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第2部
第55話 風呂好きの魔物③
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「たぶん、最初に出会った時に、私たちが子どもだったからじゃないかしら。人間は子どもだと優しいけれど、大人は何もしていないのに攻撃してくると思っているのよ。
実際ダンジョンで迷子になっているのを見つけた時に、ギィは大人の冒険者たちに攻撃されて、可哀想なくらい怯えていたもの。」
「小さいギィからしてみたら、人間を攻撃なんて出来るわけがないのに、魔物というだけでいきなりたった1人で襲われたんだ、大人が嫌いになっても無理はないだろうな。
群れが言うことをきかないというよりも、ギィがとめていないのかも知れない。他のホブゴブリンが大人たちを攻撃することを。」
「トラウマになっている、ということなのですね。……その気持ちは分かります。
俺たち孤児も、人間の大人たちにはさんざん理不尽な目に合わされてきましたから。」
俺ももとは孤児だが、俺にはランウェイ、俺を育ててくれたランウェイの両親、ルーフェン村の大人たちがいた。
周りの大人たちが孤児に対して手を差し伸べることは少ない。俺には想像もつかないような苦労があったのだろう。
「……ですが、このままでは、彼を助けることが出来ません。他の大人たちにも安全であることを証明しなくては、彼らは討伐されてしまいます。彼に言い聞かせられませんか?
昔なじみなんですよね?」
俺もリスタも一瞬言葉に詰まった。
「……それはさすがに無理だ。テイマーは簡単な言葉やボディーランゲージで、魔物と意思疎通をはかれる職業ではあるが、説得出来る程の言葉は持たない。人間の大人を攻撃するな、なんて言葉、どんな魔物の言語であっても、俺たちは知らないんだ。」
「そんな……。じゃあどうしたら……。
お願いだよ、ギィ。僕たちは君たちに生きてて欲しいんだ。僕たちが生き延びられたのも、僕が仕事で成功して、この町を救えるかも知れないのも、ぜんぶ君のおかげなんだ。
それなのに君を失ってしまったら、僕はみんなになんて言ったらいいの。」
ロベルタさんは人目をはばからずに泣いていた。リスタもそれを見て涙ぐんだ。
「お願いだよ。大人たちを攻撃するのをやめてくれ。僕もみんなも、大人たちに君と同じ目に合わされた。だけど、仕返ししたら駄目なんだ。手を取り合って生きていかなきゃいけないんだ。このままだと君は討伐されてしまう。お願いだから、分かってよ……。」
ギィは不思議そうに、自分にすがって泣き崩れるロベルタさんを見つめていた。
「──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
ようは、ギィたちが大人たちと一緒に暮らせるところを、周囲に見せてやれればいいんだよな?ギィたちなら、それが出来る。」
「そ、それは、どうすればいいんですか?」
「まずは人手を集めてくれ。ギィたちに好意的な人間がいい。あと、ここからここまでの長さ以上の長い針金と、キリと、大型のハンマーと、口のしばれる紐付きの袋をそれぞれ大量に、それとある程度のお金と、カマドを貸してくれるたくさんの家、それとDランク以上のテイマーがひとりだな。魔物のテイムの有無は問わない。」
「お金と人手は分かりますが、カマドを貸してくれるたくさんの家、ですか……?
オマケにテイマーって、ホブゴブリンをテイムさせるってことですか?Dランクじゃ、ギィをテイムするのは無理なんじゃ……。」
「そうだな……。あとはコイツも使うか。」
俺はうず高く積まれた貝殻の山を、立てた親指で指し示した。
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実際ダンジョンで迷子になっているのを見つけた時に、ギィは大人の冒険者たちに攻撃されて、可哀想なくらい怯えていたもの。」
「小さいギィからしてみたら、人間を攻撃なんて出来るわけがないのに、魔物というだけでいきなりたった1人で襲われたんだ、大人が嫌いになっても無理はないだろうな。
群れが言うことをきかないというよりも、ギィがとめていないのかも知れない。他のホブゴブリンが大人たちを攻撃することを。」
「トラウマになっている、ということなのですね。……その気持ちは分かります。
俺たち孤児も、人間の大人たちにはさんざん理不尽な目に合わされてきましたから。」
俺ももとは孤児だが、俺にはランウェイ、俺を育ててくれたランウェイの両親、ルーフェン村の大人たちがいた。
周りの大人たちが孤児に対して手を差し伸べることは少ない。俺には想像もつかないような苦労があったのだろう。
「……ですが、このままでは、彼を助けることが出来ません。他の大人たちにも安全であることを証明しなくては、彼らは討伐されてしまいます。彼に言い聞かせられませんか?
昔なじみなんですよね?」
俺もリスタも一瞬言葉に詰まった。
「……それはさすがに無理だ。テイマーは簡単な言葉やボディーランゲージで、魔物と意思疎通をはかれる職業ではあるが、説得出来る程の言葉は持たない。人間の大人を攻撃するな、なんて言葉、どんな魔物の言語であっても、俺たちは知らないんだ。」
「そんな……。じゃあどうしたら……。
お願いだよ、ギィ。僕たちは君たちに生きてて欲しいんだ。僕たちが生き延びられたのも、僕が仕事で成功して、この町を救えるかも知れないのも、ぜんぶ君のおかげなんだ。
それなのに君を失ってしまったら、僕はみんなになんて言ったらいいの。」
ロベルタさんは人目をはばからずに泣いていた。リスタもそれを見て涙ぐんだ。
「お願いだよ。大人たちを攻撃するのをやめてくれ。僕もみんなも、大人たちに君と同じ目に合わされた。だけど、仕返ししたら駄目なんだ。手を取り合って生きていかなきゃいけないんだ。このままだと君は討伐されてしまう。お願いだから、分かってよ……。」
ギィは不思議そうに、自分にすがって泣き崩れるロベルタさんを見つめていた。
「──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
ようは、ギィたちが大人たちと一緒に暮らせるところを、周囲に見せてやれればいいんだよな?ギィたちなら、それが出来る。」
「そ、それは、どうすればいいんですか?」
「まずは人手を集めてくれ。ギィたちに好意的な人間がいい。あと、ここからここまでの長さ以上の長い針金と、キリと、大型のハンマーと、口のしばれる紐付きの袋をそれぞれ大量に、それとある程度のお金と、カマドを貸してくれるたくさんの家、それとDランク以上のテイマーがひとりだな。魔物のテイムの有無は問わない。」
「お金と人手は分かりますが、カマドを貸してくれるたくさんの家、ですか……?
オマケにテイマーって、ホブゴブリンをテイムさせるってことですか?Dランクじゃ、ギィをテイムするのは無理なんじゃ……。」
「そうだな……。あとはコイツも使うか。」
俺はうず高く積まれた貝殻の山を、立てた親指で指し示した。
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