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第1部
第16話 レオペンの勘違い②
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俺は翌日再びポンリオ村を訪ねた。
レオペン対策を話す為だ。
「まず、このエイボスの花を、すべて切り落として下さい。」
村人たちがざわつく。
「そんな……この木が原因だって言うんですか?」
「ええ。その理由は、レオペンが弱視だからです。」
「あの……弱視って?」
村人が恐る恐る尋ねる。
「まったく見えない訳ではないのですが、視界が薄ぼんやりしているということです。
光や、うっすらと色は分かりますが、物の形などは分かりません。
エイボスの木は、まるで木全体を覆うかのように、小さな花がたくさん付きます。
それがレオペンの目から見ると、巣の真ん前に、天敵であるレッドボスが群れをなしているように見えるのです。」
弱視は程度の差こそあるが、メガネをしても物をはっきりと見ることが出来ない症状をさす。
人も動物も魔物も、生まれた時ははっきりと色や形を認識出来ないものだが、成長とともに見えるようになる筈のものが、見えないまま育つことがある。
弱視は治療出来るケースもあるが、魔物のレオペンにそれは不可能な為、当然その殆どが弱視として育つ。
エイボスの木は、まるで真っ赤な桜のような木だ。とても美しいが、レオペンを食べるレッドボスと言う鳥の魔物と色が酷似している。
色しか分からないレオペンが、それを見て巣を守る為に追い払おうとしていたのだ。
「サイファー君を巣に持ち帰ったのも同じ理由です。
レオペンの雛は皆灰色をしている。
レオペンは灰色の上下を着ていたサイファー君を、巣から落ちた自分の子どもだと勘違いしたのでしょう。」
見えていないので、よく、よその雛を間違えて連れて帰ることも多い。俺の子だ、と主張したらレオペンが引いたのはそういう訳だ。
「じゃあ……やっぱり、レオペンを退治しないと、エイボスの木を使って、人を呼ぶことが出来なくなることに、変わりがないじゃないですか。」
村人たちがザワザワしだす。
「代わりにこんなのはどうですか?
レオペンを追い出さずに、観光客を呼ぶ方法です。」
「うわあ!早い!
一瞬であんなところから、こんなところまで降りて来たぞ!」
「かわいい!並んで歩いてるよ!」
ポンリオ村はレオペンの食事風景を見る観光ツアーで、連日客が溢れていた。
レオペンは実は飛べない。ペンギンに似た魔物で、イワトビペンギンの頭部の飾り羽のようなものが、ライオンのたてがみのように、顔の周りについている。
餌を取る時は、高い木や岩肌から、風に乗ってグライダーのように一気に滑空するのだ。
だから高いところに巣を作る。
そして巣に戻る際は、これまたよちよちと、ペンギンの行進のように、並んで歩きながら巣へと戻る。
空を猛スピードで滑空する姿と、歩く姿のギャップが受けて、すっかり大人気だ。
花を切ったエイボスの木に餌入れの籠をもうけ、一日2回、餌を入れる。
自分たちで餌を取らなくなると困るので、これが限界と指示してある。
「俺たちにとっては少しも珍しいものじゃないから、こんなにウケるとは思ってもみませんでした。」
「まあ、見慣れた人からしたらそんなもんですよ。」
ザカルナンドさんは未だに今の盛況ぶりが不思議なようだ。
「何から何まで、ありかとうございました。」
「僕ね、もう嘘ついてないよ!」
両親とも和解したサイファーは、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。
そんな2人に手を振って別れる。
まもののおいしゃさん初めての仕事は、依頼主が大満足の中終わったのだった。
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レオペン対策を話す為だ。
「まず、このエイボスの花を、すべて切り落として下さい。」
村人たちがざわつく。
「そんな……この木が原因だって言うんですか?」
「ええ。その理由は、レオペンが弱視だからです。」
「あの……弱視って?」
村人が恐る恐る尋ねる。
「まったく見えない訳ではないのですが、視界が薄ぼんやりしているということです。
光や、うっすらと色は分かりますが、物の形などは分かりません。
エイボスの木は、まるで木全体を覆うかのように、小さな花がたくさん付きます。
それがレオペンの目から見ると、巣の真ん前に、天敵であるレッドボスが群れをなしているように見えるのです。」
弱視は程度の差こそあるが、メガネをしても物をはっきりと見ることが出来ない症状をさす。
人も動物も魔物も、生まれた時ははっきりと色や形を認識出来ないものだが、成長とともに見えるようになる筈のものが、見えないまま育つことがある。
弱視は治療出来るケースもあるが、魔物のレオペンにそれは不可能な為、当然その殆どが弱視として育つ。
エイボスの木は、まるで真っ赤な桜のような木だ。とても美しいが、レオペンを食べるレッドボスと言う鳥の魔物と色が酷似している。
色しか分からないレオペンが、それを見て巣を守る為に追い払おうとしていたのだ。
「サイファー君を巣に持ち帰ったのも同じ理由です。
レオペンの雛は皆灰色をしている。
レオペンは灰色の上下を着ていたサイファー君を、巣から落ちた自分の子どもだと勘違いしたのでしょう。」
見えていないので、よく、よその雛を間違えて連れて帰ることも多い。俺の子だ、と主張したらレオペンが引いたのはそういう訳だ。
「じゃあ……やっぱり、レオペンを退治しないと、エイボスの木を使って、人を呼ぶことが出来なくなることに、変わりがないじゃないですか。」
村人たちがザワザワしだす。
「代わりにこんなのはどうですか?
レオペンを追い出さずに、観光客を呼ぶ方法です。」
「うわあ!早い!
一瞬であんなところから、こんなところまで降りて来たぞ!」
「かわいい!並んで歩いてるよ!」
ポンリオ村はレオペンの食事風景を見る観光ツアーで、連日客が溢れていた。
レオペンは実は飛べない。ペンギンに似た魔物で、イワトビペンギンの頭部の飾り羽のようなものが、ライオンのたてがみのように、顔の周りについている。
餌を取る時は、高い木や岩肌から、風に乗ってグライダーのように一気に滑空するのだ。
だから高いところに巣を作る。
そして巣に戻る際は、これまたよちよちと、ペンギンの行進のように、並んで歩きながら巣へと戻る。
空を猛スピードで滑空する姿と、歩く姿のギャップが受けて、すっかり大人気だ。
花を切ったエイボスの木に餌入れの籠をもうけ、一日2回、餌を入れる。
自分たちで餌を取らなくなると困るので、これが限界と指示してある。
「俺たちにとっては少しも珍しいものじゃないから、こんなにウケるとは思ってもみませんでした。」
「まあ、見慣れた人からしたらそんなもんですよ。」
ザカルナンドさんは未だに今の盛況ぶりが不思議なようだ。
「何から何まで、ありかとうございました。」
「僕ね、もう嘘ついてないよ!」
両親とも和解したサイファーは、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。
そんな2人に手を振って別れる。
まもののおいしゃさん初めての仕事は、依頼主が大満足の中終わったのだった。
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