39 / 49
八章
Ⅲ
しおりを挟む
「お、あかりっちじゃん。おつ~~」
「あ、新藤さん来てたんだ」
「白亜でいって~~」
「あかり。新藤の隣に座っていいぞ」
「え? 言われなくても座るから」
「そうか」
よし。うまいこと三人になれた。
「ねぇレオン。なんで仁王立ちしてるの?」
「そういう気分なんだ」
「じゃあちょち勉強しよか~~」
「新藤さん、白亜ってあんまり勉強しないっておもってたけど」
「ちょ、ひどくね!? まじ偏見~~!」
「あかり。こっち来ていいぞ。俺ずれるから」
「え? いや、ここでもいいけど」
「だめだ。こっちに」
買い物帰り、新藤から女神を封印する魔法について具体的なことを聞けた。家についてからは中々二人きりになれなかったから、携帯で連絡を取り合っていた。
いわく、女神フローラの意識、力を完全に封じ込められる魔法を研究していた。転生する前、命を落とす直前まで研究していたのでこっちの現代でもできる。
話を聞いて、最初はそこまでしなくても・・・・・・自制が働いた。けど、目的を新藤が話して実行に移さざるをえなかた。
女神フローラは力を使い果たしても、また力を取り戻せる。
異世界では定期的にそうやって目覚めて世界を守っていた。なにかがあれば女神としての力を使い、あるときはお告げを、あるときは荒廃した大地に緑を取り戻し、あるときは人々を導き、世界を守ってきた。そのたびに力を使い、眠りについて力を取り戻す。
俺が異世界で生きていたとき、伝え聞いた伝説と似ているが、魔王とダークエルフだった新藤はそれを魔法的観点から研究していたらしい。
俺を勇者に選び、聖剣を授けた。加護の力と様々なお告げをおこなった。情報として聞いた二人は勇者だった俺の力を削ぐ、ないしは侵略のために過去の女神フローラの成した数々の伝承と重ね合わせた。
周期、必要な魔力を仮定し、女神フローラが姿を現したときは計測をおこなった。そして、研究の成果、事実であると結論づけた。
それが、事実としたら。女神フローラがいなくなったあともまた俺にちょっかいをかけてくる可能性が残る。どれくらい先かは不明だけど、女神フローラからしてありえそうだ。
女神フローラが力を使い果たせば、あかりから消えて自由になれるとおもってた。新藤のことも委員長のこともそれから考えればいいと。
けど。俺がこの世界で死ぬまでずっと誰かに憑依して、邪魔をしてくる。そんな可能性があるってことだ。
フローラの性格からして、ありえる。
新藤との相談の結果、封印魔法を使おうと決意した。勉強会と銘打ってあかりを誘いだし、新藤にあかりの体を調べてもらう。二人っきりにするとあかりが怪しむし、フォローができる。
できるだけ怪しまれないようにしないと。
「ねぇ、他の皆は?」
「あかり。寒くないか?」
「え? そりゃちょっと肌寒いけど」
新藤と目線で合図を送る。頷かれた。
「これを羽織るといい」
封印を施すのには、あかりの体調が大きく影響する。だから、徹底的に整えておかないと。俺の上着を肩にかけながら暖房を調整する。
「過ごしやすいか?」
「いや。大丈夫だけど。それより他の――――」
「紅茶飲んだほうがいいぞ」
「あ、うん。それで――――」
「あかり。昨日ちゃんと眠れたか?」
「まぁ、普通?」
カリカリと勉強するフリをしながら、それとなく体調チェック。新藤と手分けしてメモしていく。事前に新藤に聞いておくように、という質問は決めていたから。
「携帯は平均一日どれくらい使ってる?」
「え、わかんないけど」
「病気になってないか? ここ最近で」
「だったらあんたもわかるでしょ」
「頭痛・目眩・吐き気その他諸々の体調不良は?」
「なに? なんで私病院の検査受けにきたみたいな質問されまくってんの?」
まずい。あかりのくせに勘づいたか?
「なんか変じゃない? レオン最初から表情がシリアスなかんじだし。声固いし」
くそ、さすが幼なじみ。些細な変化ですぐ怪しむ。
「それに教科書逆さまだし」
ヤバい。勉強なんてどうでもよかったから興味なさすぎた。
「それに、目の下に隈あんじゃん。どことなくやつれてるし。あんたのほうが大丈夫なわけ?」
スッ、と下瞼を引っ張ったりおでこに手を当てられて、そのままあちこちを具に観察されだす。急激に恥ずかしくなる。幼なじみ故の距離感のなさか、ちょっとしたときにこんな風に遠慮なしに接してこられるのは、大変心臓によろしくない。
あかりの手の柔らかさ、睫の長さまではっきり視認できて、より
「ひゅーひゅー。お二人とも熱いね~。ラブラブじゃん~~」
急に顔が火照ったあかりは、バッと離れる。ナイス新藤。
「あんたらマジ仲いいね~~。もう付き合ってるかんじにしか見えんし~~」
「ちょ、やめてよ白亜。そんなんじゃないから」
新藤が茶化してくれたおかげで、なんとか軌道修正できた。
「本当、レオンは変よね。昔っから突拍子もなく」
「まぁまぁ。あかりっち。レオンもあかりっちが心配なんだよ~~ね?」
「まぁ、な」
「もうこの話は終わりにして。なんのために勉強しにきたのよ」
「朝ご飯は食べれたか?」
「まだ続けんの!? 勉強って言ったじゃん!」
「いや、この後の昼食とおやつの兼ね合いもあるし」
「・・・・・・・・・軽めにだけど」
「なにを食べたんだ?」
「ガーリックトーストとニラレバとチキンサラダとラムステーキとすき焼き風スープ」
がっつりすぎて草生えたわ。朝からよくそんな食えるな。
ちらっと新藤を見やる。ノートの端に〈野菜と乳酸菌不足〉と書かれている。それ以外にも体調について、色々メモされている。
「ちょっと待ってろ。お菓子を持ってくる」
冷蔵庫にあったものを手早く吟味。準備を終えて戻ってきた。
「ちょ、なんで野菜スティックとヤクルトなのよ!?」
「ヨーグルトのほうがよかったか?」
「違う! そうじゃない!」
「あとはナスとブロッコリーと春菊があるけど」
「ラインナップの問題じゃないわ! お菓子じゃないでしょ!」
「でもいつもポッキーをサクサクいってるじゃないか。これも目を瞑ってサクサクいけば一緒だ」
「野菜オンリーでいけるわけないでしょ! せめてマヨネーズとかドレッシングよこしなさいよ!」
チラッと新藤を。大きくバッテンを出された。マヨネーズとドレッシングはだめ、か。
「わかった。ちょっと待ってろ」
代わりに持ってきた物に、あかりが怒髪天をついた。
「なんでお皿に山盛りの大豆なのよ!」
「大豆は畑のお肉と呼ばれているほど栄養あるし、イソフラボンが豊富なんだぞ」
「野菜でしょうが!」
「まぁそんな風にカッカすんのも野菜が足りてない証拠だ。大豆食べろ」
「あんたのせいでしょ!?」
ポリポリと食べて落ち着かせようと試みたけど、うまくいかない。
「あかり。今家にはお菓子の類いがないんだ。買いに行こうにも、できない」
「なんでよ」
フッ、と笑ってある種の事実と悲壮感を醸しだす。
「お小遣い、なくなっちゃった・・・・・・」
「あ・・・・・・」
悲しい扶養家族としてあかりも理解してくれたんだろう。急に申し訳なさそうになった。これは、事実だ。なんだかんだで遊んだりしているし。
「まぁたしかにウチも今月もうピンチッチーだからね――――。使いすぎちった――――」
「う、うう」
新藤がナイスなかんじでアシストしてくれた。ナイスだ。
「ほら、あかりが食べないと野菜スティックが悲しそうに萎びてきてるぞ?」
「それは暖房きいてるからでしょ!? 野菜しかないのはわかったわ。でもせめてマヨネーズがあってもいいでしょ!?」
「それもだめだ」
「どうしてよ! さすがにマヨネーズとかドレッシングだったら」
「あかり。お前太ったんじゃないか?」
ガガアアァァン! と稲妻が走った衝撃の表情。そのまま硬直してしまい、プルプルとしだす。
「は、はぁ!? そんなわけないでしょ! 訴えるわよ!?」
「部活してないだろ? あんまり動いてないだろ?」
「大丈夫だし! 夕飯のときダイエットコーラと黒烏龍茶飲んでるんだから! それに甘い物は糖分が含まれてて糖分はすぐエネルギーに変るからカロリーゼロだって!」
「あなたはなにを言っているんですか」
「それにアイスはカロリーも死んでしまう程の冷気で凍っているし揚げ物もカロリーが死滅するほどの高温で揚げられてるからカロリーゼロだってテレビで言ってたし!」
「お前カロリーをなんだとおもってるんだ」
「ねぇ白亜! 私太ってないわよね!?」
「ん~~? どだろ~~。ウチ高校に入ってからのあかりっちしか知らんしねぇ~。あ、ヤクルトうんま」
「ほら!」
「まぁでも油断してると体重ってすぐ増えちゃうし? ウチも最近体重計怖くて乗ってないわぁ~」
ビクっとあかりが怯えた。どうやら身に覚えがあるらしい。
「で、でも白亜ってそんな太ってないじゃん。スタイルいいし」
「そんなことねぇべ。ちょち触ってみ?」
手ずからお腹の辺りを触らせる。それに伴ってあかりのお腹、太ももを弄っていく。こうやって体重、スタイルで言葉巧みに誘導して、野菜を摂取させると同時にあかりの体調チェックをおこなっているんだ。
新藤白亜。なんて頭がいいんだ。
「お? これは・・・・・・」
「え? ちょ、触り方が変じゃない?」
女の子二人が体を弄っていて、時折変な声があがる。体が小さく痙攣して荒くなりつつある吐息さえいやらしくかんじられて。
ってなに考えてんだ俺。
「あ~~。これはヤバリングだわ。やばさのカースト頂上付近」
「え、嘘?」
ガァ~ン、とショックを受けたあかりは小さく項垂れる。
「だっけ、たまには野菜でいんじゃね? 案外美味いかもよ?」
「う、うん・・・・・・」
「今度一緒にジョギングでもしようぜ。俺も体動かしたいんだ」
「そ、そうね・・・・・・」
急激に元気がなくなったあかりは野菜をぽりぽりと食べ進めていく。ほっと息をついたけど、はじまったばかり。まだ油断できない。
「レオンって、さ」
「ん? なんだ?」
「太った私、嫌い?」
「・・・・・・・・・」
反則だろこんなの。
小声で、チラッと上目遣いで控えめに尋ねてくるいじらしさ。普段とのギャップが凄まじい。
「別にどんなあかりでも、あかりはあかりだろ」
素っ気なくそれだけ返すので精一杯だ。
「あ、新藤さん来てたんだ」
「白亜でいって~~」
「あかり。新藤の隣に座っていいぞ」
「え? 言われなくても座るから」
「そうか」
よし。うまいこと三人になれた。
「ねぇレオン。なんで仁王立ちしてるの?」
「そういう気分なんだ」
「じゃあちょち勉強しよか~~」
「新藤さん、白亜ってあんまり勉強しないっておもってたけど」
「ちょ、ひどくね!? まじ偏見~~!」
「あかり。こっち来ていいぞ。俺ずれるから」
「え? いや、ここでもいいけど」
「だめだ。こっちに」
買い物帰り、新藤から女神を封印する魔法について具体的なことを聞けた。家についてからは中々二人きりになれなかったから、携帯で連絡を取り合っていた。
いわく、女神フローラの意識、力を完全に封じ込められる魔法を研究していた。転生する前、命を落とす直前まで研究していたのでこっちの現代でもできる。
話を聞いて、最初はそこまでしなくても・・・・・・自制が働いた。けど、目的を新藤が話して実行に移さざるをえなかた。
女神フローラは力を使い果たしても、また力を取り戻せる。
異世界では定期的にそうやって目覚めて世界を守っていた。なにかがあれば女神としての力を使い、あるときはお告げを、あるときは荒廃した大地に緑を取り戻し、あるときは人々を導き、世界を守ってきた。そのたびに力を使い、眠りについて力を取り戻す。
俺が異世界で生きていたとき、伝え聞いた伝説と似ているが、魔王とダークエルフだった新藤はそれを魔法的観点から研究していたらしい。
俺を勇者に選び、聖剣を授けた。加護の力と様々なお告げをおこなった。情報として聞いた二人は勇者だった俺の力を削ぐ、ないしは侵略のために過去の女神フローラの成した数々の伝承と重ね合わせた。
周期、必要な魔力を仮定し、女神フローラが姿を現したときは計測をおこなった。そして、研究の成果、事実であると結論づけた。
それが、事実としたら。女神フローラがいなくなったあともまた俺にちょっかいをかけてくる可能性が残る。どれくらい先かは不明だけど、女神フローラからしてありえそうだ。
女神フローラが力を使い果たせば、あかりから消えて自由になれるとおもってた。新藤のことも委員長のこともそれから考えればいいと。
けど。俺がこの世界で死ぬまでずっと誰かに憑依して、邪魔をしてくる。そんな可能性があるってことだ。
フローラの性格からして、ありえる。
新藤との相談の結果、封印魔法を使おうと決意した。勉強会と銘打ってあかりを誘いだし、新藤にあかりの体を調べてもらう。二人っきりにするとあかりが怪しむし、フォローができる。
できるだけ怪しまれないようにしないと。
「ねぇ、他の皆は?」
「あかり。寒くないか?」
「え? そりゃちょっと肌寒いけど」
新藤と目線で合図を送る。頷かれた。
「これを羽織るといい」
封印を施すのには、あかりの体調が大きく影響する。だから、徹底的に整えておかないと。俺の上着を肩にかけながら暖房を調整する。
「過ごしやすいか?」
「いや。大丈夫だけど。それより他の――――」
「紅茶飲んだほうがいいぞ」
「あ、うん。それで――――」
「あかり。昨日ちゃんと眠れたか?」
「まぁ、普通?」
カリカリと勉強するフリをしながら、それとなく体調チェック。新藤と手分けしてメモしていく。事前に新藤に聞いておくように、という質問は決めていたから。
「携帯は平均一日どれくらい使ってる?」
「え、わかんないけど」
「病気になってないか? ここ最近で」
「だったらあんたもわかるでしょ」
「頭痛・目眩・吐き気その他諸々の体調不良は?」
「なに? なんで私病院の検査受けにきたみたいな質問されまくってんの?」
まずい。あかりのくせに勘づいたか?
「なんか変じゃない? レオン最初から表情がシリアスなかんじだし。声固いし」
くそ、さすが幼なじみ。些細な変化ですぐ怪しむ。
「それに教科書逆さまだし」
ヤバい。勉強なんてどうでもよかったから興味なさすぎた。
「それに、目の下に隈あんじゃん。どことなくやつれてるし。あんたのほうが大丈夫なわけ?」
スッ、と下瞼を引っ張ったりおでこに手を当てられて、そのままあちこちを具に観察されだす。急激に恥ずかしくなる。幼なじみ故の距離感のなさか、ちょっとしたときにこんな風に遠慮なしに接してこられるのは、大変心臓によろしくない。
あかりの手の柔らかさ、睫の長さまではっきり視認できて、より
「ひゅーひゅー。お二人とも熱いね~。ラブラブじゃん~~」
急に顔が火照ったあかりは、バッと離れる。ナイス新藤。
「あんたらマジ仲いいね~~。もう付き合ってるかんじにしか見えんし~~」
「ちょ、やめてよ白亜。そんなんじゃないから」
新藤が茶化してくれたおかげで、なんとか軌道修正できた。
「本当、レオンは変よね。昔っから突拍子もなく」
「まぁまぁ。あかりっち。レオンもあかりっちが心配なんだよ~~ね?」
「まぁ、な」
「もうこの話は終わりにして。なんのために勉強しにきたのよ」
「朝ご飯は食べれたか?」
「まだ続けんの!? 勉強って言ったじゃん!」
「いや、この後の昼食とおやつの兼ね合いもあるし」
「・・・・・・・・・軽めにだけど」
「なにを食べたんだ?」
「ガーリックトーストとニラレバとチキンサラダとラムステーキとすき焼き風スープ」
がっつりすぎて草生えたわ。朝からよくそんな食えるな。
ちらっと新藤を見やる。ノートの端に〈野菜と乳酸菌不足〉と書かれている。それ以外にも体調について、色々メモされている。
「ちょっと待ってろ。お菓子を持ってくる」
冷蔵庫にあったものを手早く吟味。準備を終えて戻ってきた。
「ちょ、なんで野菜スティックとヤクルトなのよ!?」
「ヨーグルトのほうがよかったか?」
「違う! そうじゃない!」
「あとはナスとブロッコリーと春菊があるけど」
「ラインナップの問題じゃないわ! お菓子じゃないでしょ!」
「でもいつもポッキーをサクサクいってるじゃないか。これも目を瞑ってサクサクいけば一緒だ」
「野菜オンリーでいけるわけないでしょ! せめてマヨネーズとかドレッシングよこしなさいよ!」
チラッと新藤を。大きくバッテンを出された。マヨネーズとドレッシングはだめ、か。
「わかった。ちょっと待ってろ」
代わりに持ってきた物に、あかりが怒髪天をついた。
「なんでお皿に山盛りの大豆なのよ!」
「大豆は畑のお肉と呼ばれているほど栄養あるし、イソフラボンが豊富なんだぞ」
「野菜でしょうが!」
「まぁそんな風にカッカすんのも野菜が足りてない証拠だ。大豆食べろ」
「あんたのせいでしょ!?」
ポリポリと食べて落ち着かせようと試みたけど、うまくいかない。
「あかり。今家にはお菓子の類いがないんだ。買いに行こうにも、できない」
「なんでよ」
フッ、と笑ってある種の事実と悲壮感を醸しだす。
「お小遣い、なくなっちゃった・・・・・・」
「あ・・・・・・」
悲しい扶養家族としてあかりも理解してくれたんだろう。急に申し訳なさそうになった。これは、事実だ。なんだかんだで遊んだりしているし。
「まぁたしかにウチも今月もうピンチッチーだからね――――。使いすぎちった――――」
「う、うう」
新藤がナイスなかんじでアシストしてくれた。ナイスだ。
「ほら、あかりが食べないと野菜スティックが悲しそうに萎びてきてるぞ?」
「それは暖房きいてるからでしょ!? 野菜しかないのはわかったわ。でもせめてマヨネーズがあってもいいでしょ!?」
「それもだめだ」
「どうしてよ! さすがにマヨネーズとかドレッシングだったら」
「あかり。お前太ったんじゃないか?」
ガガアアァァン! と稲妻が走った衝撃の表情。そのまま硬直してしまい、プルプルとしだす。
「は、はぁ!? そんなわけないでしょ! 訴えるわよ!?」
「部活してないだろ? あんまり動いてないだろ?」
「大丈夫だし! 夕飯のときダイエットコーラと黒烏龍茶飲んでるんだから! それに甘い物は糖分が含まれてて糖分はすぐエネルギーに変るからカロリーゼロだって!」
「あなたはなにを言っているんですか」
「それにアイスはカロリーも死んでしまう程の冷気で凍っているし揚げ物もカロリーが死滅するほどの高温で揚げられてるからカロリーゼロだってテレビで言ってたし!」
「お前カロリーをなんだとおもってるんだ」
「ねぇ白亜! 私太ってないわよね!?」
「ん~~? どだろ~~。ウチ高校に入ってからのあかりっちしか知らんしねぇ~。あ、ヤクルトうんま」
「ほら!」
「まぁでも油断してると体重ってすぐ増えちゃうし? ウチも最近体重計怖くて乗ってないわぁ~」
ビクっとあかりが怯えた。どうやら身に覚えがあるらしい。
「で、でも白亜ってそんな太ってないじゃん。スタイルいいし」
「そんなことねぇべ。ちょち触ってみ?」
手ずからお腹の辺りを触らせる。それに伴ってあかりのお腹、太ももを弄っていく。こうやって体重、スタイルで言葉巧みに誘導して、野菜を摂取させると同時にあかりの体調チェックをおこなっているんだ。
新藤白亜。なんて頭がいいんだ。
「お? これは・・・・・・」
「え? ちょ、触り方が変じゃない?」
女の子二人が体を弄っていて、時折変な声があがる。体が小さく痙攣して荒くなりつつある吐息さえいやらしくかんじられて。
ってなに考えてんだ俺。
「あ~~。これはヤバリングだわ。やばさのカースト頂上付近」
「え、嘘?」
ガァ~ン、とショックを受けたあかりは小さく項垂れる。
「だっけ、たまには野菜でいんじゃね? 案外美味いかもよ?」
「う、うん・・・・・・」
「今度一緒にジョギングでもしようぜ。俺も体動かしたいんだ」
「そ、そうね・・・・・・」
急激に元気がなくなったあかりは野菜をぽりぽりと食べ進めていく。ほっと息をついたけど、はじまったばかり。まだ油断できない。
「レオンって、さ」
「ん? なんだ?」
「太った私、嫌い?」
「・・・・・・・・・」
反則だろこんなの。
小声で、チラッと上目遣いで控えめに尋ねてくるいじらしさ。普段とのギャップが凄まじい。
「別にどんなあかりでも、あかりはあかりだろ」
素っ気なくそれだけ返すので精一杯だ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる