幻想世界のバニーガールがスキル「ギャンブル無敗」で思うがままに人生を謳歌する、そんなちょっとエッチな物語

逢巳花堂

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第89話 ドラゴンレースに誰が出る?

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「な、なぜじゃ! なぜ、こんなにタイミング良く、雨が……!」
「ふふふ、私ってばラッキー♪」

 本当は「ギャンブル無敗」のスキルのお陰だが、ニハルはもちろんそのことを伏せている。

 だから、ボスコロフは何が起きているのかわからずパニックになっており、ライカやミカも、あまりにも神がかった展開に驚いている。

 最後の抵抗とばかりに、雨に打たれてビショビショになりながらも、ボスコロフはブランの前に立ち、両腕を大きく広げた。

「こ、こんなことで、わしのドラゴンを渡してたまるか! 絶対に死守するぞ!」
「あれー? 約束破るの?」
「当然じゃ! こんなくだらん賭け事で、珍しいドラゴンどもを手放したくはない!」

 ニハルはクスッと笑う。

 白いレオタードが雨に濡れ、しっとりと湿っている。胸の谷間を滴が伝う。実に悩ましげな肢体を前に、ボスコロフはごくりと生唾を飲み込んだ。

 そんなボスコロフに対して、ニハルは妖艶な眼差しを送り、パチリとウィンクした。

「でも、あなたは最終的に、約束を守ってくれる。そうでしょ?」
「誰が守るか!」

 ニハルは前へと進み出た。ボスコロフの後ろにいる、ブランへ向かって、どんどん歩を進めていく。

「く、来るな!」

 ボスコロフは怒鳴ったが、構わず、ニハルは前へ出る。

 そして、とうとう、ボスコロフの横をすり抜けた。

「え……⁉」

 なぜか一歩も動けなかったボスコロフは、仰天して、目を丸くしている。ニハルのことを食い止めようと思っていたのに、何も出来なかった。

 ブランの前に立ったニハルは、白い毛で覆われた頭を、優しく撫でた。

 キュウウン、と愛くるしく鳴き、ブランはそっと目を閉じる。

「この子も、私のところに来たいって♪」

 そのニハルの言葉に、ボスコロフは文句をつけようとしたが、どういうわけか声がかすれて出てこない。

 やがて出てきたのは、自分でも信じがたいひと言だった。

「わ、わかった……」

 一度声に出してしまうと、思考もそちらへ流れてしまう。本心では、せっかく手に入れたドラゴン達を手放したくない、と思っているのに、その気持ちを上書きするように、ニハルへ譲渡してしまうことを考えてしまっている。

 こうして、全てのドラゴン達は、ニハルが所有することとなった。


 ※ ※ ※


 ドラゴン達のほとんどは、コリドールへと移送された。

 何人か、ドラゴンを連れてきた者達を金で雇ったので、彼らが世話をしてくれる。いまのところ、このたくさんのドラゴン達をどう生かすかは考えていないが、近い将来役に立つ日が来るだろう、とニハルは考えている。

 白いドラゴン・ブランと黒いドラゴン・ノワールは、カジノの中庭で飼われることとなった。ドラゴンレースの日まで、ここでミカの世話を受けることとなる。

 問題は、どっちのドラゴンをレースに出すか、ということであるが……

「ブランもノワールも、どっちもレースに出そうと思うの」

 幹部達を集めての緊急会議で、ニハルはそう宣言した。

「どっちも⁉」

 と会議室に響き渡るほどの大声で、驚きの声を上げたのは、親衛隊のアイヴィーである。

「おいおい、何を言ってんだよ。二体も出していいなんて決まりはあったか?」
「逆に、二体出しちゃいけない、って決まりもないでしょ」

 確かに、そこまでの細かい条件は付いていなかった。

 それにしても、他にも問題はある。

「乗り手はどうすんだよ。ドラゴンを動かせるのは、チェロ一人くらいだろ」
「もう一人いるよ」
「誰だよ」
「ミカちゃん。あの子はドラゴンライダーの家系だし、きっと、上手に乗りこなせると思うの。もう相談はしてて、オッケーって言ってくれたよ」
「本人がいいって言うのなら、別に構わないけどさ」

 アイヴィーは引っ込んだが、次にライカが懸念点を述べてきた。

「でも、大事な勝負をするのに、会ったばかりの子達に任せるのは大丈夫なの? おねーさま」
「もちろん、指揮する人も乗ったほうがいいと思う」

 そこで、ニハルは自身の考えを告げた。

「おとなしくていい子のブランは、チェロが操って、その指揮はイスカ君にとってもらう。暴れん坊のノワールは、ミカちゃんが操って、指揮は私がとる。それでどうかしら」
「ど、どうかしら、って⁉ おねーさまはダメでしょ! ドラゴンに乗るってことは、空を飛ぶってことなのに、そんな危険なレースに自ら出るなんて!」
「だけど、砂漠の女神マカーマラは、代理として私を指名したんだよ。私は絶対にレースに出たほうがいいと思うんだ」
「私は反対です!」

 顔を真っ赤にして、ライカは、なんとかニハルのことを止めようとする。

 他の者達も同意見のようで、口々に、それは無謀だ、とか、ニハルが出る必要はない、とか言って、考え直すように求めてくる。

 だけど、イスカだけは別だった。

「僕は、ニハルさんの意見に賛成だよ。あの砂漠の女神は、後出しでものを言ってくることが多い。もしかしたら、ニハルさんがレースに参加していなかったら、約束を違えたとか言って、制裁を加えてくるかもしれない」

 そう言われてみると、確かに砂漠の女神は信用できないところが多い。

 後から文句を言われて、それに不満を抱いたとしても、相手は神様だ。逆らいようがない。

「……わかったわ。認めるしかなさそうね」

 渋々、といった様子で、ライカはニハルの参戦を許すのであった。
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