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魔法使いと黒猫
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使い魔猫達とサフィールの出会いのお話。
最初に出会ったのは黒猫のカルでした。
※シリアスなお話です。
********************************************
空から水が降っている。
それは「雨」って言うんだと、おかあさんが教えてくれた。
おかあさんは俺と同じ、黒い毛並みの猫。
おっきい水たまり(海って言うんだって)の傍の人間の街で、俺を産んだ。
いっしょに産まれた兄弟達は、みんな弱くて死んでしまった。
残ったのは俺と、おかあさんだけ。
このところずっと雨が降っていて、ネズミも取れない。
魚もとれないから仕方なく、人間がとってきた魚を横取りしようとして見つかって、水を掛けられた。
どうしてあんなにいっぱいあるのに、わけてくれないんだろう?
おかあさんは、食べ物をとってくるといつも俺にわけてくれる。
少ない時は、俺にだけ食べさせて自分は食べない。
だから…、
ある日、寝床にしている橋の下で、おかあさんが死んだ。
おかあさんの身体は、がりがりに痩せていた。
おかあさんは、元々は人間に飼われていた猫なんだって。
とっても可愛がられていたから、自分で食べ物を見つけてくるのが下手なんだって、他の野良猫たちが言っていた。
そうして食べ物を見つけてくるのが下手くそなお母さんが、やっと見つけたそれを俺に食べさせてくれたから。
だからおかあさんは死んでしまったんだって。
俺は一匹になってしまった。
これからは、俺が一匹で食べ物を探して、一匹で生きて行かなきゃならない。
その日も雨が降っていた。
雨の中で、一人の人間が俺を見ていた。
真っ黒い布(ローブって言うんだって)を被って、じっと俺を見つめている変な人間。
なんだよ、そんなに俺の事が珍しいのか?
雨の中で寝っ転がってる黒猫が、珍しいのかよ。
俺はその時、他の野良猫の縄張りで狩りをしようとして見つかって、ぼこぼこにされた後だった。
身体は動かないし雨は降って来るしで、もう死ぬかもしれないなと思っていた。
せっかくおかあさんがくれた命だけど、しょうがないなって。
だって俺も、おかあさんと同じで、食べ物を見つけてくるのが下手くそだったから。
「…………」
死を覚悟してた俺の身体を、人間がそっと両手で抱き上げる。
そしてその人間は。
いや、赤と青の目のその人は、言った。
「猫、俺と来るか?」
と。
傷ついて、今にも死にそうで。何の役にも立たない子猫の俺に、その人は…、ご主人様はそう言ってくれた。
そうして傷を治してくれて、ごはんをくれて、名前をくれた。
使い魔猫の契約を交わした後。
俺は「どうして助けてくれたのですか?」と聞いた。
ご主人様は、少しだけ寂しそうな顔をして。
「黒かったから」
と言った。
黒。ご主人様の、お好きな色。
俺の毛の色。そして、ご主人様の好きな。
お師匠様の色。幼馴染の、女の子の色。
最初に出会ったのは黒猫のカルでした。
※シリアスなお話です。
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空から水が降っている。
それは「雨」って言うんだと、おかあさんが教えてくれた。
おかあさんは俺と同じ、黒い毛並みの猫。
おっきい水たまり(海って言うんだって)の傍の人間の街で、俺を産んだ。
いっしょに産まれた兄弟達は、みんな弱くて死んでしまった。
残ったのは俺と、おかあさんだけ。
このところずっと雨が降っていて、ネズミも取れない。
魚もとれないから仕方なく、人間がとってきた魚を横取りしようとして見つかって、水を掛けられた。
どうしてあんなにいっぱいあるのに、わけてくれないんだろう?
おかあさんは、食べ物をとってくるといつも俺にわけてくれる。
少ない時は、俺にだけ食べさせて自分は食べない。
だから…、
ある日、寝床にしている橋の下で、おかあさんが死んだ。
おかあさんの身体は、がりがりに痩せていた。
おかあさんは、元々は人間に飼われていた猫なんだって。
とっても可愛がられていたから、自分で食べ物を見つけてくるのが下手なんだって、他の野良猫たちが言っていた。
そうして食べ物を見つけてくるのが下手くそなお母さんが、やっと見つけたそれを俺に食べさせてくれたから。
だからおかあさんは死んでしまったんだって。
俺は一匹になってしまった。
これからは、俺が一匹で食べ物を探して、一匹で生きて行かなきゃならない。
その日も雨が降っていた。
雨の中で、一人の人間が俺を見ていた。
真っ黒い布(ローブって言うんだって)を被って、じっと俺を見つめている変な人間。
なんだよ、そんなに俺の事が珍しいのか?
雨の中で寝っ転がってる黒猫が、珍しいのかよ。
俺はその時、他の野良猫の縄張りで狩りをしようとして見つかって、ぼこぼこにされた後だった。
身体は動かないし雨は降って来るしで、もう死ぬかもしれないなと思っていた。
せっかくおかあさんがくれた命だけど、しょうがないなって。
だって俺も、おかあさんと同じで、食べ物を見つけてくるのが下手くそだったから。
「…………」
死を覚悟してた俺の身体を、人間がそっと両手で抱き上げる。
そしてその人間は。
いや、赤と青の目のその人は、言った。
「猫、俺と来るか?」
と。
傷ついて、今にも死にそうで。何の役にも立たない子猫の俺に、その人は…、ご主人様はそう言ってくれた。
そうして傷を治してくれて、ごはんをくれて、名前をくれた。
使い魔猫の契約を交わした後。
俺は「どうして助けてくれたのですか?」と聞いた。
ご主人様は、少しだけ寂しそうな顔をして。
「黒かったから」
と言った。
黒。ご主人様の、お好きな色。
俺の毛の色。そして、ご主人様の好きな。
お師匠様の色。幼馴染の、女の子の色。
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