幻想世界のバニーガールがスキル「ギャンブル無敗」で思うがままに人生を謳歌する、そんなちょっとエッチな物語

逢巳花堂

文字の大きさ
上 下
95 / 102

第90話 ドラゴンレースに向けての準備

しおりを挟む
 カジノの中庭に行くと、ちょうど、ミカがブランとノワールの世話をしてくれているところだった。大きなブラシを使って、毛並みを整えている。時おり、ノワールがブランにちょっかいをかけようとするのを、「こらっ」とミカは注意する。

 ニハルはライカと一緒に、ミカに近寄り、声をかけた。

「やっほー、ミカちゃん。ちょっと頼みがあるんだけど」
「はい、なんでしょう?」

 首を傾げるミカに、ニハルは、ドラゴンレースのことを説明し、ミカの協力が必要となってくる旨を話した。

「わ、私に、ノワールの操縦なんて、出来るんでしょうか」

 ノワールの騎手を頼まれたミカは、動揺で目を泳がせながら、そう自信なさげに言ってきた。

「出来る出来ないじゃなくて、やらないといけないの!」
「ひっ、ごめんなさい!」

 ライカにきつく言われて、ミカは涙目で縮こまりながら、謝った。

 ニハルはそんなミカの肩を、優しくポンポンと叩く。

「大丈夫、そんなに気負わなくていいから」
「で、でも、大事なレースに、私が操縦者で務まるとは思えません」
「だけど、ノワールの世話は出来ているじゃない」

 実際、荒くれドラゴンであるノワールをきちんと手懐けて、おとなしくさせている。ミカだからこそ出来る芸当だ。

「お願い、ミカちゃん。あなたの力が必要なの」

 両手を合わせて頼みこんでくるニハルの強引さに、ミカはとうとう押し負けた。まだ、戸惑いを隠せずにいるようだが、その目には少しばかり決意の色が滲んでいる。

「わかりました。私でよければ、お手伝いさせていただきます」
「やった! ありがとう! それじゃあ、さっそくなんだけど……」
「さっそく?」
「ドラゴンレースの会場に、今から向かいたいの。ノワールを飛ばしてくれる?」
「えええええ⁉ 今から、ですか⁉」

 ニハルの急過ぎる要求に、ミカは目を丸くしたが、しかし、一度引き受けた以上は断りきれないと思ってか、ぎこちないながらも、小さく頷いた。

「じゃ、じゃあ、頑張ってみますけど……ニハルさんも、ノワールに乗るんですよね?」
「うん。どうすればいい?」
「座席を作る必要があります。ちょうど、私がブランに乗ってきた時に使った鞍があるので、それを参考に同じものを作ってもらえればと。あ、ブランにも二人乗るんでしたね。だったら、あと三つ作らないといけません」
「わかった! そういうの作れそうな人、探しておくね!」

 ニハルは元気よく言って、カジノの中に戻っていった。

 後に残されたミカは、その場にとどまっているライカに向かって、ため息をつきながら思うところを言う。

「あの人って、いつも、あんな感じなんですか……?」
「おねーさまは勢いがいいから。でも、まったくの考え無し、ってわけじゃないから、安心して」
「ちなみに、ドラゴンレースは、二日後なんですよね」
「そうね。本当なら、今日一日は乗り方の練習に時間をかけたかったところだけど、座席作りが必要なら、そっちを優先するしかないわ」
「会場まで、どれくらい時間かかるんでしたっけ」
「えっと、たしか天帝から送られてきた手紙には……」

 ライカは、ドラゴンレースの案内を広げて、再確認してみた。

「ここから北北東に行ったところにある、ダマヴァント山脈がスタート地点みたい。どれくらいで着けそう?」
「ブランとノワールの飛行速度なら、半日もしないで到着すると思います。レースの開始時間は?」
「正午ぴったり」
「じゃあ、あさっての朝一番に出れば、間に合うと思います」
「だったら、今日は座席作りに専念して、明日は一日、飛行の練習をするっていう感じね」

 そこで、ふと、ライカは空の様子が気になって、上空を見上げてみた。

 雲ひとつない晴天。陽光がまぶしい。今日であれば絶好の飛行日和であるが、果たして、明日はこの晴れ空が続いているのだろうか。

「とにかく、ブランとノワールの体調管理をしっかりしておいてね」
「はい、最善を尽くします」

 ライカの言葉に、ミカは生真面目にも直立の姿勢を取って、敬礼をするのであった。

 ※ ※ ※

 幸い、カジノの客に何人か物作りの得意な職人がいたので、日が落ちる頃までにはブランとノワール用の鞍を作ることが出来た。

 暗くなった中庭に、篝火が焚かれている。ブランとノワールの巨体が赤く照らし出され、その影がカジノの外壁に映し出される。

 明日の飛行練習まで、余計なストレスを与えないため、ミカはまだ鞍を着けない。ただ、いきなり装着するとパニックを起こしかねないので、ブランとノワールの鼻先に、出来たてほやほやの鞍を置いてやる。

 ブランとノワールは、興味深げな眼差しで、鞍の匂いを嗅いでいる。ひと晩、こうして慣れさせておけば、いざ鞍を着けても問題はないだろう。

「ドキドキするね」

 ニハルは、ミカと並んで、ブランとノワールを眺めながら、そう囁くように言った。

 ミカはやや緊張の面持ちで、静かな声音で「はい」と返す。

 その時、ニハルの鼻先に、ポツンと一滴の水が降ってきた。

「雨……?」

 上空を見れば、星々は隠れており、一面真っ黒い雲に覆われている。

「まさか……降るんでしょうか?」

 ミカは心配そうに呟いた。

 その恐れは的中した。

 翌朝、砂漠一帯を、嵐のような大雨が襲ってきたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...