まもののおいしゃさん

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第1部

第27話 謎の巣作り②

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 なるほどな。先日応対した際、随分と焦っているような気がして、借金でもあるのだろうかと勘繰っていたのだが、そんな理由からだったのか。
「……そうでしたか。
 俺にも娘がおります。
 娘が嫁ぐまではと、どんな父親も、自分が持ちうる限りの力で、出来るだけのことをしてやりたいと思っている。
 そういうことでしたら、俺も遺恨を残さず仕事が出来そうだ。」

 俺がそう言うと、ソフィアさんは、ほっとしたような表情を見せる。
「ありがとうございます。
 ……娘から見て父は少し、見栄っ張りなところがあるのです。
 貴族として、舐められないよう、自分を大きく見せようとして、他人をわざと威圧してしまうと言いますか……。
 本当は、とても小心者で、誰にでも優しい自慢の父なのです。」
「……仲がおよろしいのですね。」
 俺の言葉に、ソフィアさんが微笑む。

「はい、わたくし、父の事が大好きです。
 とても尊敬致しております。」
「それはとてもいいことだ。」
 俺もつられて微笑んだ。
「では、山に向かいながら、状況をお聞かせ願いましょうか。」
 ソフィアさんは、はい、と頷くと、俺とリッチを伴い、ロリズリー男爵家が管理しているという山に案内してくれた。

「──あちらです。」
 見上げると、たくさんのゾーイが木に巣をつくり、羽ばたいている。
 ゾーイは雑食の鳥の魔物だが、基本的に同じ場所に巣を作り、こんなに一度に大量に、今まで巣を作らなかったところに現れるというのは珍しい。
 おまけに、一度別の冒険者が討伐したにも関わらず、再度同じ山に再び大量に現れたとなると、ソフィアさんの言う通り、この山に何かしらの原因があることになる。
「ちなみに、あれはいつから?」

「ひと月ほど前からになるでしょうか。
 近付くと人を襲いますし、大量に落とされるフンで、山が傷んでしまっています。
 山で取れるものを食べたり、うちの店で出すものに使っているのですが、それも出来なくなって困っているのです。」
「なるほど。ちなみに、何かこの山で、最近変わったことはありましたか?」
「私も父も、あまり山には詳しくありませんので、普段採集するものについてしか分からないのですが、特別変わったことはなかったように思います。」

「分かりました。
 ここから先は危険だ。
 ソフィアさんは先に帰って下さい。
 俺はこのまま調査を続けます。」
「……よろしくおねがいします。 」
 ソフィアさんはお辞儀をすると、一人で山を下って行った。
「──リッチ、少し大変だが、頑張ってくれよ。あとでニャラララをやるからな。」
 俺はリッチを撫でる。

 ゾーイの群れに近付かないと、何が原因であるのか調べる事が出来ない。
 おそらく巣がある場所の周辺に原因があるのだとは思うが、リッチよりもランクの低い魔物とはいえ、あまりに数が多過ぎる。
 ちなみに、ゾーイが巣を作る木の傾向は決まっている。
 背が高く、葉の面積が広く、枝をたくさんのばして、外敵から身を隠しやすく、かつ、雨風が避けられる木だ。
 該当する木の枝の根元に巣を作る。

 だが、この森には、一見してそんな木は、殆ど見当たらず、実際にゾーイが巣を作っている枝も、遠目から見ても、ほぼ巣がむき出しだ。俺は違和感を覚えた。
「なんで、こんなところに……?」
 俺はリッチを追いかけるように、ゾーイが集まっている場所に近付いていった。
 ピィー!ピィー!と、ゾーイが仲間に警戒を知らせる鳴き声を上げる。
 自由に空を飛び回っていたゾーイたちが、一斉にこちらを向いた。

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