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第1部
第22話 石の秘密①
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「これがここにあるという事は、コイツを好む魔物が近くにいる筈だが、しかし、石なんぞ使わないしな……。
いや、待てよ?」
俺は一人考えを巡らせる。
その時リッチが急に攻撃態勢に入った。
見上げると、ワサボカクタスの木の近くに、たくさんのミッドファエーが集まって来る。
小さなマントヒヒのような見た目の、猿の魔物だ。顔だけ大きくてとてもバランスが悪いが、夜、木の枝の間から、外敵に顔だけを見せて、大きな姿だと思わせて威嚇して追い払うのだ。
知恵があり、肉食で、イタズラ好きで、たまに集団で家畜を襲うこともある、やっかいな魔物だ。
コイツらの仕業なのか?
だが石を道のど真ん中に置くようなイタズラは聞いたことがない。
可能性の1つではあるが、石を置くところをみないと何とも言えない。
その時、また木の上から実が落ちて来た。今度は俺に当たらず地面に落ちる。
すると、つん、つん、と、誰かが俺のスネを突いている気がして振り返った。
「──こいつは……!
こんなデカい個体は見たことがないぞ?
冒険者が来ないと、ここまでデカくなるのか。
……待てよ?」
俺はすべての理由が分かった気がした。
「……本当に魔物が来るのでしょうか?」
2週間後、俺とニルスさんは、広場の見える家の家人にお願いし、夜中起きていて、広場に魔物が現れるのを待っていた。
「はい、恐らくは。」
「でも、2週間に1回定期的に来るって、そんな律儀な魔物……。」
「シッ。来たようです。」
月明かりの中、音もさせずそれは、ゆっくりと、少しずつこちらに近付いてくる。
それが通った後に点々と、石がコロリと転げ落ちる。
そして広場の中央まで来た時、それは動きを止めた。黒くて大きな影から、月明かりに照らされた白い石が次々と飛び出してくる。
「い、石が……!
本当に魔物の仕業だったんた。」
石がこんもりと広場に山になった頃、その巨大な影はまたゆっくりと、元来た方向へと戻って行った。
「あれは一体なんなのですか?」
「それは明るくなったらお教えしましょう。
夜は危ない。一度寝て、それから対策についてもお話しします。
朝になったら、村の皆さんを集めていただいてもよろしいですか?」
「……わかりました。」
俺たちはそのまま家人の了承を得て、その日はそこに一晩やっかいになることになった。
朝になり、俺はニルスさんが集めてくれた村の人たちと森に来ていた。
「みなさんは、この木をご存知ですか?」
「はい、なんか昔からありますけど、名前まではよく分かりません。」
「──これは、ワサボカクタスという植物の、未発見の新種だ。
本来のワサボカクタスは、もっと小さく、せいぜい3メートルくらいまでしか成長しません。
他の木と合わさって進化したのか、これが祖先なのかは分からないが、とても珍しい物です。」
「これが、魔物と何か関係が?」
「はい、この木は年中実をつける、とても珍しい木で、水の少ない場所でも育ち、その実にたくさんの水分を含む、雨量の少ない場所ではとても重宝されるものです。
この実を食べる為に、木の下に集まって来る魔物がいるのです。
──ほら、今日もやって来ました。」
言われて村人が振り返ると、全長10メートルはあろうかという、巨大な口を持つ全身トゲに覆われた、爬虫類のような魔物が現れた。
皆、あまりの恐怖に、思わず出かかった悲鳴を飲み込む。刺激して襲いかかって来たらと思ったのだろう。
魔物は落ちて来た実をパクリと食べる。そしてまた、木の実が落ちてくるのを待つように、木の下でじっとしていた。
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いや、待てよ?」
俺は一人考えを巡らせる。
その時リッチが急に攻撃態勢に入った。
見上げると、ワサボカクタスの木の近くに、たくさんのミッドファエーが集まって来る。
小さなマントヒヒのような見た目の、猿の魔物だ。顔だけ大きくてとてもバランスが悪いが、夜、木の枝の間から、外敵に顔だけを見せて、大きな姿だと思わせて威嚇して追い払うのだ。
知恵があり、肉食で、イタズラ好きで、たまに集団で家畜を襲うこともある、やっかいな魔物だ。
コイツらの仕業なのか?
だが石を道のど真ん中に置くようなイタズラは聞いたことがない。
可能性の1つではあるが、石を置くところをみないと何とも言えない。
その時、また木の上から実が落ちて来た。今度は俺に当たらず地面に落ちる。
すると、つん、つん、と、誰かが俺のスネを突いている気がして振り返った。
「──こいつは……!
こんなデカい個体は見たことがないぞ?
冒険者が来ないと、ここまでデカくなるのか。
……待てよ?」
俺はすべての理由が分かった気がした。
「……本当に魔物が来るのでしょうか?」
2週間後、俺とニルスさんは、広場の見える家の家人にお願いし、夜中起きていて、広場に魔物が現れるのを待っていた。
「はい、恐らくは。」
「でも、2週間に1回定期的に来るって、そんな律儀な魔物……。」
「シッ。来たようです。」
月明かりの中、音もさせずそれは、ゆっくりと、少しずつこちらに近付いてくる。
それが通った後に点々と、石がコロリと転げ落ちる。
そして広場の中央まで来た時、それは動きを止めた。黒くて大きな影から、月明かりに照らされた白い石が次々と飛び出してくる。
「い、石が……!
本当に魔物の仕業だったんた。」
石がこんもりと広場に山になった頃、その巨大な影はまたゆっくりと、元来た方向へと戻って行った。
「あれは一体なんなのですか?」
「それは明るくなったらお教えしましょう。
夜は危ない。一度寝て、それから対策についてもお話しします。
朝になったら、村の皆さんを集めていただいてもよろしいですか?」
「……わかりました。」
俺たちはそのまま家人の了承を得て、その日はそこに一晩やっかいになることになった。
朝になり、俺はニルスさんが集めてくれた村の人たちと森に来ていた。
「みなさんは、この木をご存知ですか?」
「はい、なんか昔からありますけど、名前まではよく分かりません。」
「──これは、ワサボカクタスという植物の、未発見の新種だ。
本来のワサボカクタスは、もっと小さく、せいぜい3メートルくらいまでしか成長しません。
他の木と合わさって進化したのか、これが祖先なのかは分からないが、とても珍しい物です。」
「これが、魔物と何か関係が?」
「はい、この木は年中実をつける、とても珍しい木で、水の少ない場所でも育ち、その実にたくさんの水分を含む、雨量の少ない場所ではとても重宝されるものです。
この実を食べる為に、木の下に集まって来る魔物がいるのです。
──ほら、今日もやって来ました。」
言われて村人が振り返ると、全長10メートルはあろうかという、巨大な口を持つ全身トゲに覆われた、爬虫類のような魔物が現れた。
皆、あまりの恐怖に、思わず出かかった悲鳴を飲み込む。刺激して襲いかかって来たらと思ったのだろう。
魔物は落ちて来た実をパクリと食べる。そしてまた、木の実が落ちてくるのを待つように、木の下でじっとしていた。
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