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第81話 どなたかドラゴンと話せる人はいませんかー⁉

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「……わかったわ、その話、呑むしかなさそうね」

 渋々、ニハルは砂漠の女神の命令に従った。

「さすがニハルね♪ それじゃあ、天帝から次の報せが来るまで、仲間をよく吟味しておいてね」
「どういうこと?」
「おそらく、天帝は団体戦を持ちかけてくると思うわ。どんな勝負を出してくるかわからないけれど、神々の代理者一人だけに争わせることはしないと思う。いまのうちに、どの仲間がどう役に立つか、選んでおいてちょうだい」

 そして、砂漠の女神の姿は徐々に薄くなっていく。もう去ろうというのだ。

「待って! そう言えば、あなたの名前を聞いたことなかった! ちゃんと教えてちょうだい!」
「名前なんて重要かしら? まあいいわ、マカーマラよ」

 それだけ言い残して、砂漠の女神マカーマラはいなくなってしまった。

 場は静まり返っている。とんでもないことに巻き込まれ始めた。

 とりあえず、マカーマラに言われた通り、これからの戦いに備えて人選を行おうとしていたら、窓から一羽のオウムが飛び込んできた。

「天帝サマカラノオ報セデス!」

 そう言って、オウムは咥えていた手紙をポイッとテーブルの上に投げ出すと、すぐにまた外へと飛び出していった。

 ライカが丸まっている手紙を拾い、広げて、中を読む。

「ええと……最初の勝負は、レースですって、お姉様」
「レース? 競争ってこと?」
「しかも、ドラゴンに乗って」
「ドラゴンレース⁉ 待ってよ、そんなの、誰が出来るっていうの⁉」

 ニハルはこの場にいる全員を見渡したが、誰も首を縦には振らない。

「上位に入賞した順に、ポイントが割り振られる。下位三つは、そこで脱落。とりあえず、上位を目指せばいいみたいね」
「最終的に、ポイントの総獲得数が多いところの優勝、ってことかな?」
「そういうことみたいよ、お姉様」
「だけど……ドラゴンなんて、誰が操れるの?」
「とりあえず、私達の仲間を一度整理してみましょうよ」

 ライカの勧めに応じて、ニハルは一人一人名前を書き出し、簡単に特徴も記していく。

 イスカ:東国の剣士。戦闘は大の得意で、知恵もある、頼りになる私の恋人!

 アイヴィー:元盗賊。私の親衛隊長。鞭を自在に操り、戦いは得意で、頭の回転も早く、機転が利く。やっぱり頼りになる人!

 ライカ:私の参謀。頭はみんなの中で一番いい。でも、直接の戦闘は不向き。

 クイナ:イスカのお師匠さん。あまり直接見たことないけど、戦うのは一番強いはず。直接戦闘は彼女に任せるべき?

 ポチョムキン:うちの料理長。筋肉がすごい。料理が上手。戦うのも得意。

 ネネ:マザーバニー。巨人族の子。相手の心を読むスキルを持っているから、とても強い。

 レジーナ:ディーラーバニー。ポーカーが得意。心理戦となると強いけど、直接戦闘はダメだと思う。

 クークー:ディーラーバニー。麻雀が得意。拳法が使えるから、普通に戦っても強い。

 ユナ:ガルズバル騎士団の騎士。スキル「フラッシュ・ダンス」を駆使する、神速の持ち主。一応敵だけど、味方になってくれたらかなり心強い。

 オルバサン:私の従兄。メルセゲル王国の血筋を引く人。ソードダンサー。信頼できる、強い人。

「うわあ……見事に、戦闘が得意な人ばっか……」

 ニハルがため息をつけば、ライカもまたくたびれた様子でかぶりを振った。

「これは、どう考えても、ドラゴンを操るなんて無理ね……」
「ねえ、ライカ。どんな人なら、ドラゴンレースに対応できると思う?」
「普通の人種では無理だと思います。ドラゴンの血を引く竜人か、伝説の職業ドラゴンライダーか、せめて獣の言葉を話せる獣人でないと……」

 その時、誰かが「あっ」と声を上げた。

 ニハルが声のしたほうを見ると、帝国騎士のユナが、何かを思い出した様子で口元に手を当てている。

「ユナ、何か心当たりがあるの?」
「ちょうど、コリドールの平定をしている時に、民の代表のトールさんに、最近仕え始めたという獣人も参戦してくれたんです。彼女の名前はチェロ。ウェアキャットです」
「獣人!」

 ニハルとライカは顔を見合わせた。なんて運がいいのだろうか。

「ユナ! すぐに、その子を呼んできて!」
「あ、はい、わかりました!」

 それから日が暮れるまでの半日を費やして、ドラゴンレースについての対策を練った。とは言え、情報はほとんど無いから、全ては推測でしかない。

 もう話すネタも尽きてきたところで、ユナが、チェロを連れて戻ってきた。

「なんだニャ~? 急に呼び出して」
「あなたがチェロね! お願い、力を貸してほしいの!」
「ニャニャ?」
「さっそくだけど、ドラゴンと会話することって出来る?」

 うーん、とチェロは腕組みして唸り始めた。

「出来なくはないニャ。ドラゴン語は役に立つからと、お父さんにちっちゃい頃から教わってるニャ」
「最っ高!」
「だけど、もしもドラゴンと何か話せというのなら、あたしはお断りだニャ」
「え、なんで」
「あいつらはプライドが高くて、やり取りするのは本当に骨が折れるニャ。あまり話しはしたくないのニャ」
「そこをなんとか、お願い!」

 両手を合わせて、ニハルはチェロに頼みこむ。

 何度か問答を繰り返した後、ようやくチェロは折れてくれた。

「わかったニャ。あたしに出来ることなら手伝うニャ。で、何をするのニャ?」
「ドラゴンレースに出てほしいの!」
「はぁ⁉」

 さすがに、その話は予想していなかったのか、チェロは思いきり素っ頓狂な声を上げた。
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