旦那様は魔法使い 短編集

なかゆんきなこ

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夢の名残

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以前拍手コメントにて、「サフィールの昔の女が出てきたり、なんてことになりますか?」というお言葉をいただきまして。
それも面白いかも、と書いてみました(笑)
サフィールの昔の女関連の話は読まんでいいよ〜、って方はこのままスルーしてください。※ドロドロはしてません。
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 すれ違いざま、目を奪われたのは銀糸の髪。
 その見覚えのある容姿に、女は思わず振り返る。
(…あれは…)
 昔、一夜だけ関係を結んだ男がそこにいた。
 美しい男だった。女達の誰もが、振り返ってしまうほど。
 しかしそんな男と体を重ねても、彼女は彼の心を求めなかった。
 男が、彼女の心を求めなかったように。
 二人はただ、刹那の快楽だけを互いに求めたのだ。
(…あんな顔して、笑うのね)
 男の傍らには今、一人の女がいた。
 二人は睦ましげに手を繋ぎ合い、歩いている。
 そして男が傍らの女に向ける、微笑。
 あんなに幸せそうな笑い方を知っていたのね、と思ってしまう。
 自分の知る男の面影は、いつも感情の機微が読み取れない人形のような顔だったから。
(…幸せ、なのね)
 あなたも、と。
 女は街の雑踏の中に消えていった二人の背中を見つめて、思う。
「−−−!!」
 ふいに、自分の名を呼ぶ声が響いた。
「ここにいたのかい。探したよ」
「ごめんなさい。ちょっと、」
 ずっと昔に見た夢の名残を、見つけてしまったものだから。
「?」
「なんでもないわ。さあ行きましょう、あなた」
 私も幸せよ、と女は思う。
 心から愛する人と巡り合えた。
 この人は、あなたほど恰好良くはないけれど。
 愚かな私の過去すべてを受け入れて、許してくれる優しい人。
 あなたの幸せな姿を見ても、心から良かったと思えるのは。

 私もあなたと同じ。今がとても、幸せだから。


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