33 / 102
第33話 イスカバニーは大人気
しおりを挟む
マザーバニーの部屋を出たイスカ達は、暗い表情を浮かべている。
まさか全部見抜かれてしまうとは思ってもいなかった。しかも、ネネは見抜いた上で、イスカ達をカジノに受け入れたのである。
(やられた……!)
ネネのお供バニー達に案内されて、バニーガール部屋へと移動しながら、イスカは唇を噛んだ。
密かに潜入して、ニハルを救い出そうと考えていたのに、これでは自由に身動きが取れない。それどころか、敵陣の中で四六時中監視されているわけで、事実上の軟禁状態である。
しかも、ライカはさっそく、ネネの側に侍らされてしまった。
ライカのサポートもない中、どうやってこれから立ち回ればいいというのか。
「ここが、あなた達の部屋よ」
扉を開けて通されたのは、縦長の大きな部屋だ。壁に沿って左右にベッドが並んでおり、それぞれ荷物を置く棚が据え付けられている。
いまは勤務時間中だからか、一人もバニーガールはいない。
「バニーガールはみんな、この部屋で寝起きする。ディーラーバニーくらいになれば個室を割り当てられるけど、あなた達はウェイターバニーだから、みんなと一緒の部屋ね」
三人とも、バラバラの場所のベッドに案内された。ネネのお供バニー達は、案内するだけすると、どこかへ去っていった。
さっそく、アイヴィーとクイナは、イスカのベッドのところへと集まった。
「さて、どーするよ? まさか、真面目にバニーの仕事をするつもりじゃねーだろうな」
「馬鹿を言うな。私達はルドルフを倒すためにここへ来たのだぞ」
「いや、師匠、その前にニハルさんを助け出さないと」
「イスカ、どちらにせよルドルフをなんとかしないことには、ニハルを助けることは難しい。我々はいま、敵の檻の中にいるようなものだからな」
「それに……あのネネとかいうマザーバニー……厄介だぜ」
アイヴィーは険しい表情になった。
「巨人族のクオーターだ。本来の巨人族のサイズじゃねえけど、それでも、尋常じゃないパワーを持っているはずだ。その上、オレ達の考えを見透かしてきた。なんかのスキル持ちなのは間違いない」
実のところ、ネネが心を読めると看破したのは、ライカだけである。そのライカは、他の三人に、自分の発見を伝える暇がなかった。だから、誰も、ネネがどんな能力を持っているか、知らない。だけど、アイヴィーは、ほぼ答えに近付いている。
「ルドルフだけじゃなくて、ネネも相手しなければならないとなると、かなり骨が折れる。おまけに、このカジノ、他にも手練れが隠れていそうだしな」
「武器を持ち込めなかったのは、痛いな」
「仕方ねーだろ。どこの世界に、武器持ちで、はいよろしくお願いします、って訪れるバニーガールがいるんだよ」
三人とも、黙りこんだ。
ここから先のアクションが、どうにも思いつかない。
「とにかく、情報収集だ。まずはニハルがどこにいるのか、調べる必要がある」
「ニハルさん……大丈夫かな……」
「気にしていてもしょーがねえだろ。ルドルフに何されているかわからねえけど、そこは無事だって信じてやるしかない」
イスカが心配しているのは、ニハルの貞操の問題もあるが、それだけではない。
彼女は、処女を奪われたら、スキルを失ってしまう。もしもそんな事態になったら、ますますこの先絶望的だ。使いようによっては無敵の能力「ギャンブル無敗」は、ニハルを救い出した後も、必要となってくる。
と、そこへ、先輩となるバニー達がやって来た。
「さあ、支度して! さっそくフロアで給仕をしてもらうわよ!」
「ほらほら、ぼんやりしない! 急いで!」
三人はやむを得ず、フロアへと出ることにした。
※ ※ ※
三者三様。
カジノのフロアで、ドリンクやフードの給仕をやらされることとなった三人は、それぞれ向き不向きが如実に露わになった。
アイヴィーは一番そつなくこなしている。お客さんに口説かれても、いつもの調子で怒ったりせず、「やだーもー」とふだんは使わないような言葉遣いでやり過ごしたりしている。その手慣れた様子からして、どこか酒場で働いていた経験でもあるのだろう。
クイナもまた、無愛想ではあるが、淡々と仕事をこなしている。武術のマスタークラスである彼女は、体幹が優れているため、姿勢も綺麗だ。中には、見惚れている客もいる。
で、イスカである。
「わ、わわ! ごめんなさい!」
こちらでは、お客さんの服にドリンクをこぼしてしまったり、
「あああ、すみません!」
あちらでは、うっかりお客さんの足を踏んでしまったり。
向き不向きで言ったら、明らかにウェイターに向いていない。言うなれば、ドジっ子である。
ところが、そんなイスカのことを、どのお客さんも許してくれた。
「いいんだよ、気にしないで」
「いやあ、君みたいな子に踏まれて、光栄だなあ」
みんな、イスカバニーの可愛さにやられて、すっかりデレデレなのである。
一時間ほど経過したところで、早くも、イスカの噂はフロア中に広まっていた。
むちゃくちゃ可愛いバニーがいるらしい。
一目見てみたい。
そんな理由で、イスカが担当しているエリアのあたりに、お客さんが集中する事態となった。他のエリアの卓は閑散とし、イスカのいるあたりの卓は大勢の客で賑わう。
「すっげえな……」
「ああ……」
アイヴィーとクイナは、お客さん達に好色な目を向けられながら、あたふたと一所懸命働いているイスカを見て、揃って感嘆の声を上げるのであった。
まさか全部見抜かれてしまうとは思ってもいなかった。しかも、ネネは見抜いた上で、イスカ達をカジノに受け入れたのである。
(やられた……!)
ネネのお供バニー達に案内されて、バニーガール部屋へと移動しながら、イスカは唇を噛んだ。
密かに潜入して、ニハルを救い出そうと考えていたのに、これでは自由に身動きが取れない。それどころか、敵陣の中で四六時中監視されているわけで、事実上の軟禁状態である。
しかも、ライカはさっそく、ネネの側に侍らされてしまった。
ライカのサポートもない中、どうやってこれから立ち回ればいいというのか。
「ここが、あなた達の部屋よ」
扉を開けて通されたのは、縦長の大きな部屋だ。壁に沿って左右にベッドが並んでおり、それぞれ荷物を置く棚が据え付けられている。
いまは勤務時間中だからか、一人もバニーガールはいない。
「バニーガールはみんな、この部屋で寝起きする。ディーラーバニーくらいになれば個室を割り当てられるけど、あなた達はウェイターバニーだから、みんなと一緒の部屋ね」
三人とも、バラバラの場所のベッドに案内された。ネネのお供バニー達は、案内するだけすると、どこかへ去っていった。
さっそく、アイヴィーとクイナは、イスカのベッドのところへと集まった。
「さて、どーするよ? まさか、真面目にバニーの仕事をするつもりじゃねーだろうな」
「馬鹿を言うな。私達はルドルフを倒すためにここへ来たのだぞ」
「いや、師匠、その前にニハルさんを助け出さないと」
「イスカ、どちらにせよルドルフをなんとかしないことには、ニハルを助けることは難しい。我々はいま、敵の檻の中にいるようなものだからな」
「それに……あのネネとかいうマザーバニー……厄介だぜ」
アイヴィーは険しい表情になった。
「巨人族のクオーターだ。本来の巨人族のサイズじゃねえけど、それでも、尋常じゃないパワーを持っているはずだ。その上、オレ達の考えを見透かしてきた。なんかのスキル持ちなのは間違いない」
実のところ、ネネが心を読めると看破したのは、ライカだけである。そのライカは、他の三人に、自分の発見を伝える暇がなかった。だから、誰も、ネネがどんな能力を持っているか、知らない。だけど、アイヴィーは、ほぼ答えに近付いている。
「ルドルフだけじゃなくて、ネネも相手しなければならないとなると、かなり骨が折れる。おまけに、このカジノ、他にも手練れが隠れていそうだしな」
「武器を持ち込めなかったのは、痛いな」
「仕方ねーだろ。どこの世界に、武器持ちで、はいよろしくお願いします、って訪れるバニーガールがいるんだよ」
三人とも、黙りこんだ。
ここから先のアクションが、どうにも思いつかない。
「とにかく、情報収集だ。まずはニハルがどこにいるのか、調べる必要がある」
「ニハルさん……大丈夫かな……」
「気にしていてもしょーがねえだろ。ルドルフに何されているかわからねえけど、そこは無事だって信じてやるしかない」
イスカが心配しているのは、ニハルの貞操の問題もあるが、それだけではない。
彼女は、処女を奪われたら、スキルを失ってしまう。もしもそんな事態になったら、ますますこの先絶望的だ。使いようによっては無敵の能力「ギャンブル無敗」は、ニハルを救い出した後も、必要となってくる。
と、そこへ、先輩となるバニー達がやって来た。
「さあ、支度して! さっそくフロアで給仕をしてもらうわよ!」
「ほらほら、ぼんやりしない! 急いで!」
三人はやむを得ず、フロアへと出ることにした。
※ ※ ※
三者三様。
カジノのフロアで、ドリンクやフードの給仕をやらされることとなった三人は、それぞれ向き不向きが如実に露わになった。
アイヴィーは一番そつなくこなしている。お客さんに口説かれても、いつもの調子で怒ったりせず、「やだーもー」とふだんは使わないような言葉遣いでやり過ごしたりしている。その手慣れた様子からして、どこか酒場で働いていた経験でもあるのだろう。
クイナもまた、無愛想ではあるが、淡々と仕事をこなしている。武術のマスタークラスである彼女は、体幹が優れているため、姿勢も綺麗だ。中には、見惚れている客もいる。
で、イスカである。
「わ、わわ! ごめんなさい!」
こちらでは、お客さんの服にドリンクをこぼしてしまったり、
「あああ、すみません!」
あちらでは、うっかりお客さんの足を踏んでしまったり。
向き不向きで言ったら、明らかにウェイターに向いていない。言うなれば、ドジっ子である。
ところが、そんなイスカのことを、どのお客さんも許してくれた。
「いいんだよ、気にしないで」
「いやあ、君みたいな子に踏まれて、光栄だなあ」
みんな、イスカバニーの可愛さにやられて、すっかりデレデレなのである。
一時間ほど経過したところで、早くも、イスカの噂はフロア中に広まっていた。
むちゃくちゃ可愛いバニーがいるらしい。
一目見てみたい。
そんな理由で、イスカが担当しているエリアのあたりに、お客さんが集中する事態となった。他のエリアの卓は閑散とし、イスカのいるあたりの卓は大勢の客で賑わう。
「すっげえな……」
「ああ……」
アイヴィーとクイナは、お客さん達に好色な目を向けられながら、あたふたと一所懸命働いているイスカを見て、揃って感嘆の声を上げるのであった。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる