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第28話 ダンジョン規制法に反対するデモ配信
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「そんなこと、オレに相談されてもなあ」
バニラシェイクをストローで吸い込んでから、リュカは肩をすくめた。
放課後、近くのマックで俺達は作戦会議を行うことになった。最初、リュカは「なんでオレが」と渋っていたけれど、何度か頭を下げたことで、やっと折れてくれた。
とにかく、校則のことで困っているのだから、同じ高校の友人に相談するのが一番だ。アナスタシアだとか、キリク氏だとか、そのあたりは相談されても困るだろう。
とはいえ、リュカもまた面倒くさく感じているようだ。
「頼むぜマイフレンド」
「校則のことはオレにだって、どうにもできねーよ」
「つ、月見バーガーをおごるので、どうだ」
「お前んちの経済事情を知っていておごってもらうほど、オレは鬼畜じゃない」
「その御仏の如き慈悲の心で、どうか、お知恵を」
「だーかーら、思いつかない、って言うの」
やれやれ、と呆れた感じで、リュカは頭を掻きむしった。
「時代の流れ、ってやつだろうな。ダンジョン規制法が通るのより先に、色々と縛りが入ってくるのは間違いない。ちょっと遅いくらいだ」
「まあ、普通に配信サイトで人死にの様子とかリアルタイムで映ったりするしな……」
「一応、それ系の動画は、運営が気付き次第削除しているけど、それでもリアルタイムだったら止めようがない」
「ダンジョン配信で荒稼ぎ、っていうのは、もう夢まぼろし、になるのかな……」
うーん、とひとしきり悩んだ後、俺はアイスコーヒーを飲んだ。カフェインを入れれば、少しは閃くものがあるかもしれない、と思ってのことだったけど、何も思い浮かばなかった。
そうしている間に、リュカはスマホを操作して、情報収集してくれている。ありがたいぜ、マイフレンド。
「お」
リュカが声を上げた。何か見つけたようだ。
「見ろよ。こんなイベントがあるぜ」
そう言って、リュカが見せてきた画面には、「ダンジョン規制法に反対するデモ配信」というタイトルのページが表示されている。
どうやら、ダンジョン規制法案が通るのに待ったをかけるため、このようなアクションを取るようだ。配信を通して、広く世間一般にダンジョン規制法の問題点を認知してもらおう、という考えらしい。
場所は、青木ヶ原樹海ダンジョン。面積30平方キロメートルと、新宿ダンジョンより約1.6