108 / 128
第2部
第53話 ランウェイのたくらみ②
しおりを挟む
「俺は別に構わんが……。リリアが寂しがるな、せっかくリスタがいるのに。」
「お前はなんとも……、まあいいや。
そういうわけだから、明日またな。」
「ああ、また明日。」
「おねえちゃんといっしょにねれないの?」
リリアがガッカリした顔をする。
「お姉ちゃんがいても、別の部屋を使って貰うから、一緒には寝れないぞ?」
「えー?」
俺はリリアの手を引いて家へと戻った。
「さて、親父になんて説明するかな……。
こんな美人を急に連れてったら、勘違いしてはしゃいじまう。」
ランウェイが頭と腰に手を当てて悩んでいることと、その後村長である親父さんに、俺の為に協力してくれと約束を取り付けていたことを、俺は知らずにいたのだった。
「お父さん、──お父さん!!」
リリアの声にハッとする。
「な、なんだ、どうしたリリア。」
「きょう、おねえちゃんいないよ?
ごはん1つおおいよ?」
俺はテーブルの上に並べた3人分の料理を見てハッとした。
「あ……。そうだったな、すまんすまん。」
リスタはランウェイの家だったな。
今頃何をしているんだろうか。
食事を終えて片付ける時も、風呂に入っている時も、リリアを寝かし付けたあとも、俺はなぜだかボーッとして過ごしてしまった。
どうにもなかなか寝付けず、俺は一晩中、ベッドの上でゴロゴロして過ごした。
リリアに朝ごはんを食べさせると、村長にリリアを預かって貰う為と、リスタを迎えに行く為にランウェイの家に向かう。
リスタとランウェイはまだ朝食の真っ最中だった。リスタが昨日とは違う服を着ているのを見て、なぜだかギクッとする。いや、服くらい着替えるだろう、それがなんだ。
リスタが笑いながら、ランウェイの頬についた汚れを拭ってやっているのを見て、思わずギョッとした。
「ああ、アスガルド、ごめんなさいね、急いで食べるから。」
リスタがなにごともなかったかのように笑顔で言った。
「ああ、ゆっくりして貰って構わない。
まだ馬車まで時間があるから……。」
そんな俺の様子を見たランウェイが、テーブルに肘を付いて顎を置き、ニヤニヤと笑っている。今からでもアタックしてみたらいいじゃないかと俺が言ったから、アタックしているのだろうか?そうか……そうかもな。
幼なじみで元ギルドメンバーのランウェイは、なんだかリスタの前にいると、大人の男性に見えて仕方がなかった。いや、まあ、お互いにいい年なんだから、当たり前のことなんだが、ずっと子どもの頃の感覚でいたし、飲み屋やそういう店の女性とかじゃなく、真面目に女性を口説いているところなんて見たことがないから、そんな風に思うのだろう。
ランウェイもそろそろ身を固めてもいい頃だ。リスタが相手なら申し分ないな。
少し寂しい気もするが、友人が別の世界を持つ時はそんなもんだろう。
「──お待たせ!」
リスタが準備を終えてやってくる。ランウェイがヒラヒラと手を振っている。
「行ってくるわ。」
リスタも手を振り返した。
「じゃあ、すまんがリリアを頼む。」
「ああ、任せとけ。よーし、リリアちゃん、今日はおじちゃんと遊ぼうか?」
「うん!」
俺はランウェイの家のドアをしめた。
グジャナの町につき、冒険者ギルドに立ち寄ると、ロリズリー男爵が送ってくれた早馬のおかげか、きちんと正式に依頼が入っていることを告げられた。
俺はそれを受注すると、リスタと共にグジャナの町の町長の家を訪ねた。
「ああ、アスガルドさん。引き受けて下さって本当にありがとうございます。グジャナの町長をしておりますロベルタと申します。」
ロベルタさんはまだ若い男性だった。失礼ながら町長をするような年齢ではなかった。
「……私の年齢に驚いているでしょうね。」
「あ、はあ。いや、まあ……。」
「それには訳があるのです。私たちが魔物を助けて欲しいと思う理由にもつながります。
アスガルドさんをぜひ連れて行きたい場所があるのですが、詳しい説明はそちらでしてもよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「では、馬車を用意してありますので、それで移動しましょう。」
従者もつけず、名字を名乗らないところを見ると、ロベルタさんは平民出身なのだろうな。町長が従者を付けている場合、それは公費からではなく、その人自身の自費で付けているのだ。平民に従者を雇うお金はない。
馬車は公費で出ているから、平民でも町長の足として自宅から使うことが出来る。
町長になるには2つのパターンがある。
代々引き受けているパターン。これは本人が下位貴族である場合がほとんどだ。
町民の投票で選ばれるパターン。これは平民でもなることが出来るが、住民の半数以上に選ばれる必要がある。
つまりロベルタさんは、この若さでグジャナの町の半数の人間から支持を受けているということだ。なかなか出来ることではない。
「──ここです。」
馬車が止まった場所は古びた教会だった。
「お帰りなさい、ロベルタ。」
教会の前に立っていたシスターが、優しく微笑んで出迎えてくれた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「お前はなんとも……、まあいいや。
そういうわけだから、明日またな。」
「ああ、また明日。」
「おねえちゃんといっしょにねれないの?」
リリアがガッカリした顔をする。
「お姉ちゃんがいても、別の部屋を使って貰うから、一緒には寝れないぞ?」
「えー?」
俺はリリアの手を引いて家へと戻った。
「さて、親父になんて説明するかな……。
こんな美人を急に連れてったら、勘違いしてはしゃいじまう。」
ランウェイが頭と腰に手を当てて悩んでいることと、その後村長である親父さんに、俺の為に協力してくれと約束を取り付けていたことを、俺は知らずにいたのだった。
「お父さん、──お父さん!!」
リリアの声にハッとする。
「な、なんだ、どうしたリリア。」
「きょう、おねえちゃんいないよ?
ごはん1つおおいよ?」
俺はテーブルの上に並べた3人分の料理を見てハッとした。
「あ……。そうだったな、すまんすまん。」
リスタはランウェイの家だったな。
今頃何をしているんだろうか。
食事を終えて片付ける時も、風呂に入っている時も、リリアを寝かし付けたあとも、俺はなぜだかボーッとして過ごしてしまった。
どうにもなかなか寝付けず、俺は一晩中、ベッドの上でゴロゴロして過ごした。
リリアに朝ごはんを食べさせると、村長にリリアを預かって貰う為と、リスタを迎えに行く為にランウェイの家に向かう。
リスタとランウェイはまだ朝食の真っ最中だった。リスタが昨日とは違う服を着ているのを見て、なぜだかギクッとする。いや、服くらい着替えるだろう、それがなんだ。
リスタが笑いながら、ランウェイの頬についた汚れを拭ってやっているのを見て、思わずギョッとした。
「ああ、アスガルド、ごめんなさいね、急いで食べるから。」
リスタがなにごともなかったかのように笑顔で言った。
「ああ、ゆっくりして貰って構わない。
まだ馬車まで時間があるから……。」
そんな俺の様子を見たランウェイが、テーブルに肘を付いて顎を置き、ニヤニヤと笑っている。今からでもアタックしてみたらいいじゃないかと俺が言ったから、アタックしているのだろうか?そうか……そうかもな。
幼なじみで元ギルドメンバーのランウェイは、なんだかリスタの前にいると、大人の男性に見えて仕方がなかった。いや、まあ、お互いにいい年なんだから、当たり前のことなんだが、ずっと子どもの頃の感覚でいたし、飲み屋やそういう店の女性とかじゃなく、真面目に女性を口説いているところなんて見たことがないから、そんな風に思うのだろう。
ランウェイもそろそろ身を固めてもいい頃だ。リスタが相手なら申し分ないな。
少し寂しい気もするが、友人が別の世界を持つ時はそんなもんだろう。
「──お待たせ!」
リスタが準備を終えてやってくる。ランウェイがヒラヒラと手を振っている。
「行ってくるわ。」
リスタも手を振り返した。
「じゃあ、すまんがリリアを頼む。」
「ああ、任せとけ。よーし、リリアちゃん、今日はおじちゃんと遊ぼうか?」
「うん!」
俺はランウェイの家のドアをしめた。
グジャナの町につき、冒険者ギルドに立ち寄ると、ロリズリー男爵が送ってくれた早馬のおかげか、きちんと正式に依頼が入っていることを告げられた。
俺はそれを受注すると、リスタと共にグジャナの町の町長の家を訪ねた。
「ああ、アスガルドさん。引き受けて下さって本当にありがとうございます。グジャナの町長をしておりますロベルタと申します。」
ロベルタさんはまだ若い男性だった。失礼ながら町長をするような年齢ではなかった。
「……私の年齢に驚いているでしょうね。」
「あ、はあ。いや、まあ……。」
「それには訳があるのです。私たちが魔物を助けて欲しいと思う理由にもつながります。
アスガルドさんをぜひ連れて行きたい場所があるのですが、詳しい説明はそちらでしてもよろしいでしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「では、馬車を用意してありますので、それで移動しましょう。」
従者もつけず、名字を名乗らないところを見ると、ロベルタさんは平民出身なのだろうな。町長が従者を付けている場合、それは公費からではなく、その人自身の自費で付けているのだ。平民に従者を雇うお金はない。
馬車は公費で出ているから、平民でも町長の足として自宅から使うことが出来る。
町長になるには2つのパターンがある。
代々引き受けているパターン。これは本人が下位貴族である場合がほとんどだ。
町民の投票で選ばれるパターン。これは平民でもなることが出来るが、住民の半数以上に選ばれる必要がある。
つまりロベルタさんは、この若さでグジャナの町の半数の人間から支持を受けているということだ。なかなか出来ることではない。
「──ここです。」
馬車が止まった場所は古びた教会だった。
「お帰りなさい、ロベルタ。」
教会の前に立っていたシスターが、優しく微笑んで出迎えてくれた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
267
お気に入りに追加
1,337
あなたにおすすめの小説
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる