まもののおいしゃさん

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第1部

第23話 初めての料理②

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 アナパゴスは一見恐竜とワニを足したかのような見た目だが、その性質はイグアナに近い。
 イグアナは基本、草食でのんびりとしている生き物だ。その肉は鶏のような味がし、国によっては養殖をしていた地域もあるくらいだ。
 ある種のイグアナがそうであるように、アナパゴスは、落ちて来る木の実を待って食べれば充分なくらい、非常にものぐさで少食だ。
 特に卵が腹に詰まっている時は、窒息してしまうので長い期間餌を食べない。
 肉に臭みもなく大変美味で、もっと小さな個体は木の上で過ごす事が多い事から、木の上の黄金鶏との異名を持つ、質の高い鶏のような味がする。

「──ちなみにどうして、卵を食べるのは半分だけなのですか?」
 ニルスさんが尋ねてくる。
「卵を半分だけ残すのは、ミッドファエーの数を自然に減らす為です。
 栄養豊富なアナパゴスの卵を毎日食べる事で、爆発的に数が増えてしまったのですよ。
 本来多くても20頭くらいで群れを作るミッドファエーが、たった半年の間に50頭以上にも増えている。
 食べるものがあるから、それでも成り立つのでしょうが、本来餌が足りなくなるので、1箇所にここまで集まることはありません。
 急に食べる物がなくなれば襲って来かねませんが、半分が続けば自然と群れが別れてよそへ行きます。
 本来ここまで人里に近い場所には現れませんしね。
 1年経ったらまた卵を半分に減らします。それを繰り返していけば、やがて山奥に帰ってゆくでしょう。
 半年もの間、卵を置きに行って無事だったわけですから、いなくなるまでの間も、卵を置く限りは、襲われることはないでしょう。」
 村人たちはホッとした表情を見せた。

 俺はアナパゴスの卵をいくつか分けて貰い、持って来ておいた、アイテムボックス代わりのマジックバッグに入れた。
 内容量に応じて値段が上がるが、普通に市販されているものだ。
 冒険者時代に購入した物で、俺が使っている物は、ゾウ一頭くらいなら余裕で入るサイズだ。
 家が入るサイズの物や、無限に入ると言われるサイズの物もあったが、討伐した魔物が一匹入れば充分だと判断してこのサイズにした。
 高い買い物だったが、こうして未だに使えて便利だ。

 俺は村に戻ると村長の家にリリアを迎えに行った。
 日中、近所の主婦が洗濯や農作業をしながら、自分の子どもたちと一緒に、外で見てくれる時以外は、こうして預かって貰っている。
 自宅に戻り、アナパゴスの卵を見せ、これが卵だと説明すると、リリアは目を丸くした。
 こんなに大きな卵なのだ、それだけでも子どもにとっては興味深いと思うが、俺はそれだけでなく、今日はリリアに料理を教えるつもりでいた。

 食は娯楽だ。
 大きな卵がふわとろのオムレツになる。
 作る過程から楽しくて美味しい。
 それは何よりのごちそうだと俺は思っている。
 何より、小さい頃、母の料理する姿を見て、手伝いたくてたまらなかったことを思い出す。
 俺が初めて手伝ったのは、ホワイトソースをただ、ダマにならないよう、かき混ぜるだったが、それでも楽しくて仕方がなかった。

 その喜びと、親と一緒に料理する楽しさをリリアに教えたい。
 猫の手にしながら包丁で切るやり方を教え、俺がリリアが包丁を持つ手に、手を重ねるやり方でトマトを切る。
 気持ちがはやるのか、俺が包丁を動かすスピードを、リリアが焦れったく感じているのが分かる。
 言葉には出さないが、俺はリリアが料理を楽しんでいる事が分かって、嬉しくてたまらなかった。

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