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第46話 東洋の武術家バニー・クークー
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カジノフロアには、バニー達がたむろしている。営業時間外であり、主に残っているのはディーラーバニーだ。自分の卓で、明日以降のゲームをどうやって進めるか、シミュレーションしている。
麻雀の卓では、東国ファンロンからやって来た少女クークーが、牌を動かして、あれこれ考えている。レオタードに東洋柄の刺繍が施されており、髪の毛もお団子ヘアと、東洋テイスト溢れる彼女は、お客さん達の間でも人気が高い。ひっきりなしに対戦相手が来るが、中にはよからぬ企みを抱いてやってくる者もいる。
基本的にはイカサマをすることのないクークーだが、万が一に備えて、手持ちの牌をすり替える技も練習している。それは同時に、対戦相手のイカサマも見破るスキルを磨くことになる。
「……ん?」
フロアに、集団でバニー達が入ってきた。
何か違和感を抱いたクークーは、そっちのほうへと注目する。
先頭を進むバニーは、レオタードが敗れており、胸部が露わになっている。その胸板は、明らかに男性のそれであり、女子ではない。
「不審者だよ」
近くに立っている黒服へと、クークーは声をかけた。
黒服は頷くと、さっそく侵入者のバニー達へと近付いていく。
「おい、お前達、いったい何を」
警戒しながら、声をかけた黒服だったが、直後、その頭に、ショートヘアの紫バニーがハイキックを叩きこんだ。たったの一撃で、黒服は吹っ飛び、床に倒れて、そのまま動かなくなった。
たちまち、フロア内は騒然となった。
黒服達が一斉に侵入者のバニー達へと攻めかかり、ディーラーバニー達は巻き添えを食らわないよう退避する。
そんな中で、クークーだけは、武術の心得もあるので、自身も戦闘領域へと突き進んでいく。
「あれは……!」
よく見れば、敗れたレオタードを着ている少年バニーは、いつだかカジノを荒らした東国の少年イスカだ。
そして、一番後ろには、ニハルがいる。
「ははーん! 読めた!」
ニハルは、ルドルフに捕まり、このカジノに幽閉されたと聞いている。それなのに、こうしてイスカ達と自由に動き回っており、さらにこのフロアを急襲している、ということは……きっと、仲間に助けられたのだろう。
「なるほどなるほど、完全に理解した! だったら!」
クークーは駆け出し、黒服とバニー達の戦闘の場へと飛び込んだ。
そして、黒服の一人へと、掌底をお見舞いした。
「ぐああ⁉」
まさかの味方であるディーラーバニーに奇襲を受けて、黒服は驚きの目を向けながら、吹っ飛ばされる。
ビックリしたのは、黒服だけではない。
「え⁉ うそ、なんで⁉」
ニハルもまた、目を丸くしている。
「君達、このカジノを攻略しに来たんでしょ」
「う、うん。まあ、そんなところだけど」
「だったら、ボクも手伝うよ。最近、ルドルフに夜の世話をしろってしつこく迫られてて、正直うんざりしてたんだ」
このクークーの参戦は、黒服達に衝撃を与えた。
まさか、ディーラーバニーが寝返るとは、思ってもいなかったのだ。
「う、裏切る気か、クークー!」
「そーだよ。ボクも自分の貞操が大事だからね。ニハル達の味方をするよ♪」
「おのれええ!」
このフロアではリーダー格の、スキンヘッドの黒服が、怒号を上げて殴りかかる。
そのパンチを、軽やかにかわしたクークーは、カウンターで相手の顎へと掌底を叩き込んだ。
「ぐぶっ!」
スキンヘッドの黒服は、歯と歯がぶつかるほどの衝撃を受け、後方へよろめいた。しかし、さすがにリーダー格だけあって、簡単には倒れない。
「おのれ! クークー!」
早くも体勢を立て直したスキンヘッドの黒服は、高速で後ろ回し蹴りを放った。
その蹴り足を、円を描く優雅な動きで、クークーは受け流し、そこから流れるような動きで、相手の軸足を蹴り払った。
足払いを食らったスキンヘッドの黒服は、転倒してしまう。
そこへ、追い打ちで、クークーは掌底の一撃を叩きつけた。
「ごふっ⁉」
スキンヘッドの黒服は呻き、昏倒する。
リーダー格が倒されたことで、他の黒服達に動揺が走った。統制が取れなくなり、動きも鈍り始める。
そこからは一方的な戦いだった。イスカ、クイナ、クークーの三人が暴れ回って、時にはテーブルや椅子もひっくり返しながら、黒服達を次々と気絶させ、あっという間に全員掃討してしまった。
レジーナが、クークーに近寄った。
「クークー。私達、賞品の武器を取りに来たの」
「そんなことだろうと思ったよ、レジーナ♪ ボクも一緒に行くよ」
「保管庫には、より精鋭達が守備で詰めている。大丈夫?」
「平気平気♪ ボク、けっこう戦えるよ♪」
こうして、心強い武術家バニーのクークーを味方に引き入れたニハル達は、賞品の保管庫を目指して、カジノフロアの奥へと進んでいった。
※ ※ ※
二分ほど遅れて、ルドルフが、護衛兵達を連れて、カジノフロアに飛び込んできた。
床に倒れている黒服達を見て、ピキピキと、額に青筋を立てる。
「この役立たずどもが!」
近くの黒服を蹴り飛ばし、ペッと唾を吐く。
「俺の城で好き放題暴れやがって! 見ていろ! 全員捕まえて、犯して、犯して、犯しまくってやる!」
凶暴なセリフを吐きながら、ルドルフは、ニハルらの後を追って、護衛兵達とともに駆けていく。捕まえる、と言いながら、剣の刃をギラつかせており、命を奪うのもいとわない構えであった。
麻雀の卓では、東国ファンロンからやって来た少女クークーが、牌を動かして、あれこれ考えている。レオタードに東洋柄の刺繍が施されており、髪の毛もお団子ヘアと、東洋テイスト溢れる彼女は、お客さん達の間でも人気が高い。ひっきりなしに対戦相手が来るが、中にはよからぬ企みを抱いてやってくる者もいる。
基本的にはイカサマをすることのないクークーだが、万が一に備えて、手持ちの牌をすり替える技も練習している。それは同時に、対戦相手のイカサマも見破るスキルを磨くことになる。
「……ん?」
フロアに、集団でバニー達が入ってきた。
何か違和感を抱いたクークーは、そっちのほうへと注目する。
先頭を進むバニーは、レオタードが敗れており、胸部が露わになっている。その胸板は、明らかに男性のそれであり、女子ではない。
「不審者だよ」
近くに立っている黒服へと、クークーは声をかけた。
黒服は頷くと、さっそく侵入者のバニー達へと近付いていく。
「おい、お前達、いったい何を」
警戒しながら、声をかけた黒服だったが、直後、その頭に、ショートヘアの紫バニーがハイキックを叩きこんだ。たったの一撃で、黒服は吹っ飛び、床に倒れて、そのまま動かなくなった。
たちまち、フロア内は騒然となった。
黒服達が一斉に侵入者のバニー達へと攻めかかり、ディーラーバニー達は巻き添えを食らわないよう退避する。
そんな中で、クークーだけは、武術の心得もあるので、自身も戦闘領域へと突き進んでいく。
「あれは……!」
よく見れば、敗れたレオタードを着ている少年バニーは、いつだかカジノを荒らした東国の少年イスカだ。
そして、一番後ろには、ニハルがいる。
「ははーん! 読めた!」
ニハルは、ルドルフに捕まり、このカジノに幽閉されたと聞いている。それなのに、こうしてイスカ達と自由に動き回っており、さらにこのフロアを急襲している、ということは……きっと、仲間に助けられたのだろう。
「なるほどなるほど、完全に理解した! だったら!」
クークーは駆け出し、黒服とバニー達の戦闘の場へと飛び込んだ。
そして、黒服の一人へと、掌底をお見舞いした。
「ぐああ⁉」
まさかの味方であるディーラーバニーに奇襲を受けて、黒服は驚きの目を向けながら、吹っ飛ばされる。
ビックリしたのは、黒服だけではない。
「え⁉ うそ、なんで⁉」
ニハルもまた、目を丸くしている。
「君達、このカジノを攻略しに来たんでしょ」
「う、うん。まあ、そんなところだけど」
「だったら、ボクも手伝うよ。最近、ルドルフに夜の世話をしろってしつこく迫られてて、正直うんざりしてたんだ」
このクークーの参戦は、黒服達に衝撃を与えた。
まさか、ディーラーバニーが寝返るとは、思ってもいなかったのだ。
「う、裏切る気か、クークー!」
「そーだよ。ボクも自分の貞操が大事だからね。ニハル達の味方をするよ♪」
「おのれええ!」
このフロアではリーダー格の、スキンヘッドの黒服が、怒号を上げて殴りかかる。
そのパンチを、軽やかにかわしたクークーは、カウンターで相手の顎へと掌底を叩き込んだ。
「ぐぶっ!」
スキンヘッドの黒服は、歯と歯がぶつかるほどの衝撃を受け、後方へよろめいた。しかし、さすがにリーダー格だけあって、簡単には倒れない。
「おのれ! クークー!」
早くも体勢を立て直したスキンヘッドの黒服は、高速で後ろ回し蹴りを放った。
その蹴り足を、円を描く優雅な動きで、クークーは受け流し、そこから流れるような動きで、相手の軸足を蹴り払った。
足払いを食らったスキンヘッドの黒服は、転倒してしまう。
そこへ、追い打ちで、クークーは掌底の一撃を叩きつけた。
「ごふっ⁉」
スキンヘッドの黒服は呻き、昏倒する。
リーダー格が倒されたことで、他の黒服達に動揺が走った。統制が取れなくなり、動きも鈍り始める。
そこからは一方的な戦いだった。イスカ、クイナ、クークーの三人が暴れ回って、時にはテーブルや椅子もひっくり返しながら、黒服達を次々と気絶させ、あっという間に全員掃討してしまった。
レジーナが、クークーに近寄った。
「クークー。私達、賞品の武器を取りに来たの」
「そんなことだろうと思ったよ、レジーナ♪ ボクも一緒に行くよ」
「保管庫には、より精鋭達が守備で詰めている。大丈夫?」
「平気平気♪ ボク、けっこう戦えるよ♪」
こうして、心強い武術家バニーのクークーを味方に引き入れたニハル達は、賞品の保管庫を目指して、カジノフロアの奥へと進んでいった。
※ ※ ※
二分ほど遅れて、ルドルフが、護衛兵達を連れて、カジノフロアに飛び込んできた。
床に倒れている黒服達を見て、ピキピキと、額に青筋を立てる。
「この役立たずどもが!」
近くの黒服を蹴り飛ばし、ペッと唾を吐く。
「俺の城で好き放題暴れやがって! 見ていろ! 全員捕まえて、犯して、犯して、犯しまくってやる!」
凶暴なセリフを吐きながら、ルドルフは、ニハルらの後を追って、護衛兵達とともに駆けていく。捕まえる、と言いながら、剣の刃をギラつかせており、命を奪うのもいとわない構えであった。
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