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第58話 バニーガールの襲撃
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結果は上々だった。
最後までディマは反対の意を示していたが、ナイアーラはかなり食いついていた。
けれども、ハッキリとしたことは言わなかった。アーフリードの狙い通り、カジノへ攻め込むかどうか、その考えがあるのか、まったくわからない。あくまでもナイアーラが見せていたのは、ニハルに対する興味だけである。
「本当に、これで良かったのでしょうか?」
夜になり、宮殿内の客人用の部屋へと泊まることとなった、アーフリードとユナ。部屋に入るやいなや、ユナは、自身が不安に感じていることを、アーフリードへと率直にぶつけた。
「十分だよ。あとは、仕掛けが上手くいくかどうか、だ」
「仕掛け?」
「まさか、私がちょっと話しただけで、事が上手く運ぶとは思っていないさ。まあ、見ていてくれ。それよりも――」
と、アーフリードは、ユナの体を抱き寄せた。
「――せっかく、こんな素敵で豪華な部屋に泊めてもらえたんだ。今晩はいっぱい楽しもうじゃないか」
「もう……アーフリード様ってば……」
ユナは苦笑しながらも、アーフリードと唇を重ね合わせた。
しばらくの間、お互いにキスを堪能し続けていたが、やがてどちらともなく、ベッドへと倒れ込んだ。
「アーフリード様……私、まだ、お風呂に入ってないです……」
「お互い様だ。私だって、汗をかいたままになってる。でも、そのほうが興奮するだろう?」
「あん……エッチなんだから……」
二人は早くも服を脱ぎ捨て、下着姿になって、絡み合い始めた。荒い息づかいと喘ぎ声が、部屋の中に響き渡る。
そして、いよいよ盛り上がりを迎えたところで――
宮殿の中から、爆発音が聞こえてきた。
「え⁉ なに⁉」
ビックリしてユナは跳ね起きた。
だが、アーフリードだけは冷静でいる。
「来た。合図だ」
「合図?」
「ユナ。何を見ても、動揺しないように。あくまでも私達は、善意の第三者を装うんだ。いいな」
「えっと……? どういうことでしょう……?」
「そうだな。君には、こう命じておこうか。絶対に、何があっても、喋ってはいけない。声を出さないように。いいね?」
「は、はい……わかりました」
何がなんだかわけがわからないが、とりあえずユナは頷いた。
急いで服を着ると、二人は部屋を飛び出し、爆発音が聞こえたほうへと駆けていく。
階段を駆け上がっていき、最上階へと辿り着いたところで、ユナはふと疑問を抱いた。アーフリードは迷わずにここまで走ってきたが、なぜ、目的地がわかっているのだろうか。もしかして、爆発音に、アーフリードは関与しているのだろうか。
しかし、絶対に口をきくな、という命令だ。素直にユナは従っていた。
最上階の一番奥に、明らかに他の部屋とは異なる、華やかな装飾の扉が現れた。直感で、ユナは、そこが女王の部屋であると悟った。
扉の前には、本来であれば護衛の兵士達が立っていて然るべきだが、誰もいない。爆発音の正体を探りに、移動してしまったのだろうか。それとも、女王が人払いをしているのだろうか。人払いをしているのだとしたら、その理由は、なんとなく想像できる。
バンッ! と扉を開けて、部屋の中に飛びこむと、ちょうどベッドの上で、ナイアーラとディマが激しく愛し合っているところだった。
「な⁉ なんですか! 急に! 無礼な!」
顔を真っ赤にしたディマは、自分の裸を隠しながら、怒鳴ってきた。
寝転がっているディマの上に、騎乗位でのしかかっていたナイアーラは、汗まみれの顔を上げて、ニコリと微笑んだ。
