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二十二章
Ⅲ
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ややあって、想像より賑やかしくあったけど、ある程度終わった。多少のぎこちなさを残しながらだったからカチコチに緊張して、よそよそしさすらあって気まずかったけど。
「あ、ありがとう。じゃああとは片づけるだけだな」
「はい・・・・・・」
ルウも同じ状態で、お互いに目線も合わせられないまま黙々と片づける。
でも、やばい、めっちゃくちゃ嬉しい。けど、恥ずかしい。手を繋いでもいない俺にはあんなハグに近い行為はレベルが高すぎた。まだ早すぎたんだ。あんなので死んでしまいそうになるなんて。
手を繋いだときには、俺はどうなってしまうんだ!?
それに、その上にある恋人同士のスキンシップ。キス、ほっぺつんつん。そして、etc.etc.。
そして、最後にはベッドインが待っているんだぞ? あのルウとベッドで・・・・・・。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
雑巾を光速拭きして、机を磨くことで少し冷静さを取り戻した。
「ご主人様。これはこっちに置いておきます」
すん、と感情の一切が無くなっている。さっきと同一人物かと疑ってしまうくらい。
「なにをなさっているのですか。そんなに遅くては日が明けますよ」
さっきのルウはなんだったんだろう。あんなに変でおかしくて、そして世界誕生以来最高にかわいかった姿なんて欠片も残してなくて。
「そんなんで本当に呪いが成功したのか疑わしいほどです」
いや、ルウも動揺しまくってる。尻尾が逆立ってるもの。よく見ないとわからないほど尻尾が微振動して直立しているもの。それにいつまでもルウも瓶を開け閉めして開け閉めしてを連続で繰り返している。
「私はなにを」「なにをしていたのでしょうか」と、聞き取れないくらいの小ささでブツブツと囁いている。
「ご主人様。一つ尋ねてもよろしいでしょうか」
俺と同じなんだっていう安心感と顔を合せていないこと、そして片付け作業中だってことで、ある程度冷静に会話ができる。そんな配慮と優しさに満ちたルウからの対話。
ああ、もう最高にかわいい! 好き!
「ご主人様は試験に自信がないのですか?」
「さぁなぁ。でも、今できるだけのことはやったし」
「諦めの境地ですか」
「それとは違うよ。でも、今更ジタバタしたところでしょうがないだろ? 前にも言ったけど魔道士になれるのなんて一握りだ。俺には才能があるわけじゃないし。でも、今の自分にできる最大限をぶつける努力はもうしてきた。だめで元々だし。初めての試験だからな」
「では、なにゆえ集中なさっていなかったのですか?」
つい、振り向きそうになった。
「いえ。本当に時折ですが。なにか呪いについてとか。今の研究について上の空というほどではないのですが。時折遠い目をなさっていたので。更にいいますと、夕食のときからですが」
「ルウはなんでも見抜いちゃうな・・・・・・これも愛のなせる技かな」
「あ”ぁ?」
「・・・・・・・・・・・・別に。ふとおもっちゃっただけなんだ」
片付けを再開しながら、ぽつぽつと語る。
「さっきも言ったけど。俺には才能がない。時間も有限だ。万が一、呪いを魔法に組み合わせても、実現にはどれだけかかるか」
呪いを魔法に組み合わせる。そんなことルナがいなければ発想できなかった。
『固定』を義眼から抽出して、一つの魔法とするなんてモーガンに出会わなければできなかった。
エドガーと再会しなければ、そしてルウが死ななかったら、俺は義眼を再び使う勇気も出なかった。
なにかがなければ、俺は新しいなにかに気づいて発想に至らない。呪いをわずかに利用しようとするだけでも手間暇をかけて、そしてやっと小さな呪いを再現できただけ。
けど、魔道士はきっと自分から探す。気づく。それはきっと目に入ったもの。ありふれたもの。俺にはそういう意識が欠けている。古代の魔道士は無から魔法を発見し、知識として蓄積して、技術として磨いてきた。俺にとってのなにかを自分で見つけるんだ。
例えるなら俺は外からのなにかで、魔道士達は内からのなにか。それはきっと致命的だ。外からのなにかなんてそう易々とあるわけじゃない。俺が体験したなにかは、一生に一度なくてもいいくらい。
けど、才能じゃない、そのなにかを魔道士は自分が持っているとしたら。俺にはなくて、そして大切な足りなさを補うとしたら、どうするか?
時間を費やすしかない。熱意を持ち続けるしかない。楽しさと夢にむかう情熱を、生涯持ち続けるしかない。
けど、そんなことができるのか? 人はいつ死ぬかわからない。寿命だってある。加齢とともに体力も体の感覚は衰えていくし、精神力だって疲弊していくだろう。
「だから、ふとおもったんだ。永遠に生きられたらいいのになって」
だって、そうだろう? そうすれば、どんな魔法だろうとどんな研究だろうと、ずっと続けられる。あらゆることに気づくきっかけも機会も、永遠に生きられれば自分に足りないなにかに出会うチャンスこそ無限にある。
「ずっと。ずっとずっとずっと研究ができる。魔法も創れる。新たな発見をし続けられる。もし今魔道士なれなくても、そうやってずっとずっとずっとずっとずっとずっと生きていられたら。魔道士になれる可能性だって永遠にあるんだ。そうすればいつまでも研究できるし、魔法士冥利に尽きるかなって」
いっそのこと睡眠も食事も疲労がなくても生きていける体になってしまえば。人の体だって限界がある。歳とともに気力と熱意も薄れていく。だとしたら、今の若さを保ったまま。
「ご主人様・・・・・・」
「いっそのこと人を越えてしまえば――――」
人ではないなにか。不老も不死も、すべてを超越した存在。それを目指すことは大魔道士を越えるって夢と重ならないか?
そうだったら、どんなにいいか。誰にも真似できない途方のない夢。いや、野望。
「それは、自然に反しております」
ハッと、中断された。ルウの芯のある言葉に目を見張って、次いで真剣な表情に呑まれた。
「生き物は皆、死にます。死ぬまでの間に子を成します。そうやって過去から現在へ生き残ってまいりました。それはきっと魔法ではできないことです」
「うん」
「私の一族、家族より聞いたことがあります。大昔、ある狼がいたと。その狼は山より大きく、火を吹き、災害と例えられ、忌むべき存在とされ、最後には特別な紐によって封じられ、命を落としたそうです」
その狼なら俺も知っている。伝承やお伽噺にある。口から零れた涎で河ができ、その口は開けば上顎が天にも届き、目や鼻からは炎を噴き出するほどだったと。
古代に存在した、魔獣と呼ばれる危険で伝説的な生物がモデルだとされている。
「最初は、小さい普通の大きさだったそうです。母も、父も、兄妹姉妹達もいたそうです。ですが、力が増していくと同時に手が付けられないほど凶暴になったと。狼の寿命を当に過ぎたのちに、自らの力を欲望に赴くままに振い、世界を蹂躙して最後は自然によって命を落としたと」
俺が知っている伝承と少し違うけど、種族によって違うのかな? たしか巨人と神の子供じゃなかったっけ?
「狩りを行い、自然で生きる私達ウェアウルフの一族のご先祖様から代々伝わってきたお話です。例えどのような生まれであっても、種族であっても、己のためだけに生きればそのような狼のようになってしまうと。狼という種を越え、別のなにかになってしまった、自然に反した者の末路だと」
俺が志した世界、事象、身分、この世のあらゆる理を変えるというものとは根本から違った話で、おもわず傾聴してしまったけど、なにか切実に訴えてくる。
ルウは、俺に警告をしているのか。永遠に生きる。何気なく呟いたこと。そこから人を越えたなにかになる。そうなれば、件の狼のようになってしまうと。
人智を越えた存在は、普通の人からすれば脅威でしかない。それも永遠とあっては。奇怪でしかないだろう。だとすれば、俺も誰かに、いや。
「なにより、そうなったらご主人様は一人ぼっちになります。どのような人と会っても、知り合いになっても、最後には死に別れることとなります。それでは、寂しいのではありませんか?」
「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「なにゆえにそれはそれでずっと魔法の研究ができるから別にどうでもいいとばかりに黙りこむのですか」
ズイッとしたかんじでルウが一歩前に進んで、こわい雰囲気で迫ってくる。俺の心を察知したとばかりに。
いや、だって・・・・・・。
「さっきもそうですが。ご主人様は狂気を眠らせておいでです。出会ってからかんじていたのですが。自分を卑下しすぎです。さっき語っていたときの口調と目は、こわかったです。黙りこんだのがその証です」
「そ、それは・・・・・・」
「極端すぎるのです。では私が死んだあとも一人で生きて研究できるのですか?」
「それはいやだっっっっっ!!!」
ルウが死んだあと、悲しくて嘆いて後を追う自信がある。
「ハァ・・・・・・・・・。そのわかりやすさを少しは他のことに・・・・・・・・まぁよろしいです。では、どうか人のままで野望を成就なさってください」
「ああ、うん」
「まぁご主人様が永遠に生きるなんてとんでもない魔法できるはずありませんが」
「・・・・・・・・・そこは少し信じてよ・・・・・・」
「無理です。だってご主人様は私の気持ちを優先してくださるのでしょう? 私は永遠になんて生きたくありませんし、他の生き方がしたいので」
「例えば、どんな?」
「そうですねぇ・・・・・・。成り上がる? 下克上? 闇討ち? 寝首?」
不穏なワードばかり。それ、対象俺じゃないよね?
「別に普通でよろしいです」
「ふ、普通?」
「はい。私の両親やご主人様の両親、そして私達が生きてきたのと同じく。ある意味種族や先人と同じで」
「?」
「狩人は、獣と魔物を狩ります。まず、掟を教わるところからはじまります。自然の掟と過酷さもです。欲望の赴くままに己のためだけに生きていたずらに殺し尽くしてはいけない、親と子の獣がいたら子供を殺してはいけない、そのような掟がございます。獣を狩り尽くせば、私達は生きられません。他の生き物もです」
「うん?」
「私もそうして親から狩りの仕方を教わりました。体術を教わりました。獣や魔物の捌き方や焼き方を教わりました。永遠に生きることはできないからこそ、かぎりある命の間に残したい、知っておいてほしい、そのようなやりかたで血筋を残し、生きる術を残してきたのです」
「・・・・・・」
「ご主人様も、他の種族もどこか似たようなことがあるのではないでしょうか。なので、そのように生きたいのです。ご主人様と永遠に生きるよりも。命の中で教わったことを語り継いだり教えたり学ばせ、残して、そうしてかぎりある命を生きたいです」
「は、ははは・・・・・・」
たしかに。永遠に生きるよりも楽しそうで、そして大変そうだ。
「なんですか? 魔道士(予定)にとっては奴隷のウェアウルフのささやかな夢さえ一笑に付す価値しかないってことですか? 不愉快です」
「穿ちすぎだるぉお!?」
「あ、ありがとう。じゃああとは片づけるだけだな」
「はい・・・・・・」
ルウも同じ状態で、お互いに目線も合わせられないまま黙々と片づける。
でも、やばい、めっちゃくちゃ嬉しい。けど、恥ずかしい。手を繋いでもいない俺にはあんなハグに近い行為はレベルが高すぎた。まだ早すぎたんだ。あんなので死んでしまいそうになるなんて。
手を繋いだときには、俺はどうなってしまうんだ!?
それに、その上にある恋人同士のスキンシップ。キス、ほっぺつんつん。そして、etc.etc.。
そして、最後にはベッドインが待っているんだぞ? あのルウとベッドで・・・・・・。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
雑巾を光速拭きして、机を磨くことで少し冷静さを取り戻した。
「ご主人様。これはこっちに置いておきます」
すん、と感情の一切が無くなっている。さっきと同一人物かと疑ってしまうくらい。
「なにをなさっているのですか。そんなに遅くては日が明けますよ」
さっきのルウはなんだったんだろう。あんなに変でおかしくて、そして世界誕生以来最高にかわいかった姿なんて欠片も残してなくて。
「そんなんで本当に呪いが成功したのか疑わしいほどです」
いや、ルウも動揺しまくってる。尻尾が逆立ってるもの。よく見ないとわからないほど尻尾が微振動して直立しているもの。それにいつまでもルウも瓶を開け閉めして開け閉めしてを連続で繰り返している。
「私はなにを」「なにをしていたのでしょうか」と、聞き取れないくらいの小ささでブツブツと囁いている。
「ご主人様。一つ尋ねてもよろしいでしょうか」
俺と同じなんだっていう安心感と顔を合せていないこと、そして片付け作業中だってことで、ある程度冷静に会話ができる。そんな配慮と優しさに満ちたルウからの対話。
ああ、もう最高にかわいい! 好き!
「ご主人様は試験に自信がないのですか?」
「さぁなぁ。でも、今できるだけのことはやったし」
「諦めの境地ですか」
「それとは違うよ。でも、今更ジタバタしたところでしょうがないだろ? 前にも言ったけど魔道士になれるのなんて一握りだ。俺には才能があるわけじゃないし。でも、今の自分にできる最大限をぶつける努力はもうしてきた。だめで元々だし。初めての試験だからな」
「では、なにゆえ集中なさっていなかったのですか?」
つい、振り向きそうになった。
「いえ。本当に時折ですが。なにか呪いについてとか。今の研究について上の空というほどではないのですが。時折遠い目をなさっていたので。更にいいますと、夕食のときからですが」
「ルウはなんでも見抜いちゃうな・・・・・・これも愛のなせる技かな」
「あ”ぁ?」
「・・・・・・・・・・・・別に。ふとおもっちゃっただけなんだ」
片付けを再開しながら、ぽつぽつと語る。
「さっきも言ったけど。俺には才能がない。時間も有限だ。万が一、呪いを魔法に組み合わせても、実現にはどれだけかかるか」
呪いを魔法に組み合わせる。そんなことルナがいなければ発想できなかった。
『固定』を義眼から抽出して、一つの魔法とするなんてモーガンに出会わなければできなかった。
エドガーと再会しなければ、そしてルウが死ななかったら、俺は義眼を再び使う勇気も出なかった。
なにかがなければ、俺は新しいなにかに気づいて発想に至らない。呪いをわずかに利用しようとするだけでも手間暇をかけて、そしてやっと小さな呪いを再現できただけ。
けど、魔道士はきっと自分から探す。気づく。それはきっと目に入ったもの。ありふれたもの。俺にはそういう意識が欠けている。古代の魔道士は無から魔法を発見し、知識として蓄積して、技術として磨いてきた。俺にとってのなにかを自分で見つけるんだ。
例えるなら俺は外からのなにかで、魔道士達は内からのなにか。それはきっと致命的だ。外からのなにかなんてそう易々とあるわけじゃない。俺が体験したなにかは、一生に一度なくてもいいくらい。
けど、才能じゃない、そのなにかを魔道士は自分が持っているとしたら。俺にはなくて、そして大切な足りなさを補うとしたら、どうするか?
時間を費やすしかない。熱意を持ち続けるしかない。楽しさと夢にむかう情熱を、生涯持ち続けるしかない。
けど、そんなことができるのか? 人はいつ死ぬかわからない。寿命だってある。加齢とともに体力も体の感覚は衰えていくし、精神力だって疲弊していくだろう。
「だから、ふとおもったんだ。永遠に生きられたらいいのになって」
だって、そうだろう? そうすれば、どんな魔法だろうとどんな研究だろうと、ずっと続けられる。あらゆることに気づくきっかけも機会も、永遠に生きられれば自分に足りないなにかに出会うチャンスこそ無限にある。
「ずっと。ずっとずっとずっと研究ができる。魔法も創れる。新たな発見をし続けられる。もし今魔道士なれなくても、そうやってずっとずっとずっとずっとずっとずっと生きていられたら。魔道士になれる可能性だって永遠にあるんだ。そうすればいつまでも研究できるし、魔法士冥利に尽きるかなって」
いっそのこと睡眠も食事も疲労がなくても生きていける体になってしまえば。人の体だって限界がある。歳とともに気力と熱意も薄れていく。だとしたら、今の若さを保ったまま。
「ご主人様・・・・・・」
「いっそのこと人を越えてしまえば――――」
人ではないなにか。不老も不死も、すべてを超越した存在。それを目指すことは大魔道士を越えるって夢と重ならないか?
そうだったら、どんなにいいか。誰にも真似できない途方のない夢。いや、野望。
「それは、自然に反しております」
ハッと、中断された。ルウの芯のある言葉に目を見張って、次いで真剣な表情に呑まれた。
「生き物は皆、死にます。死ぬまでの間に子を成します。そうやって過去から現在へ生き残ってまいりました。それはきっと魔法ではできないことです」
「うん」
「私の一族、家族より聞いたことがあります。大昔、ある狼がいたと。その狼は山より大きく、火を吹き、災害と例えられ、忌むべき存在とされ、最後には特別な紐によって封じられ、命を落としたそうです」
その狼なら俺も知っている。伝承やお伽噺にある。口から零れた涎で河ができ、その口は開けば上顎が天にも届き、目や鼻からは炎を噴き出するほどだったと。
古代に存在した、魔獣と呼ばれる危険で伝説的な生物がモデルだとされている。
「最初は、小さい普通の大きさだったそうです。母も、父も、兄妹姉妹達もいたそうです。ですが、力が増していくと同時に手が付けられないほど凶暴になったと。狼の寿命を当に過ぎたのちに、自らの力を欲望に赴くままに振い、世界を蹂躙して最後は自然によって命を落としたと」
俺が知っている伝承と少し違うけど、種族によって違うのかな? たしか巨人と神の子供じゃなかったっけ?
「狩りを行い、自然で生きる私達ウェアウルフの一族のご先祖様から代々伝わってきたお話です。例えどのような生まれであっても、種族であっても、己のためだけに生きればそのような狼のようになってしまうと。狼という種を越え、別のなにかになってしまった、自然に反した者の末路だと」
俺が志した世界、事象、身分、この世のあらゆる理を変えるというものとは根本から違った話で、おもわず傾聴してしまったけど、なにか切実に訴えてくる。
ルウは、俺に警告をしているのか。永遠に生きる。何気なく呟いたこと。そこから人を越えたなにかになる。そうなれば、件の狼のようになってしまうと。
人智を越えた存在は、普通の人からすれば脅威でしかない。それも永遠とあっては。奇怪でしかないだろう。だとすれば、俺も誰かに、いや。
「なにより、そうなったらご主人様は一人ぼっちになります。どのような人と会っても、知り合いになっても、最後には死に別れることとなります。それでは、寂しいのではありませんか?」
「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「なにゆえにそれはそれでずっと魔法の研究ができるから別にどうでもいいとばかりに黙りこむのですか」
ズイッとしたかんじでルウが一歩前に進んで、こわい雰囲気で迫ってくる。俺の心を察知したとばかりに。
いや、だって・・・・・・。
「さっきもそうですが。ご主人様は狂気を眠らせておいでです。出会ってからかんじていたのですが。自分を卑下しすぎです。さっき語っていたときの口調と目は、こわかったです。黙りこんだのがその証です」
「そ、それは・・・・・・」
「極端すぎるのです。では私が死んだあとも一人で生きて研究できるのですか?」
「それはいやだっっっっっ!!!」
ルウが死んだあと、悲しくて嘆いて後を追う自信がある。
「ハァ・・・・・・・・・。そのわかりやすさを少しは他のことに・・・・・・・・まぁよろしいです。では、どうか人のままで野望を成就なさってください」
「ああ、うん」
「まぁご主人様が永遠に生きるなんてとんでもない魔法できるはずありませんが」
「・・・・・・・・・そこは少し信じてよ・・・・・・」
「無理です。だってご主人様は私の気持ちを優先してくださるのでしょう? 私は永遠になんて生きたくありませんし、他の生き方がしたいので」
「例えば、どんな?」
「そうですねぇ・・・・・・。成り上がる? 下克上? 闇討ち? 寝首?」
不穏なワードばかり。それ、対象俺じゃないよね?
「別に普通でよろしいです」
「ふ、普通?」
「はい。私の両親やご主人様の両親、そして私達が生きてきたのと同じく。ある意味種族や先人と同じで」
「?」
「狩人は、獣と魔物を狩ります。まず、掟を教わるところからはじまります。自然の掟と過酷さもです。欲望の赴くままに己のためだけに生きていたずらに殺し尽くしてはいけない、親と子の獣がいたら子供を殺してはいけない、そのような掟がございます。獣を狩り尽くせば、私達は生きられません。他の生き物もです」
「うん?」
「私もそうして親から狩りの仕方を教わりました。体術を教わりました。獣や魔物の捌き方や焼き方を教わりました。永遠に生きることはできないからこそ、かぎりある命の間に残したい、知っておいてほしい、そのようなやりかたで血筋を残し、生きる術を残してきたのです」
「・・・・・・」
「ご主人様も、他の種族もどこか似たようなことがあるのではないでしょうか。なので、そのように生きたいのです。ご主人様と永遠に生きるよりも。命の中で教わったことを語り継いだり教えたり学ばせ、残して、そうしてかぎりある命を生きたいです」
「は、ははは・・・・・・」
たしかに。永遠に生きるよりも楽しそうで、そして大変そうだ。
「なんですか? 魔道士(予定)にとっては奴隷のウェアウルフのささやかな夢さえ一笑に付す価値しかないってことですか? 不愉快です」
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