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三章
Ⅱ
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あれから家に帰って、盛大なパーティーを俺とあかりの両親はしてくれた。本当なら心から感謝と喜びで楽しめただろう。
「おい、どうしたレオン? 浮かない顔して」
「い、いや別に」
どうしよう。あかりが女神に乗っ取られた。今はあかりは普段通り振る舞っているけど、いつまた女神になって変なことをしでかすか。女神は完全にあかりの体を支配したわけではなく、二重人格と同じらしい。その証拠に、帰宅途中に掴みかかったとき、女神ではなくあかりに戻っていた。そのせいであかりと恥ずかしいかんじになってしまったが。
今こうしているときにも、女神になったら? おかしなことをしたら? 対策も相談もできない俺としてはチラチラと窺うことしかできない。
「あ~~。なるほどな。お前あかりちゃんに告白されただろ~」
「ブッフォ!?」
飲み物を盛大に吐きだしてしまった。なにを言うのパパ。こんなときに。
「だからあかりちゃん意識してるんだろ~。いやぁ若いっていいなぁ」
「ち、違ぇよ。まだされたわけじゃ!」
「ん? 違うのか? じゃあなんでそんなに・・・・・・・・・・・・・・・・・。はっはぁ~ん。あかりちゃんが他の子に告白されててそれで意識するようになったってことか。うんうん。わかるぞ。パパもママと出会う前はなぁ。そんな甘酸っぱいことしてたなぁ。懐かしい」
ごめん、パパ。俺は今それどころじゃないんだ。
「けど、後悔しても遅いぞ? あのときこうしておけばよかったって。まぁそれもほろ苦い青春の一ページとして」
「ママ~~~~! パパが昔の女のことを引きずってるよ~~~~!」
「ちょ、レオン!」
「パパ、どういうこと? あっちでお話しましょう?」
引きずられていくパパに合掌。これからどうしようかと考えだした矢先、あかりが動いた。
「なぁ~に騒いでんのよ」
どうやら飲み物を取りにきたらしい。ビク! と驚いて身構えたけど具に観察するけど、うん。本物のあかりだ。
「なにきょどってんの? キモ」
「いや、お前本当に大丈夫か? あれから気分悪いとかどこかおかしいとか」
「はぁ? なによ。心配しすぎだっての」
「そりゃあ心配するだろ」
女神に乗っ取られたんだから。
「・・・・・・・・・・・へぇ。それって幼なじみだから? それとも私だから?」
意味ありげな流し目のあかり。飲み物が入ったコップを忙しなく揉む仕草をしている。やめろ、今それどころじゃねぇんだよ。ドキッとさせんな。
「そういえばさ。ゆうし――――」
「正体を現したな!」
「急になに!?」
今勇者って言いかけた! わかったぞ! 女神はあかりのフリをして、こっそり俺を勇者に戻るように誘導しているんだ! くそ、あかりに完璧になりすますなんて! 騙されるところだったぜ。
「勇者ってなによ。私は有志の話をしたいのよ」
「は、有志?」
「そうよ。私達の高校、有志でボランティアとか美化活動とかやってるって聞いたでしょ? よかったらあんた入ってみない? 私も入ろうかな~って悩んでるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なに?」
「いや、お前本当にあかりか? 誕生日は? 二人でよく遊んでた公園は?」
「私がボランティアするのがそんなにおかしいわけ? 別人だって疑われるほど?」
紛らわしい・・・・・・・・・・・・・・・・。
「それと、せいけん――――」
「やっぱりか! この悪魔め!」
「だからなによ突然!」
「今聖剣って言ったろ! たしかに聞いたぞ!」
今度こそ、本物の女神になっているはず。許せねぇ、俺の幼なじみを利用するなんて。
「別に政権の話したっていいでしょ。私達だって選挙権がないとはいえ、他人事じゃないんだし」
「え、なんの話?」
「だから、今の日本の政権の話よ。政治。野党が選挙で勝ったらってニュースでも話題でしょ? 高校生なんだから少しはそういうことにも興味を持ったほうがいいでしょ。というか悪魔ってなによ」
はああああああああああああぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(疲)
「あかり。頼むからそのままのお前でいてくれ。変わらずありのままのお前で」
「え、ちょ」
がっしりと肩を掴んで、語りかける。心臓に悪いし、なにより疑わしくなる。
「俺は無駄に意識高い系になるより、そのままのあかりと一緒にいたい」
「う、うん・・・・・・・・・・・・・・・・」
上目遣いで照れたかんじで小さく頷いてくれた。そのせいで、あかりの告白未遂をおもいだして、俺まで恥ずかしくなってお互いもじもじしてしまう。でも、このままの状態だといけない。
女神を早くなんとかしないと。あかりの体から追いだすんだ。
「そういえば私めがみ――――」
「チェストオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「いったい!! 急になによ!? あんたおかしいわよ!?」
あかりの頭上にチョップを食らわせてしまった。
「お前が今正体ばらしたじゃねぇか! 女神だって!」
「私最近目が見えにくくなってるから眼鏡買うのに付き合ってほしかっただけよ! 女神ってなに!? なんのゲーム!?」
「すいませんでしたああああ!!」
土下座をして謝罪を乞う。ちくしょう、なんで俺がこんなことに。
「ねぇ、レオン。あんた本当にどうしたのよ。変よ?」
屈んで目線を合わせてくれる優しさに、全部ぶちまけたくなる。けど、言えるわけない。