「なんじゃ、どうした。おぬしらも、わらわに抱かれに来たのか?」
「女王陛下、お楽しみのところ悪いけど、ものすごい音が宮殿の中から聞こえた。急いで逃げたほうがいいと思う」
「ははははは! わらわが、逃げる?」
ナイアーラはニヤリと笑うと、ディマの体のあらぬところへと手を伸ばし、指を動かした。あう♡ とディマは悩ましい声を上げ、身をくねらせる。
「笑止千万! わらわは、この国の女王であり、この国で最も強き者なり。いかなる刺客であろうと、わらわの敵ではないわ!」
「ふうん。すごい自信だね。でも……そういうの、なんて言うか、知ってる?」
アーフリードは冷たい笑みを浮かべた。
「井の中の蛙、って言うんだよ」
その瞬間、部屋の壁が爆発とともに吹き飛んだ。
ポッカリと空いた穴から、サッと襲撃者が室内に飛びこんでくる。
「な⁉」
ディマが驚きの表情を見せた。
襲撃者は、バニーガールの格好をしている。黒いバニースーツだ。
それの襲撃者を見て、ユナは仰天した。相手がバニーガールであることにも驚いたが、その顔を見て、さらに衝撃を受けたのである。
バニーガールは、口元を布で覆い、あまり顔が判別できないようにしているが、ユナにはわかる。
騎士団の中でも主に密偵役として活躍している、元錬金術師の少女、トゥナだ。まさかのバニーガールの姿で、サゼフト王国の女王を直接襲撃するとは、いったい、何を考えているのだろうか。
(まさか――⁉)
この件には、アーフリードも関係しているのか、と思い、その顔を見てみると、彼女は平然とした様子でいる。トゥナには当然気付いているであろうに、そ知らぬ顔だ。
それどころか、剣を抜いて、大見得を切りながら、こう言い放った。
「やあやあ! これはまた大胆だな! サゼフト女王を狙って襲ってくるだけでなく、バニーガールの格好で戦おうとは! しかし、残念だったな! 今晩は私がここにいる! ガルズバル騎士団の団長である、この私が! 女王には指一本触れさせないぞ!」
最後までディマは反対の意を示していたが、ナイアーラはかなり食いついていた。
けれども、ハッキリとしたことは言わなかった。アーフリードの狙い通り、カジノへ攻め込むかどうか、その考えがあるのか、まったくわからない。あくまでもナイアーラが見せていたのは、ニハルに対する興味だけである。
「本当に、これで良かったのでしょうか?」
夜になり、宮殿内の客人用の部屋へと泊まることとなった、アーフリードとユナ。部屋に入るやいなや、ユナは、自身が不安に感じていることを、アーフリードへと率直にぶつけた。
「十分だよ。あとは、仕掛けが上手くいくかどうか、だ」
「仕掛け?」
「まさか、私がちょっと話しただけで、事が上手く運ぶとは思っていないさ。まあ、見ていてくれ。それよりも――」
と、アーフリードは、ユナの体を抱き寄せた。
「――せっかく、こんな素敵で豪華な部屋に泊めてもらえたんだ。今晩はいっぱい楽しもうじゃないか」
「もう……アーフリード様ってば……」
ユナは苦笑しながらも、アーフリードと唇を重ね合わせた。
しばらくの間、お互いにキスを堪能し続けていたが、やがてどちらともなく、ベッドへと倒れ込んだ。
「アーフリード様……私、まだ、お風呂に入ってないです……」
「お互い様だ。私だって、汗をかいたままになってる。でも、そのほうが興奮するだろう?」
「あん……エッチなんだから……」
二人は早くも服を脱ぎ捨て、下着姿になって、絡み合い始めた。荒い息づかいと喘ぎ声が、部屋の中に響き渡る。
そして、いよいよ盛り上がりを迎えたところで――
宮殿の中から、爆発音が聞こえてきた。
「え⁉ なに⁉」
ビックリしてユナは跳ね起きた。
だが、アーフリードだけは冷静でいる。
「来た。合図だ」
「合図?」
「ユナ。何を見ても、動揺しないように。あくまでも私達は、善意の第三者を装うんだ。いいな」
「えっと……? どういうことでしょう……?」
「そうだな。君には、こう命じておこうか。絶対に、何があっても、喋ってはいけない。声を出さないように。いいね?」
「は、はい……わかりました」
何がなんだかわけがわからないが、とりあえずユナは頷いた。
急いで服を着ると、二人は部屋を飛び出し、爆発音が聞こえたほうへと駆けていく。
階段を駆け上がっていき、最上階へと辿り着いたところで、ユナはふと疑問を抱いた。アーフリードは迷わずにここまで走ってきたが、なぜ、目的地がわかっているのだろうか。もしかして、爆発音に、アーフリードは関与しているのだろうか。
しかし、絶対に口をきくな、という命令だ。素直にユナは従っていた。
最上階の一番奥に、明らかに他の部屋とは異なる、華やかな装飾の扉が現れた。直感で、ユナは、そこが女王の部屋であると悟った。
扉の前には、本来であれば護衛の兵士達が立っていて然るべきだが、誰もいない。爆発音の正体を探りに、移動してしまったのだろうか。それとも、女王が人払いをしているのだろうか。人払いをしているのだとしたら、その理由は、なんとなく想像できる。
バンッ! と扉を開けて、部屋の中に飛びこむと、ちょうどベッドの上で、ナイアーラとディマが激しく愛し合っているところだった。
「な⁉ なんですか! 急に! 無礼な!」
顔を真っ赤にしたディマは、自分の裸を隠しながら、怒鳴ってきた。
寝転がっているディマの上に、騎乗位でのしかかっていたナイアーラは、汗まみれの顔を上げて、ニコリと微笑んだ。
「なんじゃ、どうした。おぬしらも、わらわに抱かれに来たのか?」
「女王陛下、お楽しみのところ悪いけど、ものすごい音が宮殿の中から聞こえた。急いで逃げたほうがいいと思う」
「ははははは! わらわが、逃げる?」
ナイアーラはニヤリと笑うと、ディマの体のあらぬところへと手を伸ばし、指を動かした。あう♡ とディマは悩ましい声を上げ、身をくねらせる。
「笑止千万! わらわは、この国の女王であり、この国で最も強き者なり。いかなる刺客であろうと、わらわの敵ではないわ!」
「ふうん。すごい自信だね。でも……そういうの、なんて言うか、知ってる?」
アーフリードは冷たい笑みを浮かべた。
「井の中の蛙、って言うんだよ」
その瞬間、部屋の壁が爆発とともに吹き飛んだ。
ポッカリと空いた穴から、サッと襲撃者が室内に飛びこんでくる。
「な⁉」
ディマが驚きの表情を見せた。
襲撃者は、バニーガールの格好をしている。黒いバニースーツだ。
それの襲撃者を見て、ユナは仰天した。相手がバニーガールであることにも驚いたが、その顔を見て、さらに衝撃を受けたのである。
バニーガールは、口元を布で覆い、あまり顔が判別できないようにしているが、ユナにはわかる。
騎士団の中でも主に密偵役として活躍している、元錬金術師の少女、トゥナだ。まさかのバニーガールの姿で、サゼフト王国の女王を直接襲撃するとは、いったい、何を考えているのだろうか。
(まさか――⁉)
この件には、アーフリードも関係しているのか、と思い、その顔を見てみると、彼女は平然とした様子でいる。トゥナには当然気付いているであろうに、そ知らぬ顔だ。
それどころか、剣を抜いて、大見得を切りながら、こう言い放った。
「やあやあ! これはまた大胆だな! サゼフト女王を狙って襲ってくるだけでなく、バニーガールの格好で戦おうとは! しかし、残念だったな! 今晩は私がここにいる! ガルズバル騎士団の団長である、この私が! 女王には指一本触れさせないぞ!」
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