幻想世界のバニーガールがスキル「ギャンブル無敗」で思うがままに人生を謳歌する、そんなちょっとエッチな物語

逢巳花堂

文字の大きさ
上 下
38 / 102

第38話 いざルドルフの部屋へ

しおりを挟む
 さっそく作戦決行となった。

 イスカは、レジーナに案内されて、カジノの五階――最上階にある、ルドルフの部屋へと向かう。アイヴィーとクイナは、万が一に備えて、レジーナの部屋で待機することとなった。

 外からカジノを見た時、巨大な要塞のように感じたものだが、いざ中を歩いてみると、あらためてその規模の大きさに驚かされる。

 メインとなるカジノフロアは一階だけにあり、二階から上は、また違った機能を担っている。

 二階は、客室フロア。このカジノに寝泊まりする人々を受け入れるホテルとしてのフロアになっている。

 三階は、娯楽フロア。中央に巨大な噴水があるのが特徴の、イベントやショーを開催するための特殊なフロアである。

 四階は、飲食フロア。ありとあらゆる飲食店が、立ち並んでいる。

 そして最上階の五階。

「これは……!」

 イスカはフロアに入った途端、一目でわかる異様な雰囲気に、息を呑んだ。

 廊下を、完全武装した兵士達が行き交っている。鎧の音が鳴り響いており、かなり物々しい。バニーガールの格好をした自分達がこのフロアにいるのは、場違いな気がするほどだ。

「動揺しないで。このフロアは、ルドルフの部屋があるから、特に警備が厳重なの。でも、バニーガールはここに来ても怪しまれない。兵士達も、また誰か、ルドルフに抱かれに来たんだ、くらいにしか思わないから」
「わ、わかった……!」

 気持ちを落ち着かせたイスカは、ムン! と心の中で気合を入れて、努めて平然としている風を装いながら、廊下を進んでいく。

 歩いていく内に、妙なことに気がつき始めた。

 兵士達がみんなこっちを見ている。それも、視線は、主にイスカへと集まっているようだ。

「なんか……見られてる……」
「ああ。たぶん、あなたがかなり可愛いバニーガールだから、みんな見とれてるんだと思う」
「うわあ……なんだか嬉しくない……」

 もう少しでルドルフの部屋、というところで、いきなり、

「おう! レジーナではないか!」

 筋骨隆々とした髭もじゃの老戦士が、大きな声で話しかけてきた。

「リヒャルト。今日の指揮は、あなたがとっているのね」
「うむ! アリ一匹とて通さぬぞ!」

 リヒャルトは、ガッハッハッ! と豪快に笑い、それからイスカのほうへと目を向けてきた。

「見かけぬ顔だな! 新入りか!」
「あ……えっと……」
「よい! 何も言わぬでよい! このフロアへ来たバニーガールに、どのような役目があるか、わしは知っておる!」

 そう言ってから、突然、リヒャルトはダバー! と涙を流し始めた。

「大変だのう……! その若さで、かように過酷な勤めをやらされるとは……! 少しでも、そなたに幸あらんことを祈っておるぞ……!」
「そう思っているのなら、あなたからルドルフにもの申したらどうなの」

 レジーナの言葉に、リヒャルトは涙を拭ってから、かぶりを振り振り、沈んだ声で返してきた。

「わしにはできんのだよ。ルドルフ殿には、昔、戦場で命を救われた恩がある。その恩に報いるため、こうして仕えておるのだ……」
「本意じゃなさそうに見えるけど」
「これ以上は、わしの口からは、なにも言えん」

 心底つらそうな表情で、リヒャルトはため息をついた。

 イスカは、この老戦士に好感を抱いていた。正義感があり、義理堅い。ルドルフのような男に仕えさせるのはもったいないくらいだ。

「とにかく、だ!」

 リヒャルトは、イスカの目をしっかりと見据えて、力強く頷いた。

「苦しいこと、つらいことがあれば、わしに相談するのだ! 無力かもしれぬが、悩みを聞くことくらいは出来る。一人で抱え込まぬことが大事だ!」
「あ、ありがとうございます……」

 イスカは苦笑しながら、お礼を言う。

 リヒャルトと別れて、少し歩いたところで、ルドルフの部屋の前に辿り着いた。

「さて、ここまで来たけど、問題はあいつが部屋にいるかどうか」
「部屋にいたら、作戦Bだね」
「そう。あいつはバニーを抱く前に、必ず体を洗って身を清める。その時、チャンスがあるわ。鍵の置き場所は、頭に入っているわね?」
「うん。ベッドの横の棚、二段目のところ」
「よし、行ってきて」

 少しばかり深呼吸をしてから、イスカは、コンコン、とドアを叩いた。できることなら、ルドルフ不在であってほしかった。

 しかし、

「誰だ」

 中から、ルドルフの声が聞こえてきた。

 この瞬間、作戦Bへと切り替わった。

 作戦B。それは、ルドルフが部屋にいた場合の計画。鍵を手に入れるには、ルドルフを一度ベッドの側から追い出さないといけない。そのためには、ルドルフを興奮させて、お風呂へと追いやる必要がある。

 すなわち、色仕掛け作戦だ。

(これもニハルさんのため! ニハルさんのため!)

 何度も呪文のように頭の中で唱えて、イスカはドアを開けた。

「誰だ、お前は」

 ベッドの上で、バスローブを着た状態で、ルドルフはくつろいでいる。手に持つグラスの中には、葡萄酒らしきものが入っている。少々、酔っているようだ。

「あ、新しくバニーガールとなりました、カルラです」

 とりあえず、このカジノへ入る時に付けた偽名を名乗り、部屋の中に入った。

 もしもネネが、ルドルフにイスカの正体を告げ口していたらアウトだったが、どうやら何も伝えていないのか、それともルドルフの記憶に残っていないのか、「カルラ」の名前を聞いただけでは、特に目立った反応は無かった。

 が、イスカの顔を見ている内に、ルドルフの目の色が変わってきた。

「ほう……」

 たちまち好色な顔つきになり、ルドルフは舌なめずりした。

「いいぞ。肉づきはあまりよくないが、顔は俺好みだ。今晩は楽しめそうだな」

 クイクイ、と手招きしてくる。ベッドの上に乗れ、というのだ。

 もうどうにでもなれ! の精神で、イスカはゆっくりと近づき、ベッドの上に這い上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...