤うことでしょう。なんならアキビスも洗って砕けば有機石灰肥料になります。それをホブゴブリンたちが手伝っているところを見せて、大人たちに納得して貰うんです。」
「納得……してくれるでしょうか。」
俺はロベルタさんを強く見すえた。
「変わるべきなのはホブゴブリンではなく、人間の大人たちのほうです。
確かにギィたちは人間の大人を恐れています。嫌っています。それを最初にしたのはこの町の人間でなくとも、子どもたちほどギィたちを受け入れなかったのではないですか?
ギィが群れを止めない理由はそれかと。」
「確かに……。それはそうだと思います。」
「共に暮らしたいのであれば、今は生みの苦しみの時間です。そこに耐えられないのであれば、冒険者ギルドが捕獲して、別のダンジョンに移動させるという方法もあります。
ただしその後彼らが冒険者たちに討伐されないという保証は出来ません。
みなさんはどうしたいですか?」
俺はこの場に集まってくれた、町民ひとりひとりを見つめた。
「大人たちがホブゴブリンをいじめないのだとわかれば、ギィたちも攻撃しなくなる。
もちろん時間はかかるでしょう。ですが養殖事業が実を結ぶ時には、ホブゴブリンと人間の大人たちの関係も、雪解けを迎えるのではないかと、俺は思っていますよ。」
ロベルタさんはグッとツバを飲み込んだ。
「……変えます。変えてみせます。今までだって変えて来たんだ。ゴミ捨て町だとされ、ゴミを食べて暮らすこの町の生活を。
僕たち孤児の人生は、彼らがいたからこそ明るい未来が出来た。この先の未来も、彼らと一緒に歩んでいきたい。──皆さん、僕に協力してください!お願いします!」
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