21 / 102
第21話 バニーに変身大作戦⁉
しおりを挟む
「えええええ⁉ なんでえ⁉」
仰天するイスカ。
その叫び声を聞いて、うるさそうにライカは顔をしかめた。
「別に驚くことでもないでしょ。ちょっと考えれば、すぐその考えになるじゃない」
「いや、そうはならないって!」
「どうして」
「アイヴィーさんはともかく……僕は、男だよ⁉ バニーの格好なんて……!」
「あなた、見た目は女の子だから、十分いけるわよ」
「そういう問題じゃなくって……!」
さすがにこれは、ニハルもアイヴィーも、ライカの真意を測りかねて、二人揃ってツッコミを入れてきた。
「ねえ、ライカ。私がカジノへ行くんじゃダメなの?」
「そうだよ。オレなんかがバニーガールの格好しても、ちんちくりんになるだけだぜ」
それらに対して、ライカは的確に返していく。
「おねーさまはダメ。もう顔が割れてるから。そういう意味では、私もダメ。そうなると、カジノを内部から切り崩せるのは、そこの二人だけ、ってことになるわ」
「だから、オレにバニーガールは似合わない、って」
「大丈夫。あなたも美人だから、絶対に似合う」
「胸だって、お前らほどのサイズはないし……」
「見たところDカップかな。十分あるじゃない」
「だ、だけど、そんな恥ずかしい格好、できるかよ」
「誰かがやらないと、おねーさまが、ずっとルドルフの追手に悩まされることになるよ?」
ぐぬぬ、とアイヴィーは呻いた。ニハルのことを考えつつも、逡巡している様子だ。
「本当に、それしか、方法はないの?」
一方で、イスカは少しばかり覚悟を決めた表情で、ライカに尋ねてきた。
「いまのところ、カジノに潜入できそうなのはあなた達だけだもの」
「アイヴィーさんだけだとダメ? 本当に、僕もバニーにならないといけない?」
「潜入任務に慣れているならまだしも、あなた達、どっちも素人でしょ。素人一人だけで潜り込むなんて、危険すぎるわ。二人ひと組で行動しないと」
その時、邸の中から、アイヴィーの恋人達が姿を現した。いつまでも外にいるアイヴィーのことを心配してやって来たのだ。
「お姉様、大丈夫? さっきからずっと、外にいるけど……」
三人娘のリーダー格、ナキアが、声をかけてくる。
それを見て、ライカは、「あれ、他にも女の子いるんじゃん」と呟いた。
「なーんだ。てっきり、女子ってここにいるだけかと思ってた。それだったら、その人達に潜入させてもいいかもね」
「おい! こいつらはダメだ! こいつらを危険な目には遭わせないぞ!」
アイヴィーは慌てて、ナキア達の前に立ち塞がった。
「気が変わった! やってやるよ! バニーガールでもなんでも!」
「え⁉ お姉様が、バニーガール⁉」
ナキアはときめきの眼差しで、恋人であるアイヴィーのことを見つめている。他二人の女子も同じだ。アイヴィーのバニーガール姿を想像して、興奮しているのだろう。いまにも鼻血でも出しそうな雰囲気だ。
「オレの大事な女達に危ない真似させるくらいだったら、オレがやってやらあ!」
「その心意気、ナイスね」
グッ、とライカは親指を立てて、アイヴィーのことを褒めた。
それから、イスカのほうへと顔を向ける。
「で? あなたはどーするの? やるの? やらないの?」
少しばかり、答えるのをためらっていたイスカだったが、やがて意を決して口を開いた。
「や、やるよ。僕だって、ニハルさんを守るためだったら、なんだってやってやる!」
イスカの言葉を聞いた盗賊団の面々は、ざわざわとどよめいた。まさかの男がバニーガールの格好をする、という展開に動揺しつつも、しかしイスカの可愛らしい外見だったら相当キュートなバニーになるのではないか、という予想もあり、中には好色の目でイスカを眺めている者もいた。
「よーし、決まりね! そうしたら、まずはバニースーツを調達するところから――」
「ライカ。その案、やっぱりダメ」
「ふえ⁉」
すっかりその気になっていたライカは、いきなりニハルから駄目出しを喰らって、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「だって、イスカ君とアイヴィーに、二人だけで、カジノへ潜り込んでもらうんでしょ。そんなの、危なすぎるよ」
「でも、おねーさま、そうでもしないと、ルドルフを倒すことなんて――」
「他に方法を考えて。とにかく、それだけは、ダメだから」
いつもは優しいニハルが、この時ばかりは頑固な態度を見せた。もうこれ以上話をするつもりはない、とばかりに、きびすを返し、邸の中へと入っていく。
なんだか白けた空気が、場に残った。
「あー……いや、悪くなかったと思うぜ、お前の計画」
ちょっとライカのことがかわいそうになったか、アイヴィーは慰めの言葉をかけた。
ライカは、しかし、この程度では動じてないわ、とばかりに、ツーンとした表情を見せてきた。
「別に。一発目のアイディアが採用されるとは思ってなかったもん。また新しい作戦を考えればいいだけの話だから。同情なんてしないで」
そう強気に言い放つと、彼女もまた邸の中へと入っていった。
「わりとオレ、その気になってたんだけどなー」
「僕も……方法はともかく、カジノへ潜り込む手段としては間違ってないと思っていたから……」
「ニハルのバカ。変な気をつかいやがって。もう、平和でのほほんとしたスローライフを送っていられるような状況じゃなくなっているんだぞ」
※ ※ ※
アイヴィーの発言は、まさに的を射ていた。
ちょうどその時、邸の後ろに広がる森の中に、ひっそりと身を隠している女が一人。
彼女は、険しい眼差しで、木陰から邸のほうを窺っている。
そして、目的の人物を発見すると、澄んだ声音でその相手の名を呟くのであった。
「見つけたぞ……イスカ……!」
仰天するイスカ。
その叫び声を聞いて、うるさそうにライカは顔をしかめた。
「別に驚くことでもないでしょ。ちょっと考えれば、すぐその考えになるじゃない」
「いや、そうはならないって!」
「どうして」
「アイヴィーさんはともかく……僕は、男だよ⁉ バニーの格好なんて……!」
「あなた、見た目は女の子だから、十分いけるわよ」
「そういう問題じゃなくって……!」
さすがにこれは、ニハルもアイヴィーも、ライカの真意を測りかねて、二人揃ってツッコミを入れてきた。
「ねえ、ライカ。私がカジノへ行くんじゃダメなの?」
「そうだよ。オレなんかがバニーガールの格好しても、ちんちくりんになるだけだぜ」
それらに対して、ライカは的確に返していく。
「おねーさまはダメ。もう顔が割れてるから。そういう意味では、私もダメ。そうなると、カジノを内部から切り崩せるのは、そこの二人だけ、ってことになるわ」
「だから、オレにバニーガールは似合わない、って」
「大丈夫。あなたも美人だから、絶対に似合う」
「胸だって、お前らほどのサイズはないし……」
「見たところDカップかな。十分あるじゃない」
「だ、だけど、そんな恥ずかしい格好、できるかよ」
「誰かがやらないと、おねーさまが、ずっとルドルフの追手に悩まされることになるよ?」
ぐぬぬ、とアイヴィーは呻いた。ニハルのことを考えつつも、逡巡している様子だ。
「本当に、それしか、方法はないの?」
一方で、イスカは少しばかり覚悟を決めた表情で、ライカに尋ねてきた。
「いまのところ、カジノに潜入できそうなのはあなた達だけだもの」
「アイヴィーさんだけだとダメ? 本当に、僕もバニーにならないといけない?」
「潜入任務に慣れているならまだしも、あなた達、どっちも素人でしょ。素人一人だけで潜り込むなんて、危険すぎるわ。二人ひと組で行動しないと」
その時、邸の中から、アイヴィーの恋人達が姿を現した。いつまでも外にいるアイヴィーのことを心配してやって来たのだ。
「お姉様、大丈夫? さっきからずっと、外にいるけど……」
三人娘のリーダー格、ナキアが、声をかけてくる。
それを見て、ライカは、「あれ、他にも女の子いるんじゃん」と呟いた。
「なーんだ。てっきり、女子ってここにいるだけかと思ってた。それだったら、その人達に潜入させてもいいかもね」
「おい! こいつらはダメだ! こいつらを危険な目には遭わせないぞ!」
アイヴィーは慌てて、ナキア達の前に立ち塞がった。
「気が変わった! やってやるよ! バニーガールでもなんでも!」
「え⁉ お姉様が、バニーガール⁉」
ナキアはときめきの眼差しで、恋人であるアイヴィーのことを見つめている。他二人の女子も同じだ。アイヴィーのバニーガール姿を想像して、興奮しているのだろう。いまにも鼻血でも出しそうな雰囲気だ。
「オレの大事な女達に危ない真似させるくらいだったら、オレがやってやらあ!」
「その心意気、ナイスね」
グッ、とライカは親指を立てて、アイヴィーのことを褒めた。
それから、イスカのほうへと顔を向ける。
「で? あなたはどーするの? やるの? やらないの?」
少しばかり、答えるのをためらっていたイスカだったが、やがて意を決して口を開いた。
「や、やるよ。僕だって、ニハルさんを守るためだったら、なんだってやってやる!」
イスカの言葉を聞いた盗賊団の面々は、ざわざわとどよめいた。まさかの男がバニーガールの格好をする、という展開に動揺しつつも、しかしイスカの可愛らしい外見だったら相当キュートなバニーになるのではないか、という予想もあり、中には好色の目でイスカを眺めている者もいた。
「よーし、決まりね! そうしたら、まずはバニースーツを調達するところから――」
「ライカ。その案、やっぱりダメ」
「ふえ⁉」
すっかりその気になっていたライカは、いきなりニハルから駄目出しを喰らって、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「だって、イスカ君とアイヴィーに、二人だけで、カジノへ潜り込んでもらうんでしょ。そんなの、危なすぎるよ」
「でも、おねーさま、そうでもしないと、ルドルフを倒すことなんて――」
「他に方法を考えて。とにかく、それだけは、ダメだから」
いつもは優しいニハルが、この時ばかりは頑固な態度を見せた。もうこれ以上話をするつもりはない、とばかりに、きびすを返し、邸の中へと入っていく。
なんだか白けた空気が、場に残った。
「あー……いや、悪くなかったと思うぜ、お前の計画」
ちょっとライカのことがかわいそうになったか、アイヴィーは慰めの言葉をかけた。
ライカは、しかし、この程度では動じてないわ、とばかりに、ツーンとした表情を見せてきた。
「別に。一発目のアイディアが採用されるとは思ってなかったもん。また新しい作戦を考えればいいだけの話だから。同情なんてしないで」
そう強気に言い放つと、彼女もまた邸の中へと入っていった。
「わりとオレ、その気になってたんだけどなー」
「僕も……方法はともかく、カジノへ潜り込む手段としては間違ってないと思っていたから……」
「ニハルのバカ。変な気をつかいやがって。もう、平和でのほほんとしたスローライフを送っていられるような状況じゃなくなっているんだぞ」
※ ※ ※
アイヴィーの発言は、まさに的を射ていた。
ちょうどその時、邸の後ろに広がる森の中に、ひっそりと身を隠している女が一人。
彼女は、険しい眼差しで、木陰から邸のほうを窺っている。
そして、目的の人物を発見すると、澄んだ声音でその相手の名を呟くのであった。
「見つけたぞ……イスカ……!」
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました
サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。
「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」
やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる