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第2部

第49話 新しい家族②

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「言えるくらいなら、とっくに言ってるわ!昔振られた時だって、すっごく勇気を出したのよ?2度も振られたらって思うと……、なかなか勇気が出ないの。」
「あいつ、まだ結婚してるつもりでいるしなあ……。そこの誤解を解決してやらんと、お前を意識させるのは無理かもしれん。」

「そうね……。それは私もそう思うわ。」
「まあ、この仕事が終わったら、俺も村に帰るから、出来る限り協力するよ。」
「ありがとう……。ランウェイが背中を押してくれなかったら、私、ここにも来られなかったもの。」
リスタが恥ずかしそうに微笑む。

「お前たちにはどっちも幸せになって欲しいからな。まあ、気長に頑張ろうぜ。」
「ええ。」
 ランウェイとリスタが戻ってくる。
「何を話してたんだ?俺は聞かなくて大丈夫なのか?」
トウコツ討伐の作戦会議なら、俺も聞いておいたほうがいいと思うんだが。

「まあちょっとな、個人的な話しさ。」
「そうか。」
 日頃一緒に働いているわけだしな、ギルドメンバーにだけ伝える内容というのもあるだろう。俺はもうギルドの一員じゃないしな。
「じゃあ、俺たちは行ってくるよ。」
 そう言って、ランウェイ率いる50人の討伐隊が山に登っていった。

「リッチ、万が一ということがある、様子を見てきてくれないか?
 討伐隊に何かあったら報告してくれ。」
 俺はリッチに討伐隊のあとを追わせた。
 上空から様子を見て、万が一討伐隊に何かあったら知らせて貰う為だ。
 新種ともなると、何があるか分からない。

 俺たちは討伐隊の戻りを待つ間に、まだ介護の訓練を受けていないパティオポンゴにそれを教えたり、介護されることに懐疑的だった村人に、マシューさんとマリーナさんが説明に行ったりと、パティオポンゴがここで生活する仲間になる為の、必要なやり取りをすすめていった。

 しばらくすると、山の方から、ギギャアアアア!という、気味の悪い悲鳴が何度も響いてきた。討伐隊がトウコツを退治しているのだろう。
 あまり聞いていて気持ちのいい音ではないので、村人たちもパティオポンゴたちも、作業の手をとめて山を見上げる。

 すると山頂からリッチが一気にこちらに飛んでくる。様子がおかしい。
「ピィー!ヒョオオオオオ!」
 とリッチが鳴いた。危険を知らせる合図だ。
「リスタ!」
「ええ!」
 俺とリスタはアイテムバッグから武器と防具を取り出して身につける。

 リッチが俺の頭の上で羽ばたく。するとしばらくして、山の上から1体のトウコツがこちらに向かって逃げてくるではないか。
「みなさん!家の中に逃げて下さい!」
 蜘蛛の子を散らしたように、村人たちが一目散に逃げていく。

 マリーナさんの車椅子を、ボスの妻がヒョイと抱えあげて走り出したのが、目の端に見えた。その後をマシューさんが追いかける。
 走るのが遅い村人たちを、次々にパティオポンゴたちが抱えあげて走る。家が分かる人はその人の家に、分からない人たちはパティオポンゴの家に運んだようだ。

 村人全員が避難したあと、パティオポンゴのボスだけが、俺たちの前に立った。
「ボス!」
 突進してくるトウコツを、ボスががっぷり四つで受け止める。
「今よ!」
 リスタがトウコツの腹を槍で貫き、俺が喉笛を掻き切った。

 それでもまだ動いている!パティオポンゴのボスはトウコツの首に力を入れ、力任せに首の骨を折った。ついにトウコツは動かなくなった。窓から見ていた村人たちから歓声があがる。パティオポンゴたちも手を叩いてピョンピョンとはねていた。

「ボス!大丈夫!?」
 リスタがボスに駆け寄る。ボスの呼吸は浅かった。あれだけの突進を直接胸に受けたのだ。内蔵がやられていてもおかしくない。
 マシューさんの家から慌てて出てきたボスの妻が、心配げにボスに寄り添った。

 それを見たリッチが、ボスの妻に何やら鳴き声を上げると、ボスの妻を従えて、再び山に猛スピードで飛んでいった。
 村人たちと他のパティオポンゴたちも、ソロソロと家から出てきて、横たわっているボスの周囲を囲む。
 ぐったりしているボスの姿に、みんな心配の表情を浮かべていた。

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