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黒猫と白猫の奮闘
しおりを挟む「ど、どうして俺がこんなこと…こんな…こんな恰好で…」
「うるさいにゃん、カル。ぶつぶつ文句を言ってる暇があったら、とっとと仕事するにゃん!!」
絶望に打ちひしがれる黒猫の少年カルセドニーと、それに鞭打つ白猫の少年ジェダイド。
彼らは今、この島の領主であるクレス伯爵の館で。
「ああっ、なんて可憐なんだジェダ君!! このままずっと傍にいて欲しいっ!!」
「ごふぁっ!! ちょ!! やばい可愛いんですけど!! こっち向いて!! カルちゃんこっち向いてー!!」
変態主従、もとい、クレス伯爵エドワードとその従者カサスの前で、
「こっち見るな!! おっ、俺を見るにゃああああああ!!」
「…往生際が悪いにゃあ」
メイド姿で、働いていた。
猫達が、自分達の主人夫妻のためにプレゼントを用意しようという段になって、まず必要なのがその資金だ。彼らは日頃、アニエスからお小遣いを貰ってはいるが、それを全てつぎ込んでも目標には足りない。
そこで、お店が休みの日に短期間でたくさん稼げる仕事としてジェダがカルを引きずって連れて来たのが。
ここ、クレス伯爵の領主館だったのである。
「お前っ!! なんでよりによってここを選ぶんだ!! もっと他に、他にあるだろう!! それになんにゃ!! このメイド服はっ」
「うるさいにゃあ…。ここが一番お給料が良いのにゃ」
それに、ご主人様達にもバレにくいし…とジェダ。
「あっ、ちなみにメイド服は俺の趣味っ」
「黙れ変態っ!!」
しゃーっと威嚇するカル。
が、カサスはそれすらも「可愛い!!」と悶えている。
「…はあ。いちいち反応してやるからつけあがるのにゃん」
ジェダは冷たく言い放ち、黙々と箒を動かしていく。
メイド姿で、エドワードの執務室を掃除すること。それが、二匹に課せられた仕事だった。
「…しかしジェダ君。お金が欲しいなら、いくらだって用立てするよ? もちろん、見返りなんていらないさ」
君が望むならいくらでも、と。
世の女性達がうっとりと蕩けそうな笑顔で言うエドワード。
確かに彼なら、猫達に必要なお金をすぐにぽんと用立てられるだろう。
「…はっ。馬鹿じゃにゃい? そんなお金で大事なプレゼントを用意するわけにはいかないにゃ」
が、ジェダはその申し出を一顧だにせず。
「お金をもらう以上、仕事はきっちりするにゃ」
そうツン、とすます。
「ジェダ君…」
そんな彼のすました姿に、きゅん…と胸を高鳴らせるエドワード。
この白猫の少年の簡単に人に媚びない所が、エドワードの琴線をくすぐってやまないのだ。
「にゃあっ!! なんでスカートめくろうとするにゃ!!」
「ええー? だって中がどうなってるのか…。あいたっ!! 爪刺さってる!! 刺さってるよカルちゃん!!」
「あ、そこの変態。カルに一回触るごとに金貨一枚にゃー」
床を掃く手を止め、ジェダはぎゃあぎゃあ騒いでいる黒猫の少年と従者にそう言ってのけた。
やることはやって、お金をもらう。が、
「「えっ」」
とるところもしっかり取る、ジェダであった。
「それってつまりお触りオッケー!!??」
「いやにゃあああああああああああああああ!!!!!」
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