旦那様は魔法使い

なかゆんきなこ

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第一章 二人の日常 1

使い魔達の協奏曲 キースと街の人々編

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ブチ猫キースのお使いのお話。

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 オレの名前はサードオニキス。白と黒のブチ猫だ。白猫のジェダは俺の毛並みを、「牛」とか「美しくにゃい」と馬鹿にするが、気にしない。だって牛は美味い。
 目は赤銅色。だからご主人様は、俺に『サードオニキス(赤縞瑪瑙)』と名を付けた。それでは長いから、『キース』と呼ばれている。
 オレは今、とってもご機嫌だ。何故って、それは今日のオレのお仕事が、『お使い』だからだ。オレ達使い魔猫の間で最も人気の仕事である。
 奥方様の書いてくれたメモ用紙を手に、オレは早朝の港街を駆けていく。
「おや、今朝のお使いはキースかい」
 そう声を掛けてくれたのは、朝市に店を出す八百屋のおばあさん。
 オレは「にゃあ!」と鳴いて、おばあさんの所へ駆けた。奥方様からのメモには、『じゃがいもと玉ねぎ』と書かれている。ここで買おう。
「おばあさん、じゃがいもと玉ねぎを五個ずつくださいにゃん」
「はいよ。おりこうさんだねえ。これもおあがり」
 そう言って、おばあさんはじゃがいもと玉ねぎを詰め込んだ袋に真っ白いカブを三個、おまけしてくれた。
「ありがとうにゃん!」
 オレはおばあさんに手を振ると、今度は魚屋へ向かう。
 魚屋には、今朝の漁で揚がったばかりの新鮮な魚がいっぱいに並んでいた。
 うわあ。よだれが出そうにゃん…。
「ようキース! 相変わらずよだれをたらしそうな顔しやがって」
 うっとりと魚を眺めるオレに、魚屋のおじさんが声をかける。
 だって、どれもこれも美味しそうで…。
「しょうがねえなあ。朝飯まだなんだろ? ほら、食いな」
 言って、おじさんは売り物用に焼いていた干し魚を一匹、オレにわけてくれた。
「にゃあっ! ありがとうにゃんっ!!」
 オレはばくっと干し魚に食い付く。う、うんま~い!!
 そのままはぐはぐと魚を食うオレの頭を撫でて、おじさんが声を張り上げる。
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 猫も舌を巻く美味しい魚がたんまりだ!! 安いよ!!」
 美味しそうに魚にがっつくオレの姿も宣伝になり、今朝の魚屋は商売繁盛。
 そのお礼だと、奥方様から頼まれた魚の他にもたくさん魚をおまけしてくれた。
 魚屋を後にし、今度はアースさんの店に寄る。アースさんは島の外れで牧場をやっていて、朝市には牧場でとれた野菜や穀物、乳製品を出しているのだ。
 アースさんの所には、奥方様がパン作りで使う小麦粉や卵、ミルクの配達を頼んでいる。次回の配達の日にちと数量を伝えるのが、オレの仕事だ。
 アースさんはついでに、と新鮮なミルクで作ったというチーズをわけてくれた。
 そして言い付けられた用事を済ませ、朝市を後にしようとすると今度は別な店からお声がかかる。
「おーい、キース!!」
「にゃ?」
 振り返れば、果樹園の主人がこちらに手を振っていた。
 オレはとことこと、彼の元へ行く。
「おはようございますにゃ」
「ああ、おはよう」
 果樹園の主人も、自分の所でとれた果物を朝市に出しているのだ。
 真っ赤な林檎がいっぱいに並んでいる。
「ちょうどいい。これも持って行きな」
 言って、ご主人は野菜の入った買い物袋に林檎をどんどん入れていく。
「にゃっ?」
「良い出来だからよ。みんなで食べな」
「にゃー! ありがとうですにゃ!!」
 この果樹園の人達は、ご主人を始めみんないつもおまけしてくれる。
 それはここで果物を買った時も、買ってない時も、だ。
 オレは何度もご主人に手を振りながら、朝市を後にした。
 頼まれたもの以上に物が詰まった袋は重たいけれど、足取りは軽い。
 この街の人達は、みんな優しい。だからオレは、この仕事が好きなんだ。

 もちろん、美味しい魚も食べられるしにゃ!!


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食いしん坊なキース。二話でのお使いのお話です。
朝市では、一番美味しそうに食べるキースが一番人気。だから買わなくてもおまけがもらえるのです(笑)
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