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第1部
第23話 初めての料理①
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「具体的に、どうすればよいのですか?」
「簡単だ。アナパゴスの卵を食べてしまえばいいのです、ただし、半分だけね。」
「食べる!?魔物の卵をですか?」
「アナパゴスは、それ自体も美味だが、卵もまた格別ですよ。
試しに何か作ってみましょう。」
俺はニルスさんの自宅のキッチンを貸して貰う事にした。
俺はまずは木の枝を拾うと、簡単に削って箸を作った。
月桂樹の葉──乾燥させたものをローリエと呼ぶが、実は直接、木から取っても使えるのだと、前世の妻と知り合ったきっかけの、自宅で料理教室を開いていた先生が、ドヤ顔で庭の木から直接取っていたのを思い出す──を一枚、木から千切る。
それから畑から貰ったトマトを2つ皮を剥く。
湯剥きでもいいが、冷凍庫があれば、冷凍してしまえば、水で流しながら剥くのが楽なんだがな。
煮詰めるので小さめに切るのだが、冷凍した物を半解凍にした方が切るのも楽だし、舌触りも滑らかに出来る。
俺が持って来た砂糖、塩を、3:1の割合で、玉ねぎを4分の1と、にんにくを一欠みじん切りした物と共に、切ったトマトに加え、中火で15分程煮詰める。
ドロドロになって来たらアクを取れば透明感が出るが俺は取らない派だ。
お酢を小さじに半分程加え、更に10分煮詰める。
これで自家製ケチャップの出来上がりだ。
ナツメグやシナモンスティック、白ワインなどを入れるやり方もあるし(その場合酢は入れない)、お好みで一味唐辛子を加えたりオリーブオイルを入れても美味しいが、そんな物はここにはないので、ある物で作れる範囲の物だ。
続いて卵をトンカチで割り、ボウルに入れると量があり過ぎて少しやり辛いので、ザルでこしながら桶に入れる。
箸の先を少し開いて縦に切るように卵を混ぜつつ、固まりにくくする為に牛の乳を少し入れる。水でも構わない。この時、決して箸を回転させてはいけない。
フライパンにバターを落として全体に広げながら、中火で温める。
卵液を一気に流し込むと、外側から固まってくるので、内側に巻き込むように箸の先を回転させ、中火で3分の1程均一に火を通す。
その状態から10秒程火にかける。フライパンを斜めに傾け、軽く剥がしながらトントン叩くと、下の方に集まって来る。
そのまま火を通すと、縁が丸く固まってくるので、それをひっくり返し、はみ出た部分を下に接した面の内側に入れる。
これでプレーンオムレツの出来上がりだ。
本当はチキンライスの上に載せ、真ん中から切れば、ふわとろオムライスが出来るのだが、米がないので致し方ない。
自家製ケチャップをかけて出来上がりだ。
「さあどうぞ、食べてみてくれ。」
見た目は完全にプレーンオムレツだが、皆恐る恐るといった感じでスプーンを口に運ぶ。
だが口にした瞬間、全員が目を見開いた。
「なんだこれ……!」
「ほんのり甘くて……。たまらない、もう一口……。」
「あっ、おい、そこから取るなよ!俺が今食べてるだろうが!」
「──卵だけでこれだけ美味かったら、店が開けるんじゃないか?」
「最初は屋台を作って、大きな街の広場に店を出すんだ、元手はタダだし、きっと野菜を作るよりも儲かるぞ!」
村人たちがワイワイと盛り上がる。魔物の卵に恐れていたのが嘘のようだ。
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「簡単だ。アナパゴスの卵を食べてしまえばいいのです、ただし、半分だけね。」
「食べる!?魔物の卵をですか?」
「アナパゴスは、それ自体も美味だが、卵もまた格別ですよ。
試しに何か作ってみましょう。」
俺はニルスさんの自宅のキッチンを貸して貰う事にした。
俺はまずは木の枝を拾うと、簡単に削って箸を作った。
月桂樹の葉──乾燥させたものをローリエと呼ぶが、実は直接、木から取っても使えるのだと、前世の妻と知り合ったきっかけの、自宅で料理教室を開いていた先生が、ドヤ顔で庭の木から直接取っていたのを思い出す──を一枚、木から千切る。
それから畑から貰ったトマトを2つ皮を剥く。
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俺が持って来た砂糖、塩を、3:1の割合で、玉ねぎを4分の1と、にんにくを一欠みじん切りした物と共に、切ったトマトに加え、中火で15分程煮詰める。
ドロドロになって来たらアクを取れば透明感が出るが俺は取らない派だ。
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これで自家製ケチャップの出来上がりだ。
ナツメグやシナモンスティック、白ワインなどを入れるやり方もあるし(その場合酢は入れない)、お好みで一味唐辛子を加えたりオリーブオイルを入れても美味しいが、そんな物はここにはないので、ある物で作れる範囲の物だ。
続いて卵をトンカチで割り、ボウルに入れると量があり過ぎて少しやり辛いので、ザルでこしながら桶に入れる。
箸の先を少し開いて縦に切るように卵を混ぜつつ、固まりにくくする為に牛の乳を少し入れる。水でも構わない。この時、決して箸を回転させてはいけない。
フライパンにバターを落として全体に広げながら、中火で温める。
卵液を一気に流し込むと、外側から固まってくるので、内側に巻き込むように箸の先を回転させ、中火で3分の1程均一に火を通す。
その状態から10秒程火にかける。フライパンを斜めに傾け、軽く剥がしながらトントン叩くと、下の方に集まって来る。
そのまま火を通すと、縁が丸く固まってくるので、それをひっくり返し、はみ出た部分を下に接した面の内側に入れる。
これでプレーンオムレツの出来上がりだ。
本当はチキンライスの上に載せ、真ん中から切れば、ふわとろオムライスが出来るのだが、米がないので致し方ない。
自家製ケチャップをかけて出来上がりだ。
「さあどうぞ、食べてみてくれ。」
見た目は完全にプレーンオムレツだが、皆恐る恐るといった感じでスプーンを口に運ぶ。
だが口にした瞬間、全員が目を見開いた。
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「ほんのり甘くて……。たまらない、もう一口……。」
「あっ、おい、そこから取るなよ!俺が今食べてるだろうが!」
「──卵だけでこれだけ美味かったら、店が開けるんじゃないか?」
「最初は屋台を作って、大きな街の広場に店を出すんだ、元手はタダだし、きっと野菜を作るよりも儲かるぞ!」
村人たちがワイワイと盛り上がる。魔物の卵に恐れていたのが嘘のようだ。
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