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第63話 ニハルの誘い
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コリドールに到着してすぐに、ユナはニハルのもとへと連れていかれた。
ニハルの邸、食堂へと通され、端の席に座らされる。相変わらず、ジャヒーの髪の毛でユナの手は拘束されている。
しばらく待っていると、扉が開き、ぞろぞろとバニーガールの一団が入ってきた。
(わ、本当にバニーガール達が統治してるんだ)
話には聞いていた。
カジノを陥落させた後、ニハルに従って、何人かのバニーガール達はコリドールへと移ったと。
彼女らは帝国の魔術師によって、バニースーツが脱げない呪いにかかっている。だから、コリドールに来ても、相変わらずバニーガールのままでいる。穏やかな田舎の土地、大きなお屋敷の中で、何人もバニー達が集まっている光景は、一種異様である。
それにしても――と、ユナは目のやり場に困っている。
バニースーツはとてもエッチだ。基本レオタード姿で、露出度は高い。蝶ネクタイや、カフス付きの袖などはあるものの、かえってそのフォーマルな彩りが、余計にフェティッシュな色気を醸し出している。レオタードのお尻の部分には、白くフサフサしたバニーの尻尾がついている。そのチャーミングさもまた、お尻の可愛らしさを強調していて、魅力的だ。
(あんな格好してて、恥ずかしくないのかな……)
思わず赤面して、目を逸らしていると、遅れて褐色の肌の少女が食堂へと入ってきた。
名前を聞かなくてもわかる。
彼女こそが、帝国に目をつけられているバニーガール、ニハルだ。
「初めまして! よろしくね♪」
自分達と敵対する騎士団のユナに対して、ニハルは実に気さくに声をかけてきた。
ユナは少々面食らいながらも、相手のペースに乗せられてはいけない、とばかりに、プイ、とそっぽを向いた。しかし、こういうふてぶてしい態度を取るのは慣れていない。内心では、向こうを怒らせていないかと、ちょっとドキドキしている。
「さ、みんな座って♪ それと、ジャヒー、ここまでありがとうね。もうその子、解放してもいいよ」
「え?」
動揺して、思わず声を出してしまう。
なぜ、このタイミングで、自分を自由にするのだ? 戦闘力で言えば、ここにいる全員を素手で相手にしても勝てる自信が、ユナにはある。そんなユナの強さを、ニハルは知らないのだろうか。知らないからこそ、こんな無謀なことをするのだろうが、それにしても、大胆にもほどがある。
ジャヒーは、ニハルの命令通り、髪の毛の拘束を解いた。
シュルシュルと、髪の毛が外れていき、ユナは自由になった。
いまだ! と思う心と、いや待って、と抑える心がせめぎ合う。
最終的に、ユナは、一旦は様子を見ることにした。単純に、興味があった。ニハルという人物に。彼女が何を考えているのか、自分に対して何を話そうとしているのか、その内容を見極めたい、と思っていた。
「えっと、名前はユナちゃんだっけ」
「そうよ」
「可愛い名前♪ でも、騎士団でも、トップクラスに強いんだってね。すごいね」
「私はトップなんかじゃない。一番強いのはアーフリード様。あの人と比べたら、私なんてまだまだ足元にも及ばない」
「ううん、その騎士団長を除けば、あなたが一番だって聞いてるよ」
「でも……私は……」
ユナは口ごもった。一番が聞いて呆れる。砂上船の上で、「悪魔」と戦って、あっさり負けてしまった。自分の力を過信していたわけではないが、まったく歯が立たなかったことに、少なからずショックを受けている。
「それでね、さっそく本題に入りたいんだけど……」
と、ニハルは他のバニーガール達の顔も窺ってから、ジッとユナのことを見つめてきた。
そして、パンッ! と両手を合わせて拝むようなポーズを取り、頭を下げる。
「お願いがあるの! バニーガールになってくれない⁉」
シン……と静まりかえる室内。
他のバニーガール達は、そんな話を少しも聞かされていなかったのだろう。
「えええええ⁉」
ツインテールの、この中で一番年下と思われるピンク色のレオタードを着たバニーガールの少女が、素っ頓狂な叫び声を上げた。
「お、おねーさま⁉ なに言ってるの⁉ 誘うにしても、相手を見てよ! あのユナよ! ガルズバル騎士団の第一隊隊長、ユナよ!」
「いいじゃん♪ そんなすごい子が、バニーになってくれたら、かなり箔がつくよ♪」
「だめー! だめだめだめ! 帝国にこれ以上喧嘩を売ってどうするの⁉ 絶対にだめ!」
「だけどさあ、カジノの経営はどうするの? コリドールにけっこうバニーガールが来ちゃったし、ルドルフに雇われてた兵士達もけっこう去ってったしで、人手不足なんだよ。この子が騎士団最強だって言うのなら、バニーガールやるついでに、バウンサー(用心棒)もやってくれたら、一石二鳥じゃん♪」
「他を当たって! 他を! ユナは絶対になし!」
「もう求人しまくってるじゃん。それでも、バニーガールになりたい、なんて子は、ほとんどいないでしょ」
「ユナだって、断るに決まってるでしょ!」
ポカーン……と、ユナは目をまん丸にして、固まっている。
いったい、ニハルはなにを言っているのだ?
バニーガールのスカウト? まさかの自分を? 騎士団の隊長であるこの自分に、あんなエッチで恥ずかしいコスチュームを着て、カジノで男達に愛想を振りまけというのか?
「な、なめないでよね!」
顔を真っ赤にして、ユナは椅子から立ち上がった。そのまま勢いで、長テーブルを挟んで向い側にいるニハルへと、突進しようとしたが、すかさずジャヒーがスキルで髪の毛を伸ばしてきて、ユナの体を縛ってしまった。再び拘束され、身動き取れなくなる。
「こ、殺して! そんな、バニーガールなんて辱めを受けるくらいなら、死んだほうがマシよ!」
「もお、そんなこと言わないの」
ニハルは肩をすくめて、席を立つと、ユナのほうへと歩み寄ってきた。
ニハルの邸、食堂へと通され、端の席に座らされる。相変わらず、ジャヒーの髪の毛でユナの手は拘束されている。
しばらく待っていると、扉が開き、ぞろぞろとバニーガールの一団が入ってきた。
(わ、本当にバニーガール達が統治してるんだ)
話には聞いていた。
カジノを陥落させた後、ニハルに従って、何人かのバニーガール達はコリドールへと移ったと。
彼女らは帝国の魔術師によって、バニースーツが脱げない呪いにかかっている。だから、コリドールに来ても、相変わらずバニーガールのままでいる。穏やかな田舎の土地、大きなお屋敷の中で、何人もバニー達が集まっている光景は、一種異様である。
それにしても――と、ユナは目のやり場に困っている。
バニースーツはとてもエッチだ。基本レオタード姿で、露出度は高い。蝶ネクタイや、カフス付きの袖などはあるものの、かえってそのフォーマルな彩りが、余計にフェティッシュな色気を醸し出している。レオタードのお尻の部分には、白くフサフサしたバニーの尻尾がついている。そのチャーミングさもまた、お尻の可愛らしさを強調していて、魅力的だ。
(あんな格好してて、恥ずかしくないのかな……)
思わず赤面して、目を逸らしていると、遅れて褐色の肌の少女が食堂へと入ってきた。
名前を聞かなくてもわかる。
彼女こそが、帝国に目をつけられているバニーガール、ニハルだ。
「初めまして! よろしくね♪」
自分達と敵対する騎士団のユナに対して、ニハルは実に気さくに声をかけてきた。
ユナは少々面食らいながらも、相手のペースに乗せられてはいけない、とばかりに、プイ、とそっぽを向いた。しかし、こういうふてぶてしい態度を取るのは慣れていない。内心では、向こうを怒らせていないかと、ちょっとドキドキしている。
「さ、みんな座って♪ それと、ジャヒー、ここまでありがとうね。もうその子、解放してもいいよ」
「え?」
動揺して、思わず声を出してしまう。
なぜ、このタイミングで、自分を自由にするのだ? 戦闘力で言えば、ここにいる全員を素手で相手にしても勝てる自信が、ユナにはある。そんなユナの強さを、ニハルは知らないのだろうか。知らないからこそ、こんな無謀なことをするのだろうが、それにしても、大胆にもほどがある。
ジャヒーは、ニハルの命令通り、髪の毛の拘束を解いた。
シュルシュルと、髪の毛が外れていき、ユナは自由になった。
いまだ! と思う心と、いや待って、と抑える心がせめぎ合う。
最終的に、ユナは、一旦は様子を見ることにした。単純に、興味があった。ニハルという人物に。彼女が何を考えているのか、自分に対して何を話そうとしているのか、その内容を見極めたい、と思っていた。
「えっと、名前はユナちゃんだっけ」
「そうよ」
「可愛い名前♪ でも、騎士団でも、トップクラスに強いんだってね。すごいね」
「私はトップなんかじゃない。一番強いのはアーフリード様。あの人と比べたら、私なんてまだまだ足元にも及ばない」
「ううん、その騎士団長を除けば、あなたが一番だって聞いてるよ」
「でも……私は……」
ユナは口ごもった。一番が聞いて呆れる。砂上船の上で、「悪魔」と戦って、あっさり負けてしまった。自分の力を過信していたわけではないが、まったく歯が立たなかったことに、少なからずショックを受けている。
「それでね、さっそく本題に入りたいんだけど……」
と、ニハルは他のバニーガール達の顔も窺ってから、ジッとユナのことを見つめてきた。
そして、パンッ! と両手を合わせて拝むようなポーズを取り、頭を下げる。
「お願いがあるの! バニーガールになってくれない⁉」
シン……と静まりかえる室内。
他のバニーガール達は、そんな話を少しも聞かされていなかったのだろう。
「えええええ⁉」
ツインテールの、この中で一番年下と思われるピンク色のレオタードを着たバニーガールの少女が、素っ頓狂な叫び声を上げた。
「お、おねーさま⁉ なに言ってるの⁉ 誘うにしても、相手を見てよ! あのユナよ! ガルズバル騎士団の第一隊隊長、ユナよ!」
「いいじゃん♪ そんなすごい子が、バニーになってくれたら、かなり箔がつくよ♪」
「だめー! だめだめだめ! 帝国にこれ以上喧嘩を売ってどうするの⁉ 絶対にだめ!」
「だけどさあ、カジノの経営はどうするの? コリドールにけっこうバニーガールが来ちゃったし、ルドルフに雇われてた兵士達もけっこう去ってったしで、人手不足なんだよ。この子が騎士団最強だって言うのなら、バニーガールやるついでに、バウンサー(用心棒)もやってくれたら、一石二鳥じゃん♪」
「他を当たって! 他を! ユナは絶対になし!」
「もう求人しまくってるじゃん。それでも、バニーガールになりたい、なんて子は、ほとんどいないでしょ」
「ユナだって、断るに決まってるでしょ!」
ポカーン……と、ユナは目をまん丸にして、固まっている。
いったい、ニハルはなにを言っているのだ?
バニーガールのスカウト? まさかの自分を? 騎士団の隊長であるこの自分に、あんなエッチで恥ずかしいコスチュームを着て、カジノで男達に愛想を振りまけというのか?
「な、なめないでよね!」
顔を真っ赤にして、ユナは椅子から立ち上がった。そのまま勢いで、長テーブルを挟んで向い側にいるニハルへと、突進しようとしたが、すかさずジャヒーがスキルで髪の毛を伸ばしてきて、ユナの体を縛ってしまった。再び拘束され、身動き取れなくなる。
「こ、殺して! そんな、バニーガールなんて辱めを受けるくらいなら、死んだほうがマシよ!」
「もお、そんなこと言わないの」
ニハルは肩をすくめて、席を立つと、ユナのほうへと歩み寄ってきた。
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