115 / 134
第2部
56話 ゴミ捨て町の再生事業②
しおりを挟む
ロベルタさんにDランク以上のテイマーをひとりお願いしたのには理由がある。もちろんギィたちホブゴブリンを、テイマーにテイムして貰う為ではない。テイムするのであれば、テイマーひとりにつき、魔物1体しかテイム出来ないのだから、テイムするつもりであれば、群れ全体の数だけテイマーが必要になるし、ギィはAランク以上のテイマーじゃないと、テイムするのは無理だろうからな。
テイマーは師匠についてテイマーの知識を得る時に、すべての生き物について勉強するから、一般人よりは生き物について詳しいのだ。俺自身、前世の知識に加えて、この世界にどんな特性を持つ生き物が存在するのかを知っている。だから俺は、俺がいなくても対応してくれるテイマーを頼んだのだ。
養殖をしている漁師がこの世界にいれば、そのほうが早いんだが、とるばかりで養殖をするという知識がない。だがテイマーなら少し教えれば、その代わりが出来るからな。
テイムした魔物を生かす為に、好物の生き物を増やすなんてのは当たり前の事なのだ。
養殖は時間のかかる事業だ。ずっと俺がついているわけにもいかないしな。
「こんな感じでいいですか?」
シスターエンノが紹介してくれた、この町の孤児院出身のテイマー、ニックさんが俺にアキビスの貝類で作った原盤を見せてくる。
「ああ、だいじょうぶだ。」
彼はCランクだと聞くが、なかなかどうして知識の飲み込みが早い。
ダンジョンに潜るよりも、この町の為になること、ギィたちの為になることを選び、ラパァの養殖事業に名乗りを上げてくれた。
牡蠣が放卵するのは7~8月頃。ラパァが6~8月だ。幼生と呼ばれる牡蠣の赤ちゃんは、約2週間ほど海を浮遊したのち、岩壁や岩礁などにくっつく性質を持っている。ラパァで3日から1週間ほどだ。
この性質を活かし、牡蠣の赤ちゃんが集まりやすい場所に原盤を投入すると、ホタテの貝殻に牡蠣の赤ちゃんがくっついてくる。それを回収するのだ。ラパァも同じ仕組みで、アキビスにくっついた赤ちゃんを回収する。
あまり貝殻に幼生がつきすぎてもダメなので、数日海に入れたのち、採苗した赤ちゃんを、原盤ごと浅瀬のほうに移動してやる。
これを抑制といい、潮の満ち引きを利用して、強い種に鍛えあげることが目的だ。過酷な環境に晒すことで、弱い種はこの段階で死んでしまうが、養殖には必要な過程だ。
春先になると、抑制にかけた牡蠣が付着したホタテの貝殻をロープに挟む、種はさみという作業をおこなう。
1枚1枚を一定の間隔で挟み込んでいき、種はさみしたものは、次の工程である沖出しの時期まで、再び湾内の穏やかな場所で育てるのだ。これを仮殖と呼ぶ。
浅瀬で育ててやらないと、大きく育つ前にムール貝や昆布などが付着してしまい、牡蠣の成長を邪魔しちまうからな。
この世界にも似た生き物がいるから、ラパァの生育の邪魔になるのだ。
1年経ち、また夏になったら、牡蠣を沖にある漁場へ移動させてやる。これを沖出しといい、ロープを1本1本伸ばし、海に垂下するのだ。これをラパァでも同じくやる。
身肉を大きく育てたい牡蠣は、沖出しまでに2年間、仮殖で育ててやる。
最後の仕上げとして、沖出しで潮通りの良い沖の漁場で波に揉まれ、湾内とはまた違った栄養をたっぷり吸収し、さらにおいしく、プリップリに育っていくのだ。
グジャナの町の海は泳ぐ人もいないから、養殖にピッタリな静かな海が広がっている。それを使わない手はないからな。
「ギィ。」
「うん、ギィも上手だぞ、さすがだな。」
ギィは以前戦うことが出来なかった。だがあの頃から人間の真似をするのがとっても上手だったのだ。器用に原盤を作り出しては、嬉しそうに俺に見せてくれる。ギィの頭を撫でてやると、嬉しそうにギィ、と言った。
ギィの息子さんも真似して上手に原盤を作り、ギィに見せている。手先が器用なのはお父さん譲りだな。ギィが俺の真似をして息子さんを撫でてやると、ギィの息子さんも嬉しそうに笑った。ギィの奥さんは少し苦戦しているらしく、リスタが手伝ってやっていた。
「よし、たくさん出来たな。じゃあこれを海に沈めにいこうか。」
ゾロゾロとみんなで海に移動すると、用意されていた小舟に乗って、原盤を沈める場所まで移動する。ここからの作業はホブゴブリンたちにも手伝って貰うのだ。
原盤を海に沈める作業は、漁師をやっている孤児院出身の大人たちが手伝ってくれた。
ギィたちホブゴブリンが、見様見真似で原盤を海に沈めていく。あとはみんな次第だ。
「さて、次は焼いた貝殻を取りに行こうか。
ギィたちはちょっと待っててくれ。」
俺はリスタと町民たちをともなって、貝殻を焼いてくれている家を回った。
「はい、ご注文どおり、洗ったラパァの貝殻を焼いて冷ましたもんを袋に詰めといたよ。
こんなのいったいなんにするんだい?」
「ちょっと肥料と鳥の餌を作りたくて。」
ロベルタさんから渡された袋に、たくさんのラパァの貝殻を焼いて冷ましたものが詰められたものを、おばさんから受け取った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
テイマーは師匠についてテイマーの知識を得る時に、すべての生き物について勉強するから、一般人よりは生き物について詳しいのだ。俺自身、前世の知識に加えて、この世界にどんな特性を持つ生き物が存在するのかを知っている。だから俺は、俺がいなくても対応してくれるテイマーを頼んだのだ。
