12 / 30
第12話 当身投げの秘密
しおりを挟む
「なにいいい⁉」
「レイカっち、それはいくらなんでも、無茶じゃ⁉」
戸惑いを見せる、ディック・パイソンとサーヤを放って、イズナは敵の頭領カズマと向かい合う。
「どうじゃ? この条件で引き受けるか?」
「わけわからねーな。お前が勝った時の条件はそれでいいのか? そこのレスラーのオッサンなんて、幹部の誰かをぶつければ、瞬殺できるぜ」
「さて、どうかのう」
ニヤニヤと、イズナは挑発的な笑みを浮かべている。
「オーケー、いいぜ。その条件で戦ってやるよ。ただし、負けたら、マジで俺の女になってもらうぜ」
「二言はない」
「90秒一本で勝負だ。どちらかの体力ゲージが切れれば、その時点で決着。時間制限の時により体力ゲージが削られているほうの負け。いいな?」
「よかろう。始めようかの」
さっそく、コンピュータの音声が流れてきた。
『レディ、ファイッ!』
戦い開始の合図とともに、カズマは先制攻撃を仕掛けてきた。
体に巻き付けてある鎖を振り回すと、イズナに向かって投げつけてくる。
「絶対回避」で鎖攻撃を避けたイズナは、そこから、カウンターで当身投げを発動させようとした。
ところが、出来ない。
鎖を掴んだところで、動きは止まってしまった。
「ぬう! この攻撃に対しては、当身投げが出来ぬのか!」
「ハッハァ! 残念だったな! お前の戦法は研究させてもらったぜ!」
「なんと⁉」
「マグニを倒した時の映像と、そこのディック・パイソンと戦った時のアーカイブを、密かに見ていたんだよ! お前の強さは、当身投げにある! だったら、それを使わせなければいいだけだ!」
さらにもう一本の鎖をカズマは飛ばしてきた。
それもまた、イズナは回避したが、気付かぬうちに鎖が脚に絡みついている。
「ぬ⁉」
「そして、これが、俺の攻略法! 鎖で身動き取れない状態になったら、そのチートスキルも発動しようがないだろ!」
ジャッ! と三本目の鎖が飛んでくる。
鎖は、イズナの胸部に絡みついた。豊満な乳房が締め上げられ、プルンと揺れる。ダメージを受けることは避けられたものの、それでもおっぱいを締めつけられる痛みは伝わってくる。
(いかんな、わしの体力は1じゃ! 一発でも喰らえば負け確定になる!)
「そーら! ここからどんどん攻めるぜ!」
さらに二本の鎖をカズマは飛ばしてくる。
イズナは、今度は身動きが取りづらい状態ながら、なんとか回避したが、鎖は体に巻きつき、さらに動きを封じてきた。
(このままでは負けてしまう!)
一方的に攻撃を喰らい、さらには当身投げも通用しないとなれば、かなり詰みに近い。
それでも、イズナは前へと飛び出した。
「おっと、そっちから仕掛ける気か⁉」
カズマは余裕の表情で、あえて胸を開いて、イズナの攻撃を受けようとする。
「来いよ! お前の攻撃力がゴミみたいなもんだって、俺は知ってるんだよ! 何発喰らっても怖くねーな!」
「そうか、では、遠慮なくいかせてもらうぞ」
宝条院レイカのスピードは999。
キンッ! と鋭い音を発して、一瞬にして、カズマの懐へと距離を詰めた。
ドドドドド! 高速連打でパンチとキックの嵐をお見舞いする。
「うおお⁉」
カズマの体力ゲージが、1%程度であるが、削り取られた。
「ハッ! やるじゃねーか!」
「それでいいのかのう」
「何がだ!」
「制限時間までに、より体力ゲージを削ったほうの勝ち、なのじゃろう? わしは無傷、お主はダメージを負った。このまま、わしが逃げ続ければ、わしの勝ちじゃが」
「あっ」
カズマがわざと攻撃を受けたのは、まさかの考え無しの行動だった。
「くそっ! だったら、当ててやるよ! お前はまだ、俺の鎖に絡みつかれているんだからなあ!」
ギュンッ! と勢いよくカズマは鎖を引っ張り、イズナの体を空中高くへと投げ上げた。そこから、さらに鎖を操作して、イズナのことを地面に叩きつけようとする。
が、イズナは空中で鎖を蹴って、方向転換すると、落下位置を調整し、まっすぐカズマの頭部に向かって落ちながら蹴りを放った。
微弱なダメージ。それでも、確実にカズマの体力ゲージをまた削り取った。
「うおおお! ちょこまかと、うっとうしい奴だな!」
ついにぶち切れたカズマは、鎖を使うのを忘れて、直接イズナに殴りかかった。
「いまじゃ!」
カズマのパンチに対して、イズナは当身投げを発動させる。
一瞬の交差の後、攻撃を放ったはずのカズマは、宙へと吹っ飛ばされていた。
「なあにい⁉」
驚くカズマのことを、イズナは空中でキャッチして、必殺の投げ技・螺旋蛇を炸裂させた。
頭から地面に叩きつけられたカズマの体力ゲージが、一気に大幅に減る。
だが、まだ削りきるところまでいかない。
(なるほど、当身投げで、一撃で倒せる時と、そうでない時の条件がわかったぞ)
相手の攻撃の勢いを利用する当身投げは、おそらく、このゲーム世界においては、相手の技の推定ダメージ値と比例して、威力が大きくなるのだろう。
つまり、相手がダメージ100の必殺技を放ったなら、当身投げもまた100の威力になる。ダメージ1なら、当身投げは1の威力。しかも、同じダメージ値ではなく、どうやら倍増以上の計算式で、ダメージを与えるようだ。
だから、マグニや雷虎の時は一撃で倒せたが、ディック・パイソンやカズマは一撃では倒せなかったのである。
(その理屈さえわかれば、だいぶ戦いやすくなるのう)
ともあれ、この試合、勝敗はすでに決していた。
90秒が経ち、結果が出た。
『レイカ、WIN!』
勝者の名がコールされた瞬間、カズマは頭を抱えて「うおおお!」と悔しがり、その仲間達も悲鳴に近い叫び声を上げた。
「レイカっち、それはいくらなんでも、無茶じゃ⁉」
戸惑いを見せる、ディック・パイソンとサーヤを放って、イズナは敵の頭領カズマと向かい合う。
「どうじゃ? この条件で引き受けるか?」
「わけわからねーな。お前が勝った時の条件はそれでいいのか? そこのレスラーのオッサンなんて、幹部の誰かをぶつければ、瞬殺できるぜ」
「さて、どうかのう」
ニヤニヤと、イズナは挑発的な笑みを浮かべている。
「オーケー、いいぜ。その条件で戦ってやるよ。ただし、負けたら、マジで俺の女になってもらうぜ」
「二言はない」
「90秒一本で勝負だ。どちらかの体力ゲージが切れれば、その時点で決着。時間制限の時により体力ゲージが削られているほうの負け。いいな?」
「よかろう。始めようかの」
さっそく、コンピュータの音声が流れてきた。
『レディ、ファイッ!』
戦い開始の合図とともに、カズマは先制攻撃を仕掛けてきた。
体に巻き付けてある鎖を振り回すと、イズナに向かって投げつけてくる。
「絶対回避」で鎖攻撃を避けたイズナは、そこから、カウンターで当身投げを発動させようとした。
ところが、出来ない。
鎖を掴んだところで、動きは止まってしまった。
「ぬう! この攻撃に対しては、当身投げが出来ぬのか!」
「ハッハァ! 残念だったな! お前の戦法は研究させてもらったぜ!」
「なんと⁉」
「マグニを倒した時の映像と、そこのディック・パイソンと戦った時のアーカイブを、密かに見ていたんだよ! お前の強さは、当身投げにある! だったら、それを使わせなければいいだけだ!」
さらにもう一本の鎖をカズマは飛ばしてきた。
それもまた、イズナは回避したが、気付かぬうちに鎖が脚に絡みついている。
「ぬ⁉」
「そして、これが、俺の攻略法! 鎖で身動き取れない状態になったら、そのチートスキルも発動しようがないだろ!」
ジャッ! と三本目の鎖が飛んでくる。
鎖は、イズナの胸部に絡みついた。豊満な乳房が締め上げられ、プルンと揺れる。ダメージを受けることは避けられたものの、それでもおっぱいを締めつけられる痛みは伝わってくる。
(いかんな、わしの体力は1じゃ! 一発でも喰らえば負け確定になる!)
「そーら! ここからどんどん攻めるぜ!」
さらに二本の鎖をカズマは飛ばしてくる。
イズナは、今度は身動きが取りづらい状態ながら、なんとか回避したが、鎖は体に巻きつき、さらに動きを封じてきた。
(このままでは負けてしまう!)
一方的に攻撃を喰らい、さらには当身投げも通用しないとなれば、かなり詰みに近い。
それでも、イズナは前へと飛び出した。
「おっと、そっちから仕掛ける気か⁉」
カズマは余裕の表情で、あえて胸を開いて、イズナの攻撃を受けようとする。
「来いよ! お前の攻撃力がゴミみたいなもんだって、俺は知ってるんだよ! 何発喰らっても怖くねーな!」
「そうか、では、遠慮なくいかせてもらうぞ」
宝条院レイカのスピードは999。
キンッ! と鋭い音を発して、一瞬にして、カズマの懐へと距離を詰めた。
ドドドドド! 高速連打でパンチとキックの嵐をお見舞いする。
「うおお⁉」
カズマの体力ゲージが、1%程度であるが、削り取られた。
「ハッ! やるじゃねーか!」
「それでいいのかのう」
「何がだ!」
「制限時間までに、より体力ゲージを削ったほうの勝ち、なのじゃろう? わしは無傷、お主はダメージを負った。このまま、わしが逃げ続ければ、わしの勝ちじゃが」
「あっ」
カズマがわざと攻撃を受けたのは、まさかの考え無しの行動だった。
「くそっ! だったら、当ててやるよ! お前はまだ、俺の鎖に絡みつかれているんだからなあ!」
ギュンッ! と勢いよくカズマは鎖を引っ張り、イズナの体を空中高くへと投げ上げた。そこから、さらに鎖を操作して、イズナのことを地面に叩きつけようとする。
が、イズナは空中で鎖を蹴って、方向転換すると、落下位置を調整し、まっすぐカズマの頭部に向かって落ちながら蹴りを放った。
微弱なダメージ。それでも、確実にカズマの体力ゲージをまた削り取った。
「うおおお! ちょこまかと、うっとうしい奴だな!」
ついにぶち切れたカズマは、鎖を使うのを忘れて、直接イズナに殴りかかった。
「いまじゃ!」
カズマのパンチに対して、イズナは当身投げを発動させる。
一瞬の交差の後、攻撃を放ったはずのカズマは、宙へと吹っ飛ばされていた。
「なあにい⁉」
驚くカズマのことを、イズナは空中でキャッチして、必殺の投げ技・螺旋蛇を炸裂させた。
頭から地面に叩きつけられたカズマの体力ゲージが、一気に大幅に減る。
だが、まだ削りきるところまでいかない。
(なるほど、当身投げで、一撃で倒せる時と、そうでない時の条件がわかったぞ)
相手の攻撃の勢いを利用する当身投げは、おそらく、このゲーム世界においては、相手の技の推定ダメージ値と比例して、威力が大きくなるのだろう。
つまり、相手がダメージ100の必殺技を放ったなら、当身投げもまた100の威力になる。ダメージ1なら、当身投げは1の威力。しかも、同じダメージ値ではなく、どうやら倍増以上の計算式で、ダメージを与えるようだ。
だから、マグニや雷虎の時は一撃で倒せたが、ディック・パイソンやカズマは一撃では倒せなかったのである。
(その理屈さえわかれば、だいぶ戦いやすくなるのう)
ともあれ、この試合、勝敗はすでに決していた。
90秒が経ち、結果が出た。
『レイカ、WIN!』
勝者の名がコールされた瞬間、カズマは頭を抱えて「うおおお!」と悔しがり、その仲間達も悲鳴に近い叫び声を上げた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる