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第一章 出会い、出会われ、出会いつつ。
本日限りの関係(4)
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残った料理も味に申し分はなく、星宮と二人でシェアしているうちにすべて胃に収まった。
料理に興奮してしまい、ドリンクバーの存在を忘れていたことに思い出す。
「ドリンクバー取ってくるけど、星宮は何にする?」
「えー、あったらほうじ茶ラテ。ソイミルクカスタムで」
「ねーよ。ここはスタバじゃねぇ」
「んじゃ、なんかあったかいやつ。あ、白湯持ってくるとかいうボケはやめろよー?」
そんなしょうもないことしねぇよ、と思いながら席を立つ。
洗浄済みのグラスとコーヒーカップを両手に持ち、ドリンクバーの前に立った。
ドリンクバーといったら、男は黙ってメロンソーダ一択だよなぁっ! チープな味とくっそ体に悪そうな色。一周回ってこういうのが飲みたいんだよ。
にしてもメロンソーダってメロンの味しないよな。原材料から考えて、ここはひとつ「着色料ソーダ」に改名してみるのはどうだろう。……ないな。メロンソーダに失礼だ。
自分用のメロンソーダを迷うことなく注いだ後、俺は衝撃の光景を目にしてしまった。
コーヒーマシンとは別に、ドリップコーヒーが置いてあるだと……⁉ しかもこの緑のカエルのマーク。レインフォレストアライアンス認証……⁉ ココアに関してはヴァンホーテンだし。何この店、神?
「高い」には理由があるんだなぁ。しみじみと思いながら、俺は星宮のカップにコーヒーを注いだ。
星宮はその日の気分によって、砂糖とミルクの有無が変わる。シュガーだけ入れたり、ミルクだけ入れたり、どちらも入れたり、逆に何も入れなかったり。
今回はシュガーとミルクの有無は別に聞いていなかったが、もし必要になった場合二度手間でまどろっこしいので、一つずつ拝借して席へと戻った。
「ほい」
「おおー、コーヒーじゃん。ロイホのコーヒー美味いんだよなー。……にしても君、この店まで来て、飲むのがメロンソーダって。センスねー」
星宮はソファの背もたれに肘を置き、けへへと笑ってコーヒーをストレートで飲む。本日の星宮はシュガーもミルクもいらないらしい。
「お前メロンソーダなめんな。同じ系列のファミレスでも味違うことあるんだからな」
「それ、希釈濃度が違うだけだと思うよ。小鳥遊くんもコーヒーとかの賢い飲み物を飲みな?」
星宮は俺を煽りながらも優雅にコーヒーカップを傾けていた。
「コーヒー=賢いとか思ってる時点ですでにもう頭悪くないか?」
丁寧にコーヒーを飲む星宮を見ながら、ちるるるーちるるるーとメロンソーダを啜っていると。
「あ、そうそう。部長は私がやるので。君は副部長をよ☆ろ☆し☆く☆」
星宮はばちこんとウインクを決めてくる。
「随分勝手だな。ま、別にいいけど」
あなた部長とかそういうの好きそうだもんね。俺もこれには不満はない。
実は副部長という役職は一番暇だったりする。やることといえば部長の代打くらいで、それ以外はまるで出番がないのだ。
特に仕事を与えられず、こちらも仕事を欲さずにただ組織に属するだけの、言わば人数合わせ。出社してから退社するまでの約八時間、パソコンとにらめっこしながら一人でマインスイーパーをプレイしているようなものである。とにかく暇で楽。
「あとー、記録と会計の仕事も君がやるってことで」
「それ実質ほぼ全部俺じゃねぇか……」
「え―別にいいじゃーん。私、料理以外で細かいことやるの無理なんだよぉ」
星宮はぐだぐだ言いながらコーヒーを飲む。
「俺が記録と会計をするなら、星宮は何するんだよ」
星宮は人差し指を顎に当てて。
「マスコット的な? ほら、私かわいいから」
「うわぁー、うざいなー」
「ま、細かいことはきにせずに、ゆらゆら楽しくいきましょうや」
「おい、お前なんかいい事言ったっぽくして誤魔化そうとしてるだろ」
ぺろっと舌を出す彼女を見て、ひとつ物申してやろうと思ったのだが、それを察知したかのようにコーヒーを一気に飲み干し、荷物をまとめ始めた。
「そろそろ帰ろ。私まだ春休みの課題終わってないの。あ、割り勘でいいよね?」
春休みは既に終わっている件について。
言いたいことはたくさんあったが、星宮の問いにこくりと頷いて席を立った。
星宮はなぜかドヤッと伝票をレジに差し出す。レジに金額が表示されると、なにやらごそごそポケットや鞄をまさぐって一言。
「……あっ。財布学校に忘れちゃった」
「おい」
二人分の飲食代は、俺の財布に大打撃を与えたのだった。
…………高いには理由があるんだなぁ。
料理に興奮してしまい、ドリンクバーの存在を忘れていたことに思い出す。
「ドリンクバー取ってくるけど、星宮は何にする?」
「えー、あったらほうじ茶ラテ。ソイミルクカスタムで」
「ねーよ。ここはスタバじゃねぇ」
「んじゃ、なんかあったかいやつ。あ、白湯持ってくるとかいうボケはやめろよー?」
そんなしょうもないことしねぇよ、と思いながら席を立つ。
洗浄済みのグラスとコーヒーカップを両手に持ち、ドリンクバーの前に立った。
ドリンクバーといったら、男は黙ってメロンソーダ一択だよなぁっ! チープな味とくっそ体に悪そうな色。一周回ってこういうのが飲みたいんだよ。
にしてもメロンソーダってメロンの味しないよな。原材料から考えて、ここはひとつ「着色料ソーダ」に改名してみるのはどうだろう。……ないな。メロンソーダに失礼だ。
自分用のメロンソーダを迷うことなく注いだ後、俺は衝撃の光景を目にしてしまった。
コーヒーマシンとは別に、ドリップコーヒーが置いてあるだと……⁉ しかもこの緑のカエルのマーク。レインフォレストアライアンス認証……⁉ ココアに関してはヴァンホーテンだし。何この店、神?
「高い」には理由があるんだなぁ。しみじみと思いながら、俺は星宮のカップにコーヒーを注いだ。
星宮はその日の気分によって、砂糖とミルクの有無が変わる。シュガーだけ入れたり、ミルクだけ入れたり、どちらも入れたり、逆に何も入れなかったり。
今回はシュガーとミルクの有無は別に聞いていなかったが、もし必要になった場合二度手間でまどろっこしいので、一つずつ拝借して席へと戻った。
「ほい」
「おおー、コーヒーじゃん。ロイホのコーヒー美味いんだよなー。……にしても君、この店まで来て、飲むのがメロンソーダって。センスねー」
星宮はソファの背もたれに肘を置き、けへへと笑ってコーヒーをストレートで飲む。本日の星宮はシュガーもミルクもいらないらしい。
「お前メロンソーダなめんな。同じ系列のファミレスでも味違うことあるんだからな」
「それ、希釈濃度が違うだけだと思うよ。小鳥遊くんもコーヒーとかの賢い飲み物を飲みな?」
星宮は俺を煽りながらも優雅にコーヒーカップを傾けていた。
「コーヒー=賢いとか思ってる時点ですでにもう頭悪くないか?」
丁寧にコーヒーを飲む星宮を見ながら、ちるるるーちるるるーとメロンソーダを啜っていると。
「あ、そうそう。部長は私がやるので。君は副部長をよ☆ろ☆し☆く☆」
星宮はばちこんとウインクを決めてくる。
「随分勝手だな。ま、別にいいけど」
あなた部長とかそういうの好きそうだもんね。俺もこれには不満はない。
実は副部長という役職は一番暇だったりする。やることといえば部長の代打くらいで、それ以外はまるで出番がないのだ。
特に仕事を与えられず、こちらも仕事を欲さずにただ組織に属するだけの、言わば人数合わせ。出社してから退社するまでの約八時間、パソコンとにらめっこしながら一人でマインスイーパーをプレイしているようなものである。とにかく暇で楽。
「あとー、記録と会計の仕事も君がやるってことで」
「それ実質ほぼ全部俺じゃねぇか……」
「え―別にいいじゃーん。私、料理以外で細かいことやるの無理なんだよぉ」
星宮はぐだぐだ言いながらコーヒーを飲む。
「俺が記録と会計をするなら、星宮は何するんだよ」
星宮は人差し指を顎に当てて。
「マスコット的な? ほら、私かわいいから」
「うわぁー、うざいなー」
「ま、細かいことはきにせずに、ゆらゆら楽しくいきましょうや」
「おい、お前なんかいい事言ったっぽくして誤魔化そうとしてるだろ」
ぺろっと舌を出す彼女を見て、ひとつ物申してやろうと思ったのだが、それを察知したかのようにコーヒーを一気に飲み干し、荷物をまとめ始めた。
「そろそろ帰ろ。私まだ春休みの課題終わってないの。あ、割り勘でいいよね?」
春休みは既に終わっている件について。
言いたいことはたくさんあったが、星宮の問いにこくりと頷いて席を立った。
星宮はなぜかドヤッと伝票をレジに差し出す。レジに金額が表示されると、なにやらごそごそポケットや鞄をまさぐって一言。
「……あっ。財布学校に忘れちゃった」
「おい」
二人分の飲食代は、俺の財布に大打撃を与えたのだった。
…………高いには理由があるんだなぁ。
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