23 / 134
第1部
第15話 嘘付きサイファー②
しおりを挟む
「サイファー!」
ザカルナンドさんが男の子に気付いて大きな声を上げる。
子どもたちはそのまま走り去って行き、ザカルナンドさんが声を上げた男の子だけが、その場で気まずそうな顔をしている。
「どうしてそう、いつもいつも嘘をつくんだ?
村のみんなを困らせるのは、やめなさいと言っただろう!」
サイファーがビクッと肩をすくめてギュッと目をつむる。
「……お父さんのバカ。」
「サイファー!」
そう言って泣きそうになりながら、サイファーは駆け出して行ってしまった。
「……すみません、お見苦しいところを……。」
「お子さんですか?」
「ええ、この村は貧乏なので、当然夫婦共稼ぎなのですが、うちは妻も外に働きに行ってまして。
あまり構ってやれないせいか、やたらと嘘をついて、村の人たちを困らせるようになってしまって。」
「嘘……ですか。
──ちょっと、サイファー君と話をしてもいいですか?」
「え、ええ、構いませんが……。」
俺はサイファーの後を追いかけた。サイファーは農業用に作られた、大きな人工的な溜池の前にしゃがみ込み、不貞腐れながら池に石を投げ込んでいた。
「──魚やカエルがびっくりしてるな。」
「おじちゃん誰?」
サイファーが俺を見上げる。
「おじちゃんは、さっきお父さんと一緒にいた、お父さんのお友達だ。
ここに座ってもいいかい?」
「……いいよ。」
サイファーは石を拾って投げ込み続ける。
俺は平たい石を選んで拾うと、
「ちょっとおじちゃんが投げてみるから、少しだけ石を投げるのをやめて貰ってもいいか?
水面が静かじゃないと出来ないんだ。」
サイファーはコックリと頷いた。
「よっ!」
俺は水面を切るように平たい石を投げた。
1、2、3、4、5、6、7、8。
石は水面を跳ねるように水面を移動し、9回目を待てずに水に沈んだ。
「……8回か、腕が落ちたな。」
「どうやったの!?僕にも教えて!」
サイファーが目をキラキラさせながら俺を見てくる。
「いいぞ?まずはこの中から、出来るだけ平たい石を選ぶんだ。」
俺はサイファーと一緒になって、平たい石選びをした。
「そうだ……。そうやって、低い位置から……、体を回転させるようにして……、投げる!」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、ポチャリ。
「凄いじゃないか、初めてであんなに飛んだぞ?」
「おじちゃんよりいっぱいはねた!」
サイファーはぴょんぴょん飛び回って全身で喜びを表現する。素直でとてもいい子だ。
水切りのコツは簡単だ、まず出来るだけ平たい石を選ぶ。次に低い位置から投げる。この時片膝を付き、少し前屈みになって体を斜めにすれば、腕を振った時に自然と石を離す位置が下になる。
膝くらいの高さからアンダースローで投げるイメージだ。
そして大事なのは石の回転だ。
スピードを早く投げれば投げる程、空気抵抗が大きくなり、石は落ちやすくなるのだが、横回転をかけることで、回転によるジャイロ効果により、石の軌道と姿勢が安定するのだ。
肝心なのは、指をしっかり石に引っ掛けて、腕の振りに沿って、人差し指から抜けるように、腰を回しながら投げること。
手首で回転をかけようとすると、あまり回転がかからないのだ。
ちなみに俺の子どもの時の最大回数は37回で、地域ナンバーワンを誇ったものだが、水切りは世界では90回を超える人もいる、立派な競技なのだ。
簡単ながら、実に奥の深い遊びといえるだろう。
少し仲良くなれたかな、と思った俺は、サイファーに肝心なことを聞き出すことにした。
「お父さんが、さっき、みんなに嘘をついて困らせると言ってただろう?