養殖をしている漁師がこの世界にいれば、そのほうが早いんだが、とるばかりで養殖をするという知識がない。だがテイマーなら少し教えれば、その代わりが出来るからな。
テイムした魔物を生かす為に、好物の生き物を増やすなんてのは当たり前の事なのだ。
養殖は時間のかかる事業だ。ずっと俺がついているわけにもいかないしな。
「こんな感じでいいですか?」
シスターエンノが紹介してくれた、この町の孤児院出身のテイマー、ニックさんが俺にアキビスの貝類で作った原盤を見せてくる。
「ああ、だいじょうぶだ。」
彼はCランクだと聞くが、なかなかどうして知識の飲み込みが早い。
ダンジョンに潜るよりも、この町の為になること、ギィたちの為になることを選び、ラパァの養殖事業に名乗りを上げてくれた。
牡蠣が放卵するのは7~8月頃。ラパァが6~8月だ。幼生と呼ばれる牡蠣の赤ちゃんは、約2週間ほど海を浮遊したのち、岩壁や岩礁などにくっつく性質を持っている。ラパァで3日から1週間ほどだ。
この性質を活かし、牡蠣の赤ちゃんが集まりやすい場所に原盤を投入すると、ホタテの貝殻に牡蠣の赤ちゃんがくっついてくる。それを回収するのだ。ラパァも同じ仕組みで、アキビスにくっついた赤ちゃんを回収する。
あまり貝殻に幼生がつきすぎてもダメなので、数日海に入れたのち、採苗した赤ちゃんを、原盤ごと浅瀬のほうに移動してやる。
これを抑制といい、潮の満ち引きを利用して、強い種に鍛えあげることが目的だ。過酷な環境に晒すことで、弱い種はこの段階で死んでしまうが、養殖には必要な過程だ。
春先になると、抑制にかけた牡蠣が付着したホタテの貝殻をロープに挟む、種はさみという作業をおこなう。
1枚1枚を一定の間隔で挟み込んでいき、種はさみしたものは、次の工程である沖出しの時期まで、再び湾内の穏やかな場所で育てるのだ。これを仮殖と呼ぶ。
浅瀬で育ててやらないと、大きく育つ前にムール貝や昆布などが付着してしまい、牡蠣の成長を邪魔しちまうからな。
この世界にも似た生き物がいるから、ラパァの生育の邪魔になるのだ。
1年経ち、また夏になったら、牡蠣を沖にある漁場へ移動させてやる。これを沖出しといい、ロープを1本1本伸ばし、海に垂下するのだ。これをラパァでも同じくやる。
身肉を大きく育てたい牡蠣は、沖出しまでに2年間、仮殖で育ててやる。
最後の仕上げとして、沖出しで潮通りの良い沖の漁場で波に揉まれ、湾内とはまた違った栄養をたっぷり吸収し、さらにおいしく、プリップリに育っていくのだ。
グジャナの町の海は泳ぐ人もいないから、養殖にピッタリな静かな海が広がっている。それを使わない手はないからな。
「ギィ。」
「うん、ギィも上手だぞ、さすがだな。」
ギィは以前戦うことが出来なかった。だがあの頃から人間の真似をするのがとっても上手だったのだ。器用に原盤を作り出しては、嬉しそうに俺に見せてくれる。ギィの頭を撫でてやると、嬉しそうにギィ、と言った。
ギィの息子さんも真似して上手に原盤を作り、ギィに見せている。手先が器用なのはお父さん譲りだな。ギィが俺の真似をして息子さんを撫でてやると、ギィの息子さんも嬉しそうに笑った。ギィの奥さんは少し苦戦しているらしく、リスタが手伝ってやっていた。
「よし、たくさん出来たな。じゃあこれを海に沈めにいこうか。」
ゾロゾロとみんなで海に移動すると、用意されていた小舟に乗って、原盤を沈める場所まで移動する。ここからの作業はホブゴブリンたちにも手伝って貰うのだ。
原盤を海に沈める作業は、漁師をやっている孤児院出身の大人たちが手伝ってくれた。
ギィたちホブゴブリンが、見様見真似で原盤を海に沈めていく。あとはみんな次第だ。
「さて、次は焼いた貝殻を取りに行こうか。
ギィたちはちょっと待っててくれ。」
俺はリスタと町民たちをともなって、貝殻を焼いてくれている家を回った。
「はい、ご注文どおり、洗ったラパァの貝殻を焼いて冷ましたもんを袋に詰めといたよ。
こんなのいったいなんにするんだい?」
「ちょっと肥料と鳥の餌を作りたくて。」
ロベルタさんから渡された袋に、たくさんのラパァの貝殻を焼いて冷ましたものが詰められたものを、おばさんから受け取った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
245
お気に入りに追加
1,299
あなたにおすすめの小説
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
自分をドラゴンロードの生まれ変わりと信じて止まない一般少女
神谷モロ
ファンタジー
主人公ルーシーは10歳の少女である。
彼女はなぜか自分を「呪いのドラゴンロード」の生まれ変わりと信じてやまない。
そんな彼女の日常と少しばかりの冒険のお話。
※この作品は『カイルとシャルロットの冒険~ドラゴンと魔剣~』のエピローグから10年後のお話です。
どちらの作品も主人公が違うので時系列を追う必要はありませんが興味を持たれたらご一読お願いします。
カクヨムでも投稿しています。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる