まもののおいしゃさん

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第2部

第53話 ランウェイのたくらみ②

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「俺は別に構わんが……。リリアが寂しがるな、せっかくリスタがいるのに。」
「お前はなんとも……、まあいいや。
 そういうわけだから、明日またな。」
「ああ、また明日。」
「おねえちゃんといっしょにねれないの?」
 リリアがガッカリした顔をする。

「お姉ちゃんがいても、別の部屋を使って貰うから、一緒には寝れないぞ?」
「えー?」
 俺はリリアの手を引いて家へと戻った。
「さて、親父になんて説明するかな……。
 こんな美人を急に連れてったら、勘違いしてはしゃいじまう。」

 ランウェイが頭と腰に手を当てて悩んでいることと、その後村長である親父さんに、俺の為に協力してくれと約束を取り付けていたことを、俺は知らずにいたのだった。
「お父さん、──お父さん!!」
 リリアの声にハッとする。
「な、なんだ、どうしたリリア。」

「きょう、おねえちゃんいないよ?
 ごはん1つおおいよ?」
 俺はテーブルの上に並べた3人分の料理を見てハッとした。
「あ……。そうだったな、すまんすまん。」
 リスタはランウェイの家だったな。

 今頃何をしているんだろうか。
 食事を終えて片付ける時も、風呂に入っている時も、リリアを寝かし付けたあとも、俺はなぜだかボーッとして過ごしてしまった。
 どうにもなかなか寝付けず、俺は一晩中、ベッドの上でゴロゴロして過ごした。

 リリアに朝ごはんを食べさせると、村長にリリアを預かって貰う為と、リスタを迎えに行く為にランウェイの家に向かう。
 リスタとランウェイはまだ朝食の真っ最中だった。リスタが昨日とは違う服を着ているのを見て、なぜだかギクッとする。いや、服くらい着替えるだろう、それがなんだ。

 リスタが笑いながら、ランウェイの頬についた汚れを拭ってやっているのを見て、思わずギョッとした。
「ああ、アスガルド、ごめんなさいね、急いで食べるから。」
 リスタがなにごともなかったかのように笑顔で言った。

「ああ、ゆっくりして貰って構わない。
 まだ馬車まで時間があるから……。」
 そんな俺の様子を見たランウェイが、テーブルに肘を付いて顎を置き、ニヤニヤと笑っている。今からでもアタックしてみたらいいじゃないかと俺が言ったから、アタックしているのだろうか?そうか……そうかもな。

 幼なじみで元ギルドメンバーのランウェイは、なんだかリスタの前にいると、大人の男性に見えて仕方がなかった。いや、まあ、お互いにいい年なんだから、当たり前のことなんだが、ずっと子どもの頃の感覚でいたし、飲み屋やそういう店の女性とかじゃなく、真面目に女性を口説いているところなんて見たことがないから、そんな風に思うのだろう。

 ランウェイもそろそろ身を固めてもいい頃だ。リスタが相手なら申し分ないな。
 少し寂しい気もするが、友人が別の世界を持つ時はそんなもんだろう。
「──お待たせ!」
 リスタが準備を終えてやってくる。ランウェイがヒラヒラと手を振っている。

「行ってくるわ。」
 リスタも手を振り返した。
「じゃあ、すまんがリリアを頼む。」
「ああ、任せとけ。よーし、リリアちゃん、今日はおじちゃんと遊ぼうか?」
「うん!」
 俺はランウェイの家のドアをしめた。

 グジャナの町につき、冒険者ギルドに立ち寄ると、ロリズリー男爵が送ってくれた早馬のおかげか、きちんと正式に依頼が入っていることを告げられた。
 俺はそれを受注すると、リスタと共にグジャナの町の町長の家を訪ねた。

「ああ、アスガルドさん。引き受けて下さって本当にありがとうございます。グジャナの町長をしておりますロベルタと申します。」
 ロベルタさんはまだ若い男性だった。失礼ながら町長をするような年齢ではなかった。
「……私の年齢に驚いているでしょうね。」

「あ、はあ。いや、まあ……。」
「それには訳があるのです。私たちが魔物を助けて欲しいと思う理由にもつながります。
 アスガルドさんをぜひ連れて行きたい場所があるのですが、詳しい説明はそちらでしてもよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません。」

「では、馬車を用意してありますので、それで移動しましょう。」
 従者もつけず、名字を名乗らないところを見ると、ロベルタさんは平民出身なのだろうな。町長が従者を付けている場合、それは公費からではなく、その人自身の自費で付けているのだ。平民に従者を雇うお金はない。

 馬車は公費で出ているから、平民でも町長の足として自宅から使うことが出来る。
 町長になるには2つのパターンがある。
 代々引き受けているパターン。これは本人が下位貴族である場合がほとんどだ。
 町民の投票で選ばれるパターン。これは平民でもなることが出来るが、住民の半数以上に選ばれる必要がある。

 つまりロベルタさんは、この若さでグジャナの町の半数の人間から支持を受けているということだ。なかなか出来ることではない。
「──ここです。」
 馬車が止まった場所は古びた教会だった。
「お帰りなさい、ロベルタ。」
 教会の前に立っていたシスターが、優しく微笑んで出迎えてくれた。

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