ちなみにどんな嘘をついたりするんだい?」
サイファーは俺に話したものか、戸惑いながら俺を見上げた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ザカルナンドさんが男の子に気付いて大きな声を上げる。
子どもたちはそのまま走り去って行き、ザカルナンドさんが声を上げた男の子だけが、その場で気まずそうな顔をしている。
「どうしてそう、いつもいつも嘘をつくんだ?
村のみんなを困らせるのは、やめなさいと言っただろう!」
サイファーがビクッと肩をすくめてギュッと目をつむる。
「……お父さんのバカ。」
「サイファー!」
そう言って泣きそうになりながら、サイファーは駆け出して行ってしまった。
「……すみません、お見苦しいところを……。」
「お子さんですか?」
「ええ、この村は貧乏なので、当然夫婦共稼ぎなのですが、うちは妻も外に働きに行ってまして。
あまり構ってやれないせいか、やたらと嘘をついて、村の人たちを困らせるようになってしまって。」
「嘘……ですか。
──ちょっと、サイファー君と話をしてもいいですか?」
「え、ええ、構いませんが……。」
俺はサイファーの後を追いかけた。サイファーは農業用に作られた、大きな人工的な溜池の前にしゃがみ込み、不貞腐れながら池に石を投げ込んでいた。
「──魚やカエルがびっくりしてるな。」
「おじちゃん誰?」
サイファーが俺を見上げる。
「おじちゃんは、さっきお父さんと一緒にいた、お父さんのお友達だ。
ここに座ってもいいかい?」
「……いいよ。」
サイファーは石を拾って投げ込み続ける。
俺は平たい石を選んで拾うと、
「ちょっとおじちゃんが投げてみるから、少しだけ石を投げるのをやめて貰ってもいいか?
水面が静かじゃないと出来ないんだ。」
サイファーはコックリと頷いた。
「よっ!」
俺は水面を切るように平たい石を投げた。
1、2、3、4、5、6、7、8。
石は水面を跳ねるように水面を移動し、9回目を待てずに水に沈んだ。
「……8回か、腕が落ちたな。」
「どうやったの!?僕にも教えて!」
サイファーが目をキラキラさせながら俺を見てくる。
「いいぞ?まずはこの中から、出来るだけ平たい石を選ぶんだ。」
俺はサイファーと一緒になって、平たい石選びをした。
「そうだ……。そうやって、低い位置から……、体を回転させるようにして……、投げる!」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、ポチャリ。
「凄いじゃないか、初めてであんなに飛んだぞ?」
「おじちゃんよりいっぱいはねた!」
サイファーはぴょんぴょん飛び回って全身で喜びを表現する。素直でとてもいい子だ。
水切りのコツは簡単だ、まず出来るだけ平たい石を選ぶ。次に低い位置から投げる。この時片膝を付き、少し前屈みになって体を斜めにすれば、腕を振った時に自然と石を離す位置が下になる。
膝くらいの高さからアンダースローで投げるイメージだ。
そして大事なのは石の回転だ。
スピードを早く投げれば投げる程、空気抵抗が大きくなり、石は落ちやすくなるのだが、横回転をかけることで、回転によるジャイロ効果により、石の軌道と姿勢が安定するのだ。
肝心なのは、指をしっかり石に引っ掛けて、腕の振りに沿って、人差し指から抜けるように、腰を回しながら投げること。
手首で回転をかけようとすると、あまり回転がかからないのだ。
ちなみに俺の子どもの時の最大回数は37回で、地域ナンバーワンを誇ったものだが、水切りは世界では90回を超える人もいる、立派な競技なのだ。
簡単ながら、実に奥の深い遊びといえるだろう。
少し仲良くなれたかな、と思った俺は、サイファーに肝心なことを聞き出すことにした。
「お父さんが、さっき、みんなに嘘をついて困らせると言ってただろう?
ちなみにどんな嘘をついたりするんだい?」
サイファーは俺に話したものか、戸惑いながら俺を見上げた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
779
お気に入りに追加
1,299
あなたにおすすめの小説
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる