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旦那様は魔法使い 学園パロ
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こちらはブログ一周年記念リクエスト企画のSSとしてブログで公開していたお話です。
タイトルまんま、学園パロで高校生なアニエスとサフィールのお話。そしておまけ。
今更かもしれませんが、『おまけ』は変態注意!! です!!
********************************************
屋上の扉を開けると、吹き込んできた風に制服のスカートが翻る。
慌てて裾を押さえたアニエスは、抜けるような青空の下、幼馴染の姿を探した。
「あ……! やっぱりここにいた……」
黒い学ランの中にパーカーを着こみ、屋上の床にごろんと横になっている幼馴染・サフィール。彼は二限目から姿が見えなかったのだ。要はサボりである。
「ん……」
雑誌を顔の上に置いて陽射しから逃れ、優雅にお昼寝。
そんな幼馴染に呆れつつ、アニエスは彼の傍らに腰を下ろす。
「もう……。起きて、サフィール。もうお昼休みよ?」
「んん……? アニエス……?」
「はい、お弁当」
サボり癖のある幼馴染に呆れつつも、彼のために毎日作っている弁当を渡してやるアニエス。サフィールはゆっくりと起き上がってその弁当を受け取ると、眠気眼のまま「ありがとう」と言った。
学校の授業は退屈で、こんなに天気の良い日はこうして昼寝をするに限る。
そんなサフィールがそれでも毎日学校に来ているのは、この幼馴染の存在が大きい。
「今日はサフィールの好きな、ほうれん草入りの卵焼きも入ってるわよ」
「おお……」
アニエスの作る卵焼きは絶品だ。もちろん、他の料理だって美味しいが。
「それから、それを食べたら化学準備室に来なさいって、クラウド先生が。もう、サフィールがいっつもサボるから、先生怒ってらっしゃったわ」
「うんうん」
返事をするも、サフィールのそれはいわゆる生返事というやつである。
教師の呼び出しより、彼には目の前のお弁当の方が重要だった。
彼はいそいそと弁当のふたを開けて、美味しそうなおかずや俵型に握られた小さなおにぎりに目を細めた。
今日もとても美味しそうだ。
箸を手に取り、ぱくり……と。卵焼きを口にする。
ちょうどいい塩加減。さすがアニエス。
(……わかってるのかしら……?)
ぱくぱくとお弁当を食べ始めたサフィールに、アニエスはそう不安に思いつつも、自分の分のお弁当箱も開く。サフィールのそれより一回り小さなお弁当箱には、同じおかずが詰まっていた。
アニエスお手製のお弁当でお腹を満たしたサフィールは、硬いコンクリートの上ではなく、柔らかいアニエスの膝を枕にもう一度寝転がる。
「もう! サフィール、クラウド先生の所に行かないと……」
「んん……」
「怒られちゃうわよ?」
「大丈夫だよ……」
「大丈夫なわけないだろう!」
ばん!! と屋上の扉が開いて。
そこに立っているのは、白衣を纏うこの学園の化学教師クラウドだ。
つかつかと二人に近付いたクラウドは、サフィールの襟首をむんず……!! と掴んで、
「ぐえ……っ」
「騒がせて悪かったね、アニエス。そうそう、この間差し入れてくれたお菓子、ありがとう。美味しかったよ」
と、サフィールに見せた怒り顔から一転、優しい笑みを浮かべてアニエスに話しかける。
「なにそれ。俺聞いてな……」
「それじゃあね、アニエス。私はこの馬鹿者にちょっと説教してやらなければならない。行くぞサフィール」
「ぐえ……」
問答無用で、引きずられるようにして連れていかれるサフィール。
「だから言ったのに……」
アニエスは、はあ……とため息を吐いた。
その後、教室にはクラウドにみっちり説教を食らったらしいサフィールがむっつりとした顔で、けれど大人しく席に座っていて。
「…………ふふっ」
思わず笑ってしまう、アニエスなのだった。
『おまけ』
四月。新しい始まりの季節。
そして変態の湧く季節だと、カルは思った。
彼はサフィール、そしてアニエスと同じ一貫校の初等部に通う小学生である。
始業式のこの日。彼は人生初の痴漢に遭った。
その人物は自分の姿を見るなり、やけに鼻息を荒くして、
「……や、やばい! 俺は今本当の恋を知りました」
と口走り、「お名前教えてー!!」と抱きついてきたのだ。
「みぎゃああああああああああ!!!」
隙をついて逃げだし、なんとか事なきを得たが、変態とはおそろしいものだと、カルはつくづく思った。
「……いっつも一番に教室に来るくせに、今日は遅かったにゃ」
始業式。体育館に並んで座っていると、隣のジェダが小声で声を掛けてきた。
実は……と。同じく小声で事情をかいつまんで話す友人に、ジェダは「わお……」と驚いてみせ、「実は僕も……」と同じく変態に遭遇した話をする。
ジェダも同じく今日この日、学校へ来る前にその変態と遭遇したという。
やけに見目のいい、そして身なりの良い男だったそうだ。彼はジェダの姿を見るなり目を見開いて凝視すると、甘やかな笑みを浮かべてこう言ったそうだ。
『マイスウィートエンジェル……!!』
と。
「うげえ……」
「とりあえずガン無視して逃げてきた。春は怖いにゃー」
「にゃ」
彼らはこくんと頷き合う。
そして防犯ブザーの必要性を改めて認め合った。
彼らが変態から身を守る術について、熱く語り合っているこの時。
体育館の壇上では、司会進行を務める教師が今年からこの学校に就任するという教師を紹介していた。
「エドワード・クレス先生と、カサス・フォルケン先生です」
「「あ……っ!!」」
壇上で紹介にあずかり、立ち上がる若い男性教師二名。
「やあどうもこんにちは、可愛い生徒諸君! 私はエドワード・クレスだ。よろしく頼むよ」
ウインクをかまし、爽やかに挨拶する金髪碧眼の男性教師。
「どもー! カサス・フォルケンでッス。よろしくね~」
へらへらっと笑う、明るい茶色の髪の男性教師。
この二人はまさしく、今朝ジェダとカルに迫った変態……だった。
「まじかよ……」
世も末だ……と嘆くカルに。
「ふうん。先生か……」
使えるかもにゃ、と。腹黒い算段を考えるジェダ。
二人の変態教師が壇上から自分の運命の相手、そしてマイスウィートエンジェルに気付き声を上げるのは……
「あっ! マイスウィートエンジェル!!」
「あああ! 今朝のカワイコちゃん!! やっべ、マジ運命じゃんこれ!!」
それから数分後のこと、だった。
タイトルまんま、学園パロで高校生なアニエスとサフィールのお話。そしておまけ。
今更かもしれませんが、『おまけ』は変態注意!! です!!
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屋上の扉を開けると、吹き込んできた風に制服のスカートが翻る。
慌てて裾を押さえたアニエスは、抜けるような青空の下、幼馴染の姿を探した。
「あ……! やっぱりここにいた……」
黒い学ランの中にパーカーを着こみ、屋上の床にごろんと横になっている幼馴染・サフィール。彼は二限目から姿が見えなかったのだ。要はサボりである。
「ん……」
雑誌を顔の上に置いて陽射しから逃れ、優雅にお昼寝。
そんな幼馴染に呆れつつ、アニエスは彼の傍らに腰を下ろす。
「もう……。起きて、サフィール。もうお昼休みよ?」
「んん……? アニエス……?」
「はい、お弁当」
サボり癖のある幼馴染に呆れつつも、彼のために毎日作っている弁当を渡してやるアニエス。サフィールはゆっくりと起き上がってその弁当を受け取ると、眠気眼のまま「ありがとう」と言った。
学校の授業は退屈で、こんなに天気の良い日はこうして昼寝をするに限る。
そんなサフィールがそれでも毎日学校に来ているのは、この幼馴染の存在が大きい。
「今日はサフィールの好きな、ほうれん草入りの卵焼きも入ってるわよ」
「おお……」
アニエスの作る卵焼きは絶品だ。もちろん、他の料理だって美味しいが。
「それから、それを食べたら化学準備室に来なさいって、クラウド先生が。もう、サフィールがいっつもサボるから、先生怒ってらっしゃったわ」
「うんうん」
返事をするも、サフィールのそれはいわゆる生返事というやつである。
教師の呼び出しより、彼には目の前のお弁当の方が重要だった。
彼はいそいそと弁当のふたを開けて、美味しそうなおかずや俵型に握られた小さなおにぎりに目を細めた。
今日もとても美味しそうだ。
箸を手に取り、ぱくり……と。卵焼きを口にする。
ちょうどいい塩加減。さすがアニエス。
(……わかってるのかしら……?)
ぱくぱくとお弁当を食べ始めたサフィールに、アニエスはそう不安に思いつつも、自分の分のお弁当箱も開く。サフィールのそれより一回り小さなお弁当箱には、同じおかずが詰まっていた。
アニエスお手製のお弁当でお腹を満たしたサフィールは、硬いコンクリートの上ではなく、柔らかいアニエスの膝を枕にもう一度寝転がる。
「もう! サフィール、クラウド先生の所に行かないと……」
「んん……」
「怒られちゃうわよ?」
「大丈夫だよ……」
「大丈夫なわけないだろう!」
ばん!! と屋上の扉が開いて。
そこに立っているのは、白衣を纏うこの学園の化学教師クラウドだ。
つかつかと二人に近付いたクラウドは、サフィールの襟首をむんず……!! と掴んで、
「ぐえ……っ」
「騒がせて悪かったね、アニエス。そうそう、この間差し入れてくれたお菓子、ありがとう。美味しかったよ」
と、サフィールに見せた怒り顔から一転、優しい笑みを浮かべてアニエスに話しかける。
「なにそれ。俺聞いてな……」
「それじゃあね、アニエス。私はこの馬鹿者にちょっと説教してやらなければならない。行くぞサフィール」
「ぐえ……」
問答無用で、引きずられるようにして連れていかれるサフィール。
「だから言ったのに……」
アニエスは、はあ……とため息を吐いた。
その後、教室にはクラウドにみっちり説教を食らったらしいサフィールがむっつりとした顔で、けれど大人しく席に座っていて。
「…………ふふっ」
思わず笑ってしまう、アニエスなのだった。
『おまけ』
四月。新しい始まりの季節。
そして変態の湧く季節だと、カルは思った。
彼はサフィール、そしてアニエスと同じ一貫校の初等部に通う小学生である。
始業式のこの日。彼は人生初の痴漢に遭った。
その人物は自分の姿を見るなり、やけに鼻息を荒くして、
「……や、やばい! 俺は今本当の恋を知りました」
と口走り、「お名前教えてー!!」と抱きついてきたのだ。
「みぎゃああああああああああ!!!」
隙をついて逃げだし、なんとか事なきを得たが、変態とはおそろしいものだと、カルはつくづく思った。
「……いっつも一番に教室に来るくせに、今日は遅かったにゃ」
始業式。体育館に並んで座っていると、隣のジェダが小声で声を掛けてきた。
実は……と。同じく小声で事情をかいつまんで話す友人に、ジェダは「わお……」と驚いてみせ、「実は僕も……」と同じく変態に遭遇した話をする。
ジェダも同じく今日この日、学校へ来る前にその変態と遭遇したという。
やけに見目のいい、そして身なりの良い男だったそうだ。彼はジェダの姿を見るなり目を見開いて凝視すると、甘やかな笑みを浮かべてこう言ったそうだ。
『マイスウィートエンジェル……!!』
と。
「うげえ……」
「とりあえずガン無視して逃げてきた。春は怖いにゃー」
「にゃ」
彼らはこくんと頷き合う。
そして防犯ブザーの必要性を改めて認め合った。
彼らが変態から身を守る術について、熱く語り合っているこの時。
体育館の壇上では、司会進行を務める教師が今年からこの学校に就任するという教師を紹介していた。
「エドワード・クレス先生と、カサス・フォルケン先生です」
「「あ……っ!!」」
壇上で紹介にあずかり、立ち上がる若い男性教師二名。
「やあどうもこんにちは、可愛い生徒諸君! 私はエドワード・クレスだ。よろしく頼むよ」
ウインクをかまし、爽やかに挨拶する金髪碧眼の男性教師。
「どもー! カサス・フォルケンでッス。よろしくね~」
へらへらっと笑う、明るい茶色の髪の男性教師。
この二人はまさしく、今朝ジェダとカルに迫った変態……だった。
「まじかよ……」
世も末だ……と嘆くカルに。
「ふうん。先生か……」
使えるかもにゃ、と。腹黒い算段を考えるジェダ。
二人の変態教師が壇上から自分の運命の相手、そしてマイスウィートエンジェルに気付き声を上げるのは……
「あっ! マイスウィートエンジェル!!」
「あああ! 今朝のカワイコちゃん!! やっべ、マジ運命じゃんこれ!!」
それから数分後のこと、だった。
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