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ステラとルイスの年越し! 後編
しおりを挟む美味しいココアとお菓子で寒い夜を楽しく過ごしていたら、あっという間にその瞬間はやってきた。
「ご」
どこかからか始まり、次第に大きくなっていくカウントダウンの声。
「よん」
あと少しで、今年が終わる。
「さん」
一年が終わり、また新しい一年が始まるのだ。
「に」
この瞬間、人々は過ぎし一年を想い、新しい年に想いを馳せる。
「いち」
そして―――
「ゼロ! 新年、あけましておめでとう!!!!」
最後に残るのは、盛大な祝福の声。
港に集った島の人達の声が揃い、新しい年を祝う。
「あけましておめでとう、皆。今年もよろしく」
大歓声と拍手で祝い合った後は、まずは家族でご挨拶。
最初にサフィールが口火を切り、アニエスが続く。
「あけましておめでとう。今年も家族みんなで元気に過ごせたらいいわね」
アニエスの一番の願いは、みんなが健やかに幸せに過ごせることなのだ。
それから、使い魔猫達も口々にお祝いの言葉を口にする。
「あけましておめでとうございますにゃ~」
「去年はお世話になりましたにゃ」
「今年もよろしくお願いしますにゃ~」
「おめでとうにゃ~」
「今年もみんなで仲良く過ごせますようにっ」
「新しい年も、良い年になりますようにっ」
「みんな一緒なら、きっと良い年になるにゃ~!」
そして最後は双子の番だ。
「あけましておめでとうございますっ! 今年もよろしくおねがいします!!」
ステラが元気よく挨拶すると、ルイスはぺこりとお辞儀してから、
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
と言った。ステラも慌てて兄に倣い、ぺこりと一礼する。
いつもよりちょっぴり丁寧な、年の初めの大事なご挨拶。
でもみんながにこにこ笑顔で、こんな時間もやっぱり楽しい。
それから、一家はそれぞれ付き合いのある島の人達のところに挨拶に回る。
双子も、学校の友達の姿を探して港を歩き回った。
港のあちこちで、同じようにたくさんの挨拶が飛び交っている。
それを見るたび、聞くたびに、ステラは「きっと新しい年も素敵な一年になるに違いないわ」と思うのだった。
だってこんなにも多くの人が、みんなの幸せを願っているんだもの。
一大イベント――カウントダウンと新年の挨拶が終わったあとも、楽しい夜は続く。
新年初の朝日が昇ってくるのを待つのだ。
挨拶を終えてベンチに戻ってきた双子も、今年こそは日の出まで起きているのだと意気込んでいる。これまではずっと、日の出まで待てずに寝入ってしまっていたのだ。気付けば家のベッドの中で、「来年こそは!」と心に誓ったものである。
そんな意気込みと高揚感に胸を高鳴らせながら、ステラはまだ暗い海を見つめた。
(楽しいなあ~)
こんな冬の夜に外で――たくさんの篝火が焚かれた港でお菓子を食べながら皆で日の出を待つなんて、一年に一度、この日にしかできない特別なことだ。
ステラは頬を赤く染めながら、「美味しいね」「楽しいね」と笑顔で兄に話しかける。いつもは素っ気ない兄も、この日ばかりは「うん」「楽しい」と素直に頷いてくれた。
(毎日が、今日みたいだったら良いのになぁ~)
甘いチョコレートを口にしながら、ステラは思った。
けれどすぐに、「ああ、でも」と思いなおす。
(きっと、一年に一度しかないから素敵なんだわ)
だからこれでいいのだとひとりごちて、ステラは冷めてしまったココアをこくりと飲み干した。
隣を見れば、ちょうどルイスもココアを飲みきったようだった。
「ねえルイス、ココア買いに行こう!」
「うん」
二人は手を繋いで、ココアのお代わりを買いに行く。
そんな二人を、両親と使い魔猫達が温かい眼差しで見守っていた。
そして二人が無事に初日の出を拝めたのかというと……
「ああああああああ!! また眠っちゃったああああ!!」
すっかり日が昇り切ったあと、ステラは自分のベッドの上で目を覚まして絶叫した。
今年もまた途中で眠ってしまったのだ。きっと、父親か使い魔猫の誰かにベッドまで運んでもらったのだろう。そしてそれは、隣のベッドで頭を抱えて悔しがっているルイスも同じようだ。
「くそ……。今年はいけると思ったのに……!」
ルイスはホットココアがいけなかったんだアレは眠くなる……! とか、お菓子を食べ過ぎてお腹いっぱいになったのもだめだった……! とか、敗因を口にする。それはステラも同意見だった。眠る前の最後の記憶は、お菓子とココアでお腹がいっぱいになってウトウトと睡魔に襲われ始めたところで途切れている。
「うううう。来年、来年こそは……!!」
「ああ。来年こそは……!!」
そして双子は、来年こそはきっと一緒に初日の出を見ようと固く誓い合うのだった。
これはそんなステラとルイスの、年越しのお話。
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