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~番外編~
奥様の余裕? いいえ、……です。
しおりを挟む黒髪眼鏡のイケメン高校教師なウチの旦那様はモテます。
ええ、こうして……
「今年はまた……大量ですね……」
「はい……」
バレンタインデーに、紙袋四袋分のチョコレートを持ち帰るくらいには!!
結婚してから二回目のバレンタインデー。
今年もたくさんのチョコレートを貰って来た正宗さん。(このまま電車に乗るのは人目を引くだろうと、幸村先生がそこまで送ってって下さったらしいよ。そして幸村先生はこの後朧さんとバレンタインデートだって!! きゃー!!!)
去年は二袋だった!!
そして今年は四袋!! って……ば、倍ですか!?
あ、あれかな……? 去年は新婚と言うこともあって、断られるだろうなって思った先生方や生徒さん達が、断らずに受け取っている正宗さんを見て来年は……!! 私も……!! 的な?
どうしよう私確実に太るな……!!
そして夕食後。
少しお腹を休めてから、紅茶を淹れてお茶の間で寛ぐ正宗さんの元に。
あ、今日はですね……。紅茶の他に……
「お待たせしました~」
「……千鶴さん……これ……」
へへっ!! そうですよ~!!
デザートも、あるのです。
「私からの、バレンタインチョコ……です」
今年も作りましたよ! バレンタインチョコ。
去年はね、ちょっと失敗しちゃったんだけど……
去年の経験を教訓に、今年は……
「甘さ控えめの、ビターチョコムース、です」
いただいたチョコレート。大半は私が食べちゃうけど、正宗さんにも食べていただくので。(だって渡した人は正宗さんに食べて欲しくて渡しているわけだから!)
それで、たくさん甘いチョコレートを食べることになるでしょう?
だから甘さを控えめにしたビターチョコレートを使って、食感もとろとろと食べやすいムースを作ることにしたのです。
甘さ控えめにするくらいなら、チョコレートじゃない方がいいかなあ……? って、思ったりもしたけど……(ハート型のおせんべいとか、ね!)
でもやっぱり、バレンタインには私のチョコも、た、食べてほしいと思うわけで……っ。(は、恥ずかしいななんか……っ)
それで、今年はネットでいろいろとレシピを検討して、このビターチョコムースに辿り着いたのですよ。
透明なガラスの器に、チョコレートムースと生クリームが綺麗な層になっている。(あ、生クリームも甘さ控えめにしてあります!)
さらに、クリームの上にミントの葉も添えてみました!!(見た目が可愛いのも、このレシピを選んだポイントなのです)
チョコレートムースには、ビターチョコの他にコーヒーも使っているので、ほろ苦……な大人の味になっている。(お昼に味見で一個食べたのです!)
「千鶴さん……。ありがとうございます……」
「っ!!」
その神々しいスマイル!!
ああこんな笑顔向けられたら、そら他の人達だって正宗さんにチョコ贈りたくなりますよね……っ!!
気持ちよくわかるー!!!!
そして、私達は紅茶と一緒にチョコレートムースを食べました。(自分の分ももちろん作ってあったのですよ)
とろっとろでほろ苦甘い、チョコレートムース。
正宗さんは、「美味しいです」って言ってくれて。
私はえへへ……と、ニヨニヨしてしまった。嬉しいなあ、美味しいなあ。
そして……
「それじゃあさっそく、こちらもいただきましょうか」
私は正宗さんがいただいてきたチョコレートの中から適当に箱を二つ取り出して、炬燵の上に並べた。
ふふふ。これからチョコレートとの甘い戦いの日々が始まるのですよ……!!
ちょっとずつでもね~、食べ進めていかないとね。
「おおー! これ、ちょっとお高いチョコっ!!」
包装用紙の中から出てきたカードに、私は歓声を上げる。
有名なチョコレートブランドのヤツじゃないですか!! いつも気になって、でも値段がちょっとな~って、諦めてたんだよね~。
かさかさと包装を解いて、一つ口に入れる。
んん!! うまー!!
お、こっちは洋酒がきいてるな~。これもうまー!!
もぐもぐと、美味しいチョコレートを口にする私。はあ、幸せ……
正宗さんはそんな私を眺めながら、優雅に紅茶を口にしていらっしゃる。(あ、チョコに手つけてないな……)
うふふ。ティーカップを手に持つ正宗さんのお姿マジで眼福ですよ。
普段の湯のみで緑茶も良いけど、たまに紅茶も良いよね~。洋菓子には紅茶だね、うん。
あ、でもチョコレートと牛乳ってのも、好きです!!
(うまー!!)
……え?
ところでお前、嫉妬とかしないのかって……?
(……ごくん)
私はちょっとお高いチョコレートを飲み込んだ。
(ま、まあ。あんまり義理チョコっぽくはないよね、このチョコ……)
義理チョコにしてはお値段高いし、ね。
でも、たとえばこれが、他の女性の恋心の籠った本命チョコ……だったとして。
正宗さんがそれを、私に預けてくれるのは……
「……もぐ」
彼がそれを、その想いを。受け取るつもりはない、って、ことだと思うんだ。
だから私は、すっごい嫌な奥さんかもしれないけど……
お、驕り高ぶった考えなのかもしれないけど……ですね。
このチョコを贈ってくれた人達の想いごと。そして、自分の嫉妬心……ごと。
私はこの甘い甘い、チョコレートを。
「……もぐっ」
咀嚼して、飲み込んで、しまうんだ。
ごくん、と。甘いチョコレートを、紅茶と一緒に嚥下する。
そして私はにっこりと笑みを浮かべた。
「美味しい~!! 正宗さん、このチョコ美味しいですよ!!」
「……千鶴さん」
ん? なんだろう?
正宗さんがちょいちょいと手招きしている。
お茶のお代わりかな?
私は炬燵を出て、反対側に座る正宗さんの傍に寄った……ら。
「っ!!」
ぐい、と手を引かれ。
ちゅ……と、唇に生温かい感触が……
「!!!??? まっ、ままままっまま正宗さん!?」
そしていつの間にやら私、正宗さんのお膝の上に座らされておる!!??
正宗さんが座イス状態!! なにゆえ!?
「!!!???」
正宗さんの長い腕が、私のお腹を(ひぎゃっ!)抱きしめる。
「俺には、千鶴さんのチョコ一つで十分ですよ」
「っ……!!」
ほああああああああああああああああああああああああ!!!!
心臓に悪い、耳元に低音ボイス!!!
「でっ、でも……!!」
う、うううう嬉しいけど!! めっちゃ嬉しいけど!!!
正宗さんが貰ったチョコなのに、一口も口にしないというのはちょっと、申し訳ないというかあれなんですが!!!!
そそそそそそして何故この体勢!?
何故ぎゅー!?
「まっ、正宗さんも食べて下さいよ……っ」
私一人に食えと!?(い、いや食えますけれどもね。そういう問題じゃなくてですね)
「…………」
だんまりとか!!
「だ、だってこれ、正宗さんのチョコですよ……?」
わ、私一人がばくばくと食らい尽くすわけには……っ。
「……わかりました」
渋々、といった感じでチョコレートに手を伸ばす正宗さん。
ま、まあね。正宗さん甘い物が苦手なわけじゃないけど、大好き!! ってほどでもないからなあ。
でもちょっとくらいは手をつけていただかないと……
「…………」
「……?」
チョコレートを一つ摘まんだまま、正宗さんは何かを考えるように黙り込んでいらっしゃる。
「…………千鶴さん」
「? どうしたんですか? 正宗さん」
な、なんで急にそんな良いお顔で微笑んでいらっしゃる……?
まるでなにか思いついた! みたいな……
「……口、開けてくれますか?」
「うえっ!?」
正宗さんはそう言って、摘まんでいたチョコレートを、わ、私の口に……!!
「んっ」
口の中にチョコレートを入れた正宗さんの指が、ふにっと私の唇に触れる。
ふっ、ふあああああああああああああああああああ!!!
心臓破裂する!!!!
「……美味しいですか?」
「っ……」
ど、ドキドキしすぎて味がよくわかりません!!
わからないながらも、もごもごとチョコレートを噛み砕いて、必死にこくこくと頷いた。
お、美味しい、はず!!!
「それは良かった」
そうです美味しいから、正宗さんも……
「って……ぃっ!? っン……!!」
ほぎゃああああああああああああああ!!!!!
こ、今度は舌!! 正宗さんの舌がっ!!
わっ、私の口内にいいいいいいいいいいいいい!!!!!
「ンンっ……ふぁ……っ」
長くて深い、口付け。
甘い甘い、チョコレート味の……キス。
「本当だ。美味しい、ですね」
私の口の中で溶けたチョコレートを舌で絡め取った正宗さんが、ちろ……と見せつけるように舌舐めずりする。(ええええエッロオオオオ!!!)
そして……
「俺にはこのくらいがちょうどいいです」
と、微笑んで、
「えっ? ちょ……ええ!? ンンっ!」
再びチョコを摘まむと、私の口に運び……
またキスを……ですね。しまして……
あ、あの、ちょうどいいとはその、あの、私の口の中で溶けたチョコをちょっと舐めるくらいがちょうどいいということでしょうかそうなんでしょうかでも!! 心臓に!! 悪いってこの食べ方ぁああああああああああ!!
そして結局、残りのチョコを全部そうやって食べるまで、その……
チョコ餌付け! かーらーの、キス!! が、つ、続いたのです……
で、でも……ね?
こんな風に愛してくれる、旦那様だから……
たくさんのチョコを貰って来ても、信じられるんですよ……?
って!!!! 私今恥ずかしいこと言った!! 言った!!!
いやあああああああああああああああ!!!!!
************************************************
奥様の余裕? いいえ、信頼と愛情故、です。
というわけで、旦那様がたんまり貰ってきたチョコをむっしゃむっしゃと頬張る千鶴と、新たなチョコの楽しみ方を思いついちゃった(笑)正宗さんでした~。
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