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第1部
第25話 魔物に操られた犬②
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エンリーは怯えたように、その時のことを思い出してブルブルと震えだす。
「ベルのあとをつけて、何をしているのか見張ってたんだけど、裏の森に魔物といるのを見ちゃったんだ……。
ベルは毎日、その魔物のところに行ってるんだよ。」
「──魔物と?」
それは有力な情報だ。
「それはどんな魔物だ?
分かる限りでいい。特徴を教えて欲しい。
例えば、目が赤く光っているだとか、灰色の肌で、人型をしていただとか、そういうことはなかったか?」
「目は……、赤かったと思うよ。
それに灰色だった。
──でも、人型なんかじゃなかったぜ?」
人型じゃない?
「じゃあ、具体的にどんな魔物だったんだ?」
「全身が毛むくじゃらの毛に覆われた、目の赤い灰色の魔物だよ。
とても大きくて、俺の背丈くらいはあったな。」
始祖ではないようだが、魔物を介してベルが従魔にされたのであれば、人も危険になってくる。
もちろんそれ自体が従魔にされた魔物であるのなら、始祖が近くにいる可能性も捨てきれない。
せめて遠くからでも様子が見たい。
「エンリー、今日もベルはそこに行ってるんだろう?
すまないが、その場所に案内してくれないか。」
「ええっ!?
そ……そうだよな、分かった。」
エンリーはゴクリとツバを飲み込んだ。
森の中を歩く道すがら、俺はもっと詳しいベルの状態を、エンリーから聞き出す事にした。
「エンリー、ベルは急にシュタファーさんに吠えたり、牙をむくようになったとのことだが、……シュタファーさんが噛みつかれるような事はなかったか?」
「いや?俺の知る限りそれはないよ。」
「餌はきちんと食べるのか?」
「それは食べてるみたいだ。
餌入れはいつも空になっているから。
むしろいつもより、たくさん欲しがるようになったみたいだ。」
ふむ?
始祖に仲間にされたとしても、始祖が従魔化した魔物に仲間にされたのだとしても、奴らの主食は血だ。
味を不味いと感じるようになるのか、段々と今まで食べていたものを口にしなくなる。
「ちなみに様子がおかしくなってどれくらいなんだ?」
「確か2ヶ月くらい前からって、シュタファーさんは言ってたよ。」
2ヶ月だって?
それなら別のことが原因かも知れない。
血を吸われたのであれば、1ヶ月もあれば完全に魔物化し、普通の食事を受け付けなくなる。
「──あそこだよ。
いつもあそこに、魔物と一緒にいるんだ。」
木々を掻き分け、出来るだけ音をさせないようにしながら覗くと、ベルらしき茶色い犬と、巨大な灰色の毛むくじゃらの魔物の姿が見えた。
フサフサの体毛が長くのびて、殆ど灰色の鞠のようだ。
たが、エンリーは赤い目だと言ったが、この距離だからとはいえ、とても目の色までは確認出来ない。
「お前、どうやって目の色を確認したんだ?
俺には全然、目の位置なんて分からないぞ?」
「俺が見かけた時は、ここまで毛むくじゃらじゃなかったんだよ。」
なるほどな。
「最悪のケースを想定していたんだが、これなら大丈夫そうだ。
エンリー、シュタファーさんを連れて来てくれないか?
あと、これから言うものを持って来てくれ。」
「ええっ!?
ほ、ホントに大丈夫なのかよ、犬を操る魔物だぜ?
俺たちだって、近付いたら操られちまうんじゃ……。」
「まあ、ベルはある意味、やられちまってることには、間違いないがな。」
笑う俺に、エンリーは訳がわからない、という顔をした。
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「ベルのあとをつけて、何をしているのか見張ってたんだけど、裏の森に魔物といるのを見ちゃったんだ……。
ベルは毎日、その魔物のところに行ってるんだよ。」
「──魔物と?」
それは有力な情報だ。
「それはどんな魔物だ?
分かる限りでいい。特徴を教えて欲しい。
例えば、目が赤く光っているだとか、灰色の肌で、人型をしていただとか、そういうことはなかったか?」
「目は……、赤かったと思うよ。
それに灰色だった。
──でも、人型なんかじゃなかったぜ?」
人型じゃない?
「じゃあ、具体的にどんな魔物だったんだ?」
「全身が毛むくじゃらの毛に覆われた、目の赤い灰色の魔物だよ。
とても大きくて、俺の背丈くらいはあったな。」
始祖ではないようだが、魔物を介してベルが従魔にされたのであれば、人も危険になってくる。
もちろんそれ自体が従魔にされた魔物であるのなら、始祖が近くにいる可能性も捨てきれない。
せめて遠くからでも様子が見たい。
「エンリー、今日もベルはそこに行ってるんだろう?
すまないが、その場所に案内してくれないか。」
「ええっ!?
そ……そうだよな、分かった。」
エンリーはゴクリとツバを飲み込んだ。
森の中を歩く道すがら、俺はもっと詳しいベルの状態を、エンリーから聞き出す事にした。
「エンリー、ベルは急にシュタファーさんに吠えたり、牙をむくようになったとのことだが、……シュタファーさんが噛みつかれるような事はなかったか?」
「いや?俺の知る限りそれはないよ。」
「餌はきちんと食べるのか?」
「それは食べてるみたいだ。
餌入れはいつも空になっているから。
むしろいつもより、たくさん欲しがるようになったみたいだ。」
ふむ?
始祖に仲間にされたとしても、始祖が従魔化した魔物に仲間にされたのだとしても、奴らの主食は血だ。
味を不味いと感じるようになるのか、段々と今まで食べていたものを口にしなくなる。
「ちなみに様子がおかしくなってどれくらいなんだ?」
「確か2ヶ月くらい前からって、シュタファーさんは言ってたよ。」
2ヶ月だって?
それなら別のことが原因かも知れない。
血を吸われたのであれば、1ヶ月もあれば完全に魔物化し、普通の食事を受け付けなくなる。
「──あそこだよ。
いつもあそこに、魔物と一緒にいるんだ。」
木々を掻き分け、出来るだけ音をさせないようにしながら覗くと、ベルらしき茶色い犬と、巨大な灰色の毛むくじゃらの魔物の姿が見えた。
フサフサの体毛が長くのびて、殆ど灰色の鞠のようだ。
たが、エンリーは赤い目だと言ったが、この距離だからとはいえ、とても目の色までは確認出来ない。
「お前、どうやって目の色を確認したんだ?
俺には全然、目の位置なんて分からないぞ?」
「俺が見かけた時は、ここまで毛むくじゃらじゃなかったんだよ。」
なるほどな。
「最悪のケースを想定していたんだが、これなら大丈夫そうだ。
エンリー、シュタファーさんを連れて来てくれないか?
あと、これから言うものを持って来てくれ。」
「ええっ!?
ほ、ホントに大丈夫なのかよ、犬を操る魔物だぜ?
俺たちだって、近付いたら操られちまうんじゃ……。」
「まあ、ベルはある意味、やられちまってることには、間違いないがな。」
笑う俺に、エンリーは訳がわからない、という顔をした。
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