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二章
Ⅲ
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そして、数年が経った。
「あ、このやろうあかり! 勝手に地雷設置すんじゃねぇよ!」
『うっさいわね。あんたがもたもたしてるからでしょ』
勇者をひとまず休んだ俺は、中学生になった。
「あ、田中@氏! そこ危ない! 待って今俺突るから!」
『乙で~す』
『というかお前ら受験生なのに勉強しないでいいのか?』
「ふはは。なにそれうける」
かつてやっていた聖剣の鍛錬もやらなくなって、どれくらいか。勇者としての使命も責務も完全に消失して、全力で遊びまくっていた。毎夜の恒例となったFPSのオンラインで先輩・友人一同で盛り上がっている。炭酸飲料とポテトチップスを合間に摘まんで。
「ちょっとレオン! 夕ご飯よ! 早く来なさい!」
「へぇ~い、ちょっと待ってママ~!」
『え、あんたまだママ呼びしてんの!?」
『まだってことは昔からママ呼び? キモ」
「うっせぇ! 癖になってんだから仕方ねぇだろ! このくそあかり!」
『『うわ~~。草生える』』
「うっせぇほっとけ! というかあかり! お前だって未だにお父さんとお風呂入ってんじゃねぇか!」
「あ! ちょ、あんたそれ言わないって!」
『詳細キボンヌ』
『詳細キボンヌ』
「隙ありぃ!」
「あ、ちょっと狡いわよ!」
「ははっははっは! ざまぁ! 勝てばいいんだよ勝てばぁ!」
どこにでもいる十代の男の子として生きていた。演じているんじゃない。自分の気持ちに素直に生きている。勇者らしさなんてどこにも微塵もない。
「あ、そうだ。今度の土曜日買い物付き合ってくれない?」
『私パス。美容院いくから』
「うっわ、ノリ悪」
『俺いいよ。カラオケ行きたいし』
『小生も』
「じゃああかりを除いて、十時に駅集合でおけ? 三時頃からカラオケってかんじで」
どこにでもいる平凡な日本の男の子として。
等身大の自分で。全力の本気で。完全にこの世界の人間として。
青井レオンとして生きている。
「あ、このやろうあかり! 勝手に地雷設置すんじゃねぇよ!」
『うっさいわね。あんたがもたもたしてるからでしょ』
勇者をひとまず休んだ俺は、中学生になった。
「あ、田中@氏! そこ危ない! 待って今俺突るから!」
『乙で~す』
『というかお前ら受験生なのに勉強しないでいいのか?』
「ふはは。なにそれうける」
かつてやっていた聖剣の鍛錬もやらなくなって、どれくらいか。勇者としての使命も責務も完全に消失して、全力で遊びまくっていた。毎夜の恒例となったFPSのオンラインで先輩・友人一同で盛り上がっている。炭酸飲料とポテトチップスを合間に摘まんで。
「ちょっとレオン! 夕ご飯よ! 早く来なさい!」
「へぇ~い、ちょっと待ってママ~!」
『え、あんたまだママ呼びしてんの!?」
『まだってことは昔からママ呼び? キモ」
「うっせぇ! 癖になってんだから仕方ねぇだろ! このくそあかり!」
『『うわ~~。草生える』』
「うっせぇほっとけ! というかあかり! お前だって未だにお父さんとお風呂入ってんじゃねぇか!」
「あ! ちょ、あんたそれ言わないって!」
『詳細キボンヌ』
『詳細キボンヌ』
「隙ありぃ!」
「あ、ちょっと狡いわよ!」
「ははっははっは! ざまぁ! 勝てばいいんだよ勝てばぁ!」
どこにでもいる十代の男の子として生きていた。演じているんじゃない。自分の気持ちに素直に生きている。勇者らしさなんてどこにも微塵もない。
「あ、そうだ。今度の土曜日買い物付き合ってくれない?」
『私パス。美容院いくから』
「うっわ、ノリ悪」
『俺いいよ。カラオケ行きたいし』
『小生も』
「じゃああかりを除いて、十時に駅集合でおけ? 三時頃からカラオケってかんじで」
どこにでもいる平凡な日本の男の子として。
等身大の自分で。全力の本気で。完全にこの世界の人間として。
青井レオンとして生きている。
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