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第六章 新しい家族
最高の魔法 前編
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双子が生まれてから六年後。
アウトーリ家の日常のお話です。
********************************************
アニエスの朝は相変わらず早い。
朝五時、ぱっちりと目を覚ました彼女は同じ寝台に眠るサフィールを起こさないようそっと身を起こして寝台を出た。
浴室でシャワーを浴び、さっぱりして身支度を整えてから一日の仕事が始まる。
一階の居間に降りて、アニエスが最初に始めたのはお茶を淹れることだった。一人分の紅茶を淹れ、それからぬるめのホットミルクを七杯分作る。
作り置きしているクッキーと一緒に八つのマグカップをを居間のテーブルに並べ終わった頃、二階からぞろぞろと猫達が降りてきた。
人の姿になっている彼らは、この家に引っ越してきたばかりの頃に比べて随分大きくなっている。使い魔の成長は契約をした瞬間から人と同じになるので、六年の歳月が過ぎた今、使い魔猫達はちょうど十六、七歳くらいの外見に成長していた。
「「「「「「「おはようございますにゃ! 奥方様」」」」」」」
「おはよう、みんな」
かつてアニエスに起こしてもらっていた使い魔猫達も、今ではちゃんと自分達で起きてくるようになった。
使い魔猫達と一緒に、朝の一仕事前のお茶を楽しむ。これは、今日一日の仕事の打ち合わせも兼ねていた。
育ち盛りの使い魔猫達はもぐもぐとクッキーを頬張り、ぬるめのミルクで胃に流し込んでいく。朝食までにしなければいけない仕事が多いので、これはそのために必要な朝のおやつなのだ。
「うまいにゃー!」
「にゃっ」
そうニコニコと頷きながらクッキーにがっついているのは、ブチ猫のキースと縞猫のアクア。他の猫達はお行儀よくクッキーを頬張っている。いつもの朝の光景だ。
「それじゃあ、私とキース、それからライトでパンの仕込みと朝食の準備ね」
アニエスに言われ、キースとライトが「「はい!」」と元気よく返事をする。
「ジェダとセラフィはお店のお掃除をお願い」
今度はジェダとセラフィーが「「はい」」と頷く。
「カルとネリーは菜園で水やりと草むしり、収穫をお願いね」
カルとネリーは「「わかりましたにゃっ」」と頷いた。そして最後に残った縞猫のアクアは、目をキラキラさせてアニエスを見ている。
「最後にアクア。朝市へおつかいに行って来てくれる?」
アニエスは、あらかじめおつかいの品を書いたメモをアクアに手渡した。
「やったー!! おつかいだー!!」
相変わらず、使い魔猫達に一番人気のお手伝いがこの「市場へのおつかい」なのだった。役割分担はローテーションが組まれているのでちゃんと順番に回って来る。だから事前に今日は自分の番だとわかっているのだが、アニエスに改めてお願いされ、アクアは椅子から立ち上がって嬉しそうにはしゃいでいる。
アニエスやネリーはニコニコと、セラフィは微笑ましげに、カルは心配げに、ライトとジェダはちょっと呆れ混じりに、そしてキースは羨ましげにアクアを見ていた。
打ち合わせを兼ねたお茶の時間の後、それぞれが自分の仕事に取り掛かる。
アニエスはキースとライトと一緒に店の厨房に入って、パンの仕込みを始めた。
昨日から寝かせていた生地は二次発酵をさせてから成型し、オーブンに。今から生地を作るパンは、材料を混ぜ合わせて捏ね、発酵。種類に合わせて工程や時間は違えど、それらを繰り返し、パンを作っていく。
今では猫達も一人でパン生地作りから焼き上げまでできるようになったので、だいぶ戦力になってくれている。店の規模を大きくしても回していけるのは、彼らの手伝いがあってこそだ。
アニエス達がパン作りに追われていると、早々に菜園の仕事を終えたカルとネリーが籠に収穫した野菜をたくさん盛って厨房にやって来た。
「いっぱいとれましたにゃ~」
嬉しそうに籠を掲げるネリーの鼻頭に、土の汚れがついている。それに気付いたライトは、作業の手を止めてちょちょっとネリーの鼻を擦ってやった。
「んっ」
「……とれた」
「ありがとうにゃ~、ライト」
ネリーはへへっと嬉しそうに笑う。ライトは表情こそ変わらなかったけれど、彼の尻尾は満足気に揺れていた。
黒猫と茶色猫が収穫してきた野菜は、家族の食事と店に出すメニューの材料に使われる。サンドイッチの具や、カフェスペースで出す軽食の材料だ。
野菜を洗って土汚れを落とし、皮を向いたり切ったりと下ごしらえをしている内に、おつかいから帰って来たアクアが大荷物を抱えて厨房にやってきた。
「今日もいーっぱいおまけしてもらっちゃいましたにゃ~」
愛嬌たっぷりのアクアは、朝市のおばちゃん達に大人気だ。口元には食べカスや砂糖がついているから、揚げ菓子でも貰ったのだろう。
ライトは呆れ顔で、「口元をふけ」と言い放つ。それを見ていたカルは内心、「……ネリーと対応が違い過ぎる」と思っていた。
しかし当のアクアはというと特に気にせず、「おっとっと」と慌てて口元を拭った。
「とれた?」
「にゃ」
そんな縞猫と灰色猫のやりとりを、アニエスはくすくすと笑いながら見守っている。
「ちゃんとお礼は言ったの?」
「はいですにゃ!」
アニエスに問われ、アクアは元気よく頷く。なんでも、お裾分けしてもらった揚げ菓子をアクアがあまりにも「美味しいにゃ~!!」とニコニコ笑顔で食べるので、それを見たお客さん達が「自分も」と買ってくれ、よく売れたのだという。「良い宣伝になった」と、おばちゃんに褒められたことをアクアは誇らしげに語ってみせた。
夫であるサフィールの朝は、アニエスに比べて少しのんびりしている。
くうくうと呑気に惰眠をむさぼっていると、ふいに、ドーンという衝撃と共に腹に重みを感じ、サフィールは「うう……」と呻きながらゆっくり目を開いた。
「おはよう! お父さん!!」
「おはよう」
自分の腹の上に、案の定……というかいつも通りと言うか、予想通りの姿があった。今年六歳になる娘と息子だ。
「……おは……よ……」
「もお! お父さんったらおねぼうさんね!!」
「いや、おきたばっかりなんだからしょうがないよ」
プンプンと怒っているのは妹のステラ。そして一応父をフォローしてくれているのは、兄のルイス。彼らは父を起こすのは自分達の仕事とばかり、毎朝こうして寝ているサフィールの腹に突撃をかけてくる。
二人とも、アニエス譲りの黒い髪に紺色の瞳。顔立ちはステラがアニエスに、ルイスがサフィールによく似ている。気性も、ステラは幼い頃のアニエスに似てお転婆なところがあり、ルイスは幼い頃のサフィールに似て大人しく本を読むのが好きな少年だ。
「ねえお父さん。髪! 髪やって」
サフィールが頭を掻きながらゆっくりと身を起こすと、ステラは父の腹から膝に移動して、くるりと背中を向けてそうねだる。その拍子に肩の下まで伸ばした髪がぺしりとルイスの顔に当たって、ルイスは無言で顔を顰めた。
「はいはい」
ステラはサフィールに髪を結ってもらうのが好きだった。手先が器用な父は自分の髪を可愛らしく結い上げてくれるし、何より父に甘えられるのが嬉しいのである。
ルイスはそんな妹にぼそりと「甘ったれ」と呟いて、父の膝から降りた。
そして寝台の傍に置いてある本棚から、一冊の本を抜きとってページをめくり始める。
それはアニエスが集めているお菓子のレシピ本だった。ルイスは物語や図鑑を眺めるのも好きだが、一等好きなのはお菓子のレシピ本を読むことなのである。食べることよりもむしろ、作り方の方に興味があるらしい。
熱心にレシピ本を読み始めた兄に、ステラが「ルイス、こんどそのお菓子作って!」と無邪気にねだる。ルイスは「気が向いたらね」と素っ気なく返事をして、ステラは「もう!」と頬を膨らませた。
そんな子供達のやりとりに、まるで幼い頃の自分とアニエスを見ているようだと、サフィールは苦笑してみせる。そして、アニエスよりも少し癖の強い娘の髪を丁寧に梳り、リボンを使って編み込んでやった。
「できたよ」
「ありがとう! ね、可愛い?」
「ああ、とっても可愛い」
サフィールがそう頷くと、ステラは「へへっ」と嬉しそうに破顔する。そしてぴょんっと寝台から降りると、ルイスの前でくるっと一回りして同じ質問をした。
「ねえルイス。可愛い?」
「ああ、可愛い可愛い」
「もう~!!」
ページから顔を上げもせず、適当な返事をする兄にステラはまた頬を膨らませた。
アウトーリ家の日常のお話です。
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アニエスの朝は相変わらず早い。
朝五時、ぱっちりと目を覚ました彼女は同じ寝台に眠るサフィールを起こさないようそっと身を起こして寝台を出た。
浴室でシャワーを浴び、さっぱりして身支度を整えてから一日の仕事が始まる。
一階の居間に降りて、アニエスが最初に始めたのはお茶を淹れることだった。一人分の紅茶を淹れ、それからぬるめのホットミルクを七杯分作る。
作り置きしているクッキーと一緒に八つのマグカップをを居間のテーブルに並べ終わった頃、二階からぞろぞろと猫達が降りてきた。
人の姿になっている彼らは、この家に引っ越してきたばかりの頃に比べて随分大きくなっている。使い魔の成長は契約をした瞬間から人と同じになるので、六年の歳月が過ぎた今、使い魔猫達はちょうど十六、七歳くらいの外見に成長していた。
「「「「「「「おはようございますにゃ! 奥方様」」」」」」」
「おはよう、みんな」
かつてアニエスに起こしてもらっていた使い魔猫達も、今ではちゃんと自分達で起きてくるようになった。
使い魔猫達と一緒に、朝の一仕事前のお茶を楽しむ。これは、今日一日の仕事の打ち合わせも兼ねていた。
育ち盛りの使い魔猫達はもぐもぐとクッキーを頬張り、ぬるめのミルクで胃に流し込んでいく。朝食までにしなければいけない仕事が多いので、これはそのために必要な朝のおやつなのだ。
「うまいにゃー!」
「にゃっ」
そうニコニコと頷きながらクッキーにがっついているのは、ブチ猫のキースと縞猫のアクア。他の猫達はお行儀よくクッキーを頬張っている。いつもの朝の光景だ。
「それじゃあ、私とキース、それからライトでパンの仕込みと朝食の準備ね」
アニエスに言われ、キースとライトが「「はい!」」と元気よく返事をする。
「ジェダとセラフィはお店のお掃除をお願い」
今度はジェダとセラフィーが「「はい」」と頷く。
「カルとネリーは菜園で水やりと草むしり、収穫をお願いね」
カルとネリーは「「わかりましたにゃっ」」と頷いた。そして最後に残った縞猫のアクアは、目をキラキラさせてアニエスを見ている。
「最後にアクア。朝市へおつかいに行って来てくれる?」
アニエスは、あらかじめおつかいの品を書いたメモをアクアに手渡した。
「やったー!! おつかいだー!!」
相変わらず、使い魔猫達に一番人気のお手伝いがこの「市場へのおつかい」なのだった。役割分担はローテーションが組まれているのでちゃんと順番に回って来る。だから事前に今日は自分の番だとわかっているのだが、アニエスに改めてお願いされ、アクアは椅子から立ち上がって嬉しそうにはしゃいでいる。
アニエスやネリーはニコニコと、セラフィは微笑ましげに、カルは心配げに、ライトとジェダはちょっと呆れ混じりに、そしてキースは羨ましげにアクアを見ていた。
打ち合わせを兼ねたお茶の時間の後、それぞれが自分の仕事に取り掛かる。
アニエスはキースとライトと一緒に店の厨房に入って、パンの仕込みを始めた。
昨日から寝かせていた生地は二次発酵をさせてから成型し、オーブンに。今から生地を作るパンは、材料を混ぜ合わせて捏ね、発酵。種類に合わせて工程や時間は違えど、それらを繰り返し、パンを作っていく。
今では猫達も一人でパン生地作りから焼き上げまでできるようになったので、だいぶ戦力になってくれている。店の規模を大きくしても回していけるのは、彼らの手伝いがあってこそだ。
アニエス達がパン作りに追われていると、早々に菜園の仕事を終えたカルとネリーが籠に収穫した野菜をたくさん盛って厨房にやって来た。
「いっぱいとれましたにゃ~」
嬉しそうに籠を掲げるネリーの鼻頭に、土の汚れがついている。それに気付いたライトは、作業の手を止めてちょちょっとネリーの鼻を擦ってやった。
「んっ」
「……とれた」
「ありがとうにゃ~、ライト」
ネリーはへへっと嬉しそうに笑う。ライトは表情こそ変わらなかったけれど、彼の尻尾は満足気に揺れていた。
黒猫と茶色猫が収穫してきた野菜は、家族の食事と店に出すメニューの材料に使われる。サンドイッチの具や、カフェスペースで出す軽食の材料だ。
野菜を洗って土汚れを落とし、皮を向いたり切ったりと下ごしらえをしている内に、おつかいから帰って来たアクアが大荷物を抱えて厨房にやってきた。
「今日もいーっぱいおまけしてもらっちゃいましたにゃ~」
愛嬌たっぷりのアクアは、朝市のおばちゃん達に大人気だ。口元には食べカスや砂糖がついているから、揚げ菓子でも貰ったのだろう。
ライトは呆れ顔で、「口元をふけ」と言い放つ。それを見ていたカルは内心、「……ネリーと対応が違い過ぎる」と思っていた。
しかし当のアクアはというと特に気にせず、「おっとっと」と慌てて口元を拭った。
「とれた?」
「にゃ」
そんな縞猫と灰色猫のやりとりを、アニエスはくすくすと笑いながら見守っている。
「ちゃんとお礼は言ったの?」
「はいですにゃ!」
アニエスに問われ、アクアは元気よく頷く。なんでも、お裾分けしてもらった揚げ菓子をアクアがあまりにも「美味しいにゃ~!!」とニコニコ笑顔で食べるので、それを見たお客さん達が「自分も」と買ってくれ、よく売れたのだという。「良い宣伝になった」と、おばちゃんに褒められたことをアクアは誇らしげに語ってみせた。
夫であるサフィールの朝は、アニエスに比べて少しのんびりしている。
くうくうと呑気に惰眠をむさぼっていると、ふいに、ドーンという衝撃と共に腹に重みを感じ、サフィールは「うう……」と呻きながらゆっくり目を開いた。
「おはよう! お父さん!!」
「おはよう」
自分の腹の上に、案の定……というかいつも通りと言うか、予想通りの姿があった。今年六歳になる娘と息子だ。
「……おは……よ……」
「もお! お父さんったらおねぼうさんね!!」
「いや、おきたばっかりなんだからしょうがないよ」
プンプンと怒っているのは妹のステラ。そして一応父をフォローしてくれているのは、兄のルイス。彼らは父を起こすのは自分達の仕事とばかり、毎朝こうして寝ているサフィールの腹に突撃をかけてくる。
二人とも、アニエス譲りの黒い髪に紺色の瞳。顔立ちはステラがアニエスに、ルイスがサフィールによく似ている。気性も、ステラは幼い頃のアニエスに似てお転婆なところがあり、ルイスは幼い頃のサフィールに似て大人しく本を読むのが好きな少年だ。
「ねえお父さん。髪! 髪やって」
サフィールが頭を掻きながらゆっくりと身を起こすと、ステラは父の腹から膝に移動して、くるりと背中を向けてそうねだる。その拍子に肩の下まで伸ばした髪がぺしりとルイスの顔に当たって、ルイスは無言で顔を顰めた。
「はいはい」
ステラはサフィールに髪を結ってもらうのが好きだった。手先が器用な父は自分の髪を可愛らしく結い上げてくれるし、何より父に甘えられるのが嬉しいのである。
ルイスはそんな妹にぼそりと「甘ったれ」と呟いて、父の膝から降りた。
そして寝台の傍に置いてある本棚から、一冊の本を抜きとってページをめくり始める。
それはアニエスが集めているお菓子のレシピ本だった。ルイスは物語や図鑑を眺めるのも好きだが、一等好きなのはお菓子のレシピ本を読むことなのである。食べることよりもむしろ、作り方の方に興味があるらしい。
熱心にレシピ本を読み始めた兄に、ステラが「ルイス、こんどそのお菓子作って!」と無邪気にねだる。ルイスは「気が向いたらね」と素っ気なく返事をして、ステラは「もう!」と頬を膨らませた。
そんな子供達のやりとりに、まるで幼い頃の自分とアニエスを見ているようだと、サフィールは苦笑してみせる。そして、アニエスよりも少し癖の強い娘の髪を丁寧に梳り、リボンを使って編み込んでやった。
「できたよ」
「ありがとう! ね、可愛い?」
「ああ、とっても可愛い」
サフィールがそう頷くと、ステラは「へへっ」と嬉しそうに破顔する。そしてぴょんっと寝台から降りると、ルイスの前でくるっと一回りして同じ質問をした。
「ねえルイス。可愛い?」
「ああ、可愛い可愛い」
「もう~!!」
ページから顔を上げもせず、適当な返事をする兄にステラはまた頬を膨らませた。
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