「悪い。ちょっと疲れてるみたいだわ。もう寝る」
「え? ちょ――――」
「パパママにもそう伝えといてくれ」
一端、頭を休ませて整理する時間が必要だ。するりとあかりの手をすり抜けて、二階に駆け上がった。
「おい、どうしたレオン? 浮かない顔して」
「い、いや別に」
どうしよう。あかりが女神に乗っ取られた。今はあかりは普段通り振る舞っているけど、いつまた女神になって変なことをしでかすか。女神は完全にあかりの体を支配したわけではなく、二重人格と同じらしい。その証拠に、帰宅途中に掴みかかったとき、女神ではなくあかりに戻っていた。そのせいであかりと恥ずかしいかんじになってしまったが。
今こうしているときにも、女神になったら? おかしなことをしたら? 対策も相談もできない俺としてはチラチラと窺うことしかできない。
「あ~~。なるほどな。お前あかりちゃんに告白されただろ~」
「ブッフォ!?」
飲み物を盛大に吐きだしてしまった。なにを言うのパパ。こんなときに。
「だからあかりちゃん意識してるんだろ~。いやぁ若いっていいなぁ」
「ち、違ぇよ。まだされたわけじゃ!」
「ん? 違うのか? じゃあなんでそんなに・・・・・・・・・・・・・・・・・。はっはぁ~ん。あかりちゃんが他の子に告白されててそれで意識するようになったってことか。うんうん。わかるぞ。パパもママと出会う前はなぁ。そんな甘酸っぱいことしてたなぁ。懐かしい」
ごめん、パパ。俺は今それどころじゃないんだ。
「けど、後悔しても遅いぞ? あのときこうしておけばよかったって。まぁそれもほろ苦い青春の一ページとして」
「ママ~~~~! パパが昔の女のことを引きずってるよ~~~~!」
「ちょ、レオン!」
「パパ、どういうこと? あっちでお話しましょう?」
引きずられていくパパに合掌。これからどうしようかと考えだした矢先、あかりが動いた。
「なぁ~に騒いでんのよ」
どうやら飲み物を取りにきたらしい。ビク! と驚いて身構えたけど具に観察するけど、うん。本物のあかりだ。
「なにきょどってんの? キモ」
「いや、お前本当に大丈夫か? あれから気分悪いとかどこかおかしいとか」
「はぁ? なによ。心配しすぎだっての」
「そりゃあ心配するだろ」
女神に乗っ取られたんだから。
「・・・・・・・・・・・へぇ。それって幼なじみだから? それとも私だから?」
意味ありげな流し目のあかり。飲み物が入ったコップを忙しなく揉む仕草をしている。やめろ、今それどころじゃねぇんだよ。ドキッとさせんな。
「そういえばさ。ゆうし――――」
「正体を現したな!」
「急になに!?」
今勇者って言いかけた! わかったぞ! 女神はあかりのフリをして、こっそり俺を勇者に戻るように誘導しているんだ! くそ、あかりに完璧になりすますなんて! 騙されるところだったぜ。
「勇者ってなによ。私は有志の話をしたいのよ」
「は、有志?」
「そうよ。私達の高校、有志でボランティアとか美化活動とかやってるって聞いたでしょ? よかったらあんた入ってみない? 私も入ろうかな~って悩んでるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なに?」
「いや、お前本当にあかりか? 誕生日は? 二人でよく遊んでた公園は?」
「私がボランティアするのがそんなにおかしいわけ? 別人だって疑われるほど?」
紛らわしい・・・・・・・・・・・・・・・・。
「それと、せいけん――――」
「やっぱりか! この悪魔め!」
「だからなによ突然!」
「今聖剣って言ったろ! たしかに聞いたぞ!」
今度こそ、本物の女神になっているはず。許せねぇ、俺の幼なじみを利用するなんて。
「別に政権の話したっていいでしょ。私達だって選挙権がないとはいえ、他人事じゃないんだし」
「え、なんの話?」
「だから、今の日本の政権の話よ。政治。野党が選挙で勝ったらってニュースでも話題でしょ? 高校生なんだから少しはそういうことにも興味を持ったほうがいいでしょ。というか悪魔ってなによ」
はああああああああああああぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(疲)
「あかり。頼むからそのままのお前でいてくれ。変わらずありのままのお前で」
「え、ちょ」
がっしりと肩を掴んで、語りかける。心臓に悪いし、なにより疑わしくなる。
「俺は無駄に意識高い系になるより、そのままのあかりと一緒にいたい」
「う、うん・・・・・・・・・・・・・・・・」
上目遣いで照れたかんじで小さく頷いてくれた。そのせいで、あかりの告白未遂をおもいだして、俺まで恥ずかしくなってお互いもじもじしてしまう。でも、このままの状態だといけない。
女神を早くなんとかしないと。あかりの体から追いだすんだ。
「そういえば私めがみ――――」
「チェストオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「いったい!! 急になによ!? あんたおかしいわよ!?」
あかりの頭上にチョップを食らわせてしまった。
「お前が今正体ばらしたじゃねぇか! 女神だって!」
「私最近目が見えにくくなってるから眼鏡買うのに付き合ってほしかっただけよ! 女神ってなに!? なんのゲーム!?」
「すいませんでしたああああ!!」
土下座をして謝罪を乞う。ちくしょう、なんで俺がこんなことに。
「ねぇ、レオン。あんた本当にどうしたのよ。変よ?」
屈んで目線を合わせてくれる優しさに、全部ぶちまけたくなる。けど、言えるわけない。
「悪い。ちょっと疲れてるみたいだわ。もう寝る」
「え? ちょ――――」
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