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第1部
第29話 新たな共生関係②
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俺はシュシュモタラの木に登り、1つずつゾーイの巣を取り除いては、土の上に置いていった。巣があると、逃げ出したゾーイが戻って来ることがある。巣を撤去することで、スカイラーから逃げおおせたゾーイが戻って来るのを防ぐ効果があるんだ。
「──これで全部ですね。もう、この山には、なんの問題もありませんよ。」
「本当に……本当にありがとうございます。」
ソフィアさんが涙ぐむ。
「ああ、それと、ロリズリー男爵。
そう言えばあなたは、魔物を使った商売を始めたいんでしたね?」
ロリズリー男爵がギクッとした顔をする。
「それは……、本当に申し訳なかった。
もう、忘れて下さい。」
ロリズリー男爵は小さくなって、しょんぼりしながら下を向いて言う。
「いえ、この山には、活かせる魔物はいませんが、活かせる植物が大量にあることを、お伝えしたかったのです。」
「それは……どういう?」
ロリズリー男爵が、期待半分、申し訳無さ半分のような表情を浮かべて俺を見る。
「この、シュシュモタラの木ですよ。
この木はとても優秀でしてね。
新芽と、実がなった際に、その種が食べられるんだが、それだけでなく、害虫駆除の薬の元となるのです。」
「害虫駆除……?」
「マニダラの天敵であるゾーイを呼び寄せる匂いの元を、天敵誘引剤と呼ぶんだが、これが害虫駆除の薬を作り出すのに使われているのです。」
俺はシュシュモタラの葉を手渡した。
「これを売ってみてはどうですか?
それと、ロリズリー男爵は、料理店を経営されているのでしたのね?
そこでこのシュシュモタラの新芽と実をだしてみてはいかがでしょう。タタオピのように、大儲けとまではいかないかも知れませんが、確実に収入源になりますよ。」
「ほ……、本当ですか!?」
ロリズリー男爵が喜びを表そうと、俺を抱きしめる為に、にじり寄って来るのを感じ、俺は一歩後退った。
「──何でしたら今なら、木の上の黄金鶏と呼ばれる、魔物の卵を使った料理店を出したいと考えている村も、ご紹介出来ますよ。
はじめは屋台からと言っていましたが、かなりの数がある。
料理をするにも、売りさばくにも、卵の消費期限におっつかないことでしょう。
少し分けて欲しいとお願いすれば、きっと売ってくれると思いますよ?
一年後には、更に消費しなくてはならない数も増える予定ですしね。」
「木の上の黄金鶏ですって!?
アナパゴスの卵が手に入るのですか?」
ロリズリー男爵の顔色が紅潮していく。
「おや、ご存知でしたか。
最近それが原因で、悩まされていた村を手助けしましてね。
通常アナパゴスが一度に卵を産む数は40個から60個程度なんだが、その個体は一度に100個以上も産むのです。」
「100個もですか!?それは凄い。」
「おまけに卵自体がとても大きい。
それが2週間に1回ですからね。
別の魔物の被害を減らす為に、最初の1年は半分だけ食べるようお伝えをしましたが、自分たちで食べるにしても、店を出すにしても、おそらくは余らせていると思いますよ?
ロリズリー男爵が一部引き取ってくださるのであれば、あちらも大助かりでしょう。」
「ぜひ……ぜひお願いしたい。
シュシュモタラの木と合わせて、うちの店の名物になります。
ああ……、なんてことだ。
ゾーイがいなくなっただけでなく、商売が広がるだなんて。
本当に……本当にありがとう、アスガルドさん。もし、それでうちの店が好調になれば、1年後でよければだが、その村が店を出したいというのであれば、うちの支店という形にするのはどうでしょう?
もちろん、資金は援助します。」
「それは素晴らしい。
ぜひ、そこも含めてお話させて下さい。
あちらも喜ぶことでしょう。」
「あともう1つ、ついでと言ってはなんなのですが、お願いしたいことがあるのですが。」
「──なんでしょう?」
「……うちの娘に、いい婿を、紹介していただけませんか?」
「それは……さすがに専門外ですよ。」
困惑する俺に、冗談ですよ、と、ロリズリー男爵は快活に笑うのだった。
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「──これで全部ですね。もう、この山には、なんの問題もありませんよ。」
「本当に……本当にありがとうございます。」
ソフィアさんが涙ぐむ。
「ああ、それと、ロリズリー男爵。
そう言えばあなたは、魔物を使った商売を始めたいんでしたね?」
ロリズリー男爵がギクッとした顔をする。
「それは……、本当に申し訳なかった。
もう、忘れて下さい。」
ロリズリー男爵は小さくなって、しょんぼりしながら下を向いて言う。
「いえ、この山には、活かせる魔物はいませんが、活かせる植物が大量にあることを、お伝えしたかったのです。」
「それは……どういう?」
ロリズリー男爵が、期待半分、申し訳無さ半分のような表情を浮かべて俺を見る。
「この、シュシュモタラの木ですよ。
この木はとても優秀でしてね。
新芽と、実がなった際に、その種が食べられるんだが、それだけでなく、害虫駆除の薬の元となるのです。」
「害虫駆除……?」
「マニダラの天敵であるゾーイを呼び寄せる匂いの元を、天敵誘引剤と呼ぶんだが、これが害虫駆除の薬を作り出すのに使われているのです。」
俺はシュシュモタラの葉を手渡した。
「これを売ってみてはどうですか?
それと、ロリズリー男爵は、料理店を経営されているのでしたのね?
そこでこのシュシュモタラの新芽と実をだしてみてはいかがでしょう。タタオピのように、大儲けとまではいかないかも知れませんが、確実に収入源になりますよ。」
「ほ……、本当ですか!?」
ロリズリー男爵が喜びを表そうと、俺を抱きしめる為に、にじり寄って来るのを感じ、俺は一歩後退った。
「──何でしたら今なら、木の上の黄金鶏と呼ばれる、魔物の卵を使った料理店を出したいと考えている村も、ご紹介出来ますよ。
はじめは屋台からと言っていましたが、かなりの数がある。
料理をするにも、売りさばくにも、卵の消費期限におっつかないことでしょう。
少し分けて欲しいとお願いすれば、きっと売ってくれると思いますよ?
一年後には、更に消費しなくてはならない数も増える予定ですしね。」
「木の上の黄金鶏ですって!?
アナパゴスの卵が手に入るのですか?」
ロリズリー男爵の顔色が紅潮していく。
「おや、ご存知でしたか。
最近それが原因で、悩まされていた村を手助けしましてね。
通常アナパゴスが一度に卵を産む数は40個から60個程度なんだが、その個体は一度に100個以上も産むのです。」
「100個もですか!?それは凄い。」
「おまけに卵自体がとても大きい。
それが2週間に1回ですからね。
別の魔物の被害を減らす為に、最初の1年は半分だけ食べるようお伝えをしましたが、自分たちで食べるにしても、店を出すにしても、おそらくは余らせていると思いますよ?
ロリズリー男爵が一部引き取ってくださるのであれば、あちらも大助かりでしょう。」
「ぜひ……ぜひお願いしたい。
シュシュモタラの木と合わせて、うちの店の名物になります。
ああ……、なんてことだ。
ゾーイがいなくなっただけでなく、商売が広がるだなんて。
本当に……本当にありがとう、アスガルドさん。もし、それでうちの店が好調になれば、1年後でよければだが、その村が店を出したいというのであれば、うちの支店という形にするのはどうでしょう?
もちろん、資金は援助します。」
「それは素晴らしい。
ぜひ、そこも含めてお話させて下さい。
あちらも喜ぶことでしょう。」
「あともう1つ、ついでと言ってはなんなのですが、お願いしたいことがあるのですが。」
「──なんでしょう?」
「……うちの娘に、いい婿を、紹介していただけませんか?」
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