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第1部
第17話 油まみれの森②
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西暦を5で割り切れる年は青、
1余る年は白、
2余る年は黄、
3余る年は赤、
4余る年は緑、
でマーキングするという、国際的な決まりが養蜂家には存在するが、そもそもこの世界は西暦じゃないし、5年以上生存することの少ない蜜蜂と違い、スイートビーは10年は生きるので、この計算だと色が足らない。
単に俺が分かっていれば充分なので、今年は赤と決めた。
「おーい、アスガルド!人が訪ねて来てるぞ!」
再開したサウナで客対応していた筈のアントが俺を呼びに来る。
「──客?」
村長の家に連れて行かれて家に入ろうとすると、外に立っていた屈強な男にジロリと見られた。護衛だろうか?
どうやら客というのは、ちょっとお偉い立場の人間らしい。
応接間の椅子に腰掛けていたのは、仕立てのよい服を着てヒゲを蓄えた紳士と、その後ろに控えるように立っている、従者であろう若い男だった。
「どうも。アスガルドだ。
俺に用と言うことだが、あなたは……。」
ヒゲの紳士が椅子から立ち上がり、右手を差し出す。
「ご挨拶が遅れて申し訳ない。
私は公爵のフォトンベルトと申す者。
これは従者のエンスリーです。」
俺はフォトンベルト公爵と握手をした。
「これはどうもご丁寧に……。
こんなむさ苦しいところまで、わざわざいらしていただいたのは、俺に仕事を依頼されたいと言うことですか?
──あ、立ち話もなんなので、おかけください。」
俺とフォトンベルト公爵がテーブルを挟んで椅子に腰掛ける。
「さよう。ベルエンテール公爵よりご紹介いただきました。
最近私の領地が、魔物に荒らされているようなのです。」
「魔物に……ですか。それなら冒険者ギルドでもいい筈だが、なぜ俺に?」
「実はまだ、魔物の被害と決まった訳ではないのです。
私の領地では林業を営んでおるのですが、元々高温多湿な地域ではあったのですが、連日雨が続いて木が弱りだした。
それに加えて、地面が油まみれになるという、奇妙な現象がおこるようになったのです。
今までも魔物が出ない訳ではなかったのに、そのような被害はいまだかつてありませんでした。」
「油まみれ……?」
「魔物の調査と退治だけであれば、冒険者ギルドでも構わないのですが、私は林業のほうを今すぐにでもどうにかしたいのです。
魔物が原因だったとして、魔物がいなくなっても、油まみれになった土を、誰かが片付けてくれるわけじゃない。
魔物が原因であった場合、今土をどうにかしたところで、再び同じ被害が発生しないと言い切れません。
このままでは土が死んでしまう。
ですが、もしあなたの知識で、油を出す魔物を活かしつつ、林業と共存出来る可能性があるのであれば、私はそれにかけてみたいと思ったのです。」
「なるほど、そういうことであればお引き受けしましょう。
ちょっと大きい仕事になりそうなので、冒険者ギルドを通じて、正式に依頼をいただけますでしょうか?」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
フォトンベルト公爵は、ほっとしたように笑顔を見せた。
俺はフォトンベルト公爵と、訪問日時について約束をし、夕方には冒険者ギルドで依頼を受けることにした。
「公爵家からの依頼か……。
まもののおいしゃさん、これで本格的に浸透させられるといいな。」
俺はぐっとこぶしを握りしめたのだった。
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1余る年は白、
2余る年は黄、
3余る年は赤、
4余る年は緑、
でマーキングするという、国際的な決まりが養蜂家には存在するが、そもそもこの世界は西暦じゃないし、5年以上生存することの少ない蜜蜂と違い、スイートビーは10年は生きるので、この計算だと色が足らない。
単に俺が分かっていれば充分なので、今年は赤と決めた。
「おーい、アスガルド!人が訪ねて来てるぞ!」
再開したサウナで客対応していた筈のアントが俺を呼びに来る。
「──客?」
村長の家に連れて行かれて家に入ろうとすると、外に立っていた屈強な男にジロリと見られた。護衛だろうか?
どうやら客というのは、ちょっとお偉い立場の人間らしい。
応接間の椅子に腰掛けていたのは、仕立てのよい服を着てヒゲを蓄えた紳士と、その後ろに控えるように立っている、従者であろう若い男だった。
「どうも。アスガルドだ。
俺に用と言うことだが、あなたは……。」
ヒゲの紳士が椅子から立ち上がり、右手を差し出す。
「ご挨拶が遅れて申し訳ない。
私は公爵のフォトンベルトと申す者。
これは従者のエンスリーです。」
俺はフォトンベルト公爵と握手をした。
「これはどうもご丁寧に……。
こんなむさ苦しいところまで、わざわざいらしていただいたのは、俺に仕事を依頼されたいと言うことですか?
──あ、立ち話もなんなので、おかけください。」
俺とフォトンベルト公爵がテーブルを挟んで椅子に腰掛ける。
「さよう。ベルエンテール公爵よりご紹介いただきました。
最近私の領地が、魔物に荒らされているようなのです。」
「魔物に……ですか。それなら冒険者ギルドでもいい筈だが、なぜ俺に?」
「実はまだ、魔物の被害と決まった訳ではないのです。
私の領地では林業を営んでおるのですが、元々高温多湿な地域ではあったのですが、連日雨が続いて木が弱りだした。
それに加えて、地面が油まみれになるという、奇妙な現象がおこるようになったのです。
今までも魔物が出ない訳ではなかったのに、そのような被害はいまだかつてありませんでした。」
「油まみれ……?」
「魔物の調査と退治だけであれば、冒険者ギルドでも構わないのですが、私は林業のほうを今すぐにでもどうにかしたいのです。
魔物が原因だったとして、魔物がいなくなっても、油まみれになった土を、誰かが片付けてくれるわけじゃない。
魔物が原因であった場合、今土をどうにかしたところで、再び同じ被害が発生しないと言い切れません。
このままでは土が死んでしまう。
ですが、もしあなたの知識で、油を出す魔物を活かしつつ、林業と共存出来る可能性があるのであれば、私はそれにかけてみたいと思ったのです。」
「なるほど、そういうことであればお引き受けしましょう。
ちょっと大きい仕事になりそうなので、冒険者ギルドを通じて、正式に依頼をいただけますでしょうか?」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
フォトンベルト公爵は、ほっとしたように笑顔を見せた。
俺はフォトンベルト公爵と、訪問日時について約束をし、夕方には冒険者ギルドで依頼を受けることにした。
「公爵家からの依頼か……。
まもののおいしゃさん、これで本格的に浸透させられるといいな。」
俺はぐっとこぶしを握りしめたのだった。
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