まもののおいしゃさん

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第1部

第15話 嘘付きサイファー②

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「サイファー!」
 ザカルナンドさんが男の子に気付いて大きな声を上げる。
 子どもたちはそのまま走り去って行き、ザカルナンドさんが声を上げた男の子だけが、その場で気まずそうな顔をしている。

「どうしてそう、いつもいつも嘘をつくんだ?
 村のみんなを困らせるのは、やめなさいと言っただろう!」
 サイファーがビクッと肩をすくめてギュッと目をつむる。
「……お父さんのバカ。」
「サイファー!」
 そう言って泣きそうになりながら、サイファーは駆け出して行ってしまった。

「……すみません、お見苦しいところを……。」
「お子さんですか?」
「ええ、この村は貧乏なので、当然夫婦共稼ぎなのですが、うちは妻も外に働きに行ってまして。
 あまり構ってやれないせいか、やたらと嘘をついて、村の人たちを困らせるようになってしまって。」
「嘘……ですか。
 ──ちょっと、サイファー君と話をしてもいいですか?」
「え、ええ、構いませんが……。」

 俺はサイファーの後を追いかけた。サイファーは農業用に作られた、大きな人工的な溜池の前にしゃがみ込み、不貞腐れながら池に石を投げ込んでいた。
「──魚やカエルがびっくりしてるな。」
「おじちゃん誰?」
 サイファーが俺を見上げる。
「おじちゃんは、さっきお父さんと一緒にいた、お父さんのお友達だ。
 ここに座ってもいいかい?」
「……いいよ。」

 サイファーは石を拾って投げ込み続ける。
 俺は平たい石を選んで拾うと、
「ちょっとおじちゃんが投げてみるから、少しだけ石を投げるのをやめて貰ってもいいか?
 水面が静かじゃないと出来ないんだ。」
 サイファーはコックリと頷いた。
「よっ!」
 俺は水面を切るように平たい石を投げた。
 1、2、3、4、5、6、7、8。
 石は水面を跳ねるように水面を移動し、9回目を待てずに水に沈んだ。

「……8回か、腕が落ちたな。」
「どうやったの!?僕にも教えて!」
 サイファーが目をキラキラさせながら俺を見てくる。
「いいぞ?まずはこの中から、出来るだけ平たい石を選ぶんだ。」
 俺はサイファーと一緒になって、平たい石選びをした。
「そうだ……。そうやって、低い位置から……、体を回転させるようにして……、投げる!」

 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、ポチャリ。
「凄いじゃないか、初めてであんなに飛んだぞ?」
「おじちゃんよりいっぱいはねた!」
 サイファーはぴょんぴょん飛び回って全身で喜びを表現する。素直でとてもいい子だ。
 水切りのコツは簡単だ、まず出来るだけ平たい石を選ぶ。次に低い位置から投げる。この時片膝を付き、少し前屈みになって体を斜めにすれば、腕を振った時に自然と石を離す位置が下になる。

 膝くらいの高さからアンダースローで投げるイメージだ。
 そして大事なのは石の回転だ。
 スピードを早く投げれば投げる程、空気抵抗が大きくなり、石は落ちやすくなるのだが、横回転をかけることで、回転によるジャイロ効果により、石の軌道と姿勢が安定するのだ。
 肝心なのは、指をしっかり石に引っ掛けて、腕の振りに沿って、人差し指から抜けるように、腰を回しながら投げること。

 手首で回転をかけようとすると、あまり回転がかからないのだ。
 ちなみに俺の子どもの時の最大回数は37回で、地域ナンバーワンを誇ったものだが、水切りは世界では90回を超える人もいる、立派な競技なのだ。
 簡単ながら、実に奥の深い遊びといえるだろう。
 少し仲良くなれたかな、と思った俺は、サイファーに肝心なことを聞き出すことにした。
「お父さんが、さっき、みんなに嘘をついて困らせると言ってただろう?
 ちなみにどんな嘘をついたりするんだい?」
 サイファーは俺に話したものか、戸惑いながら俺を見上げた。

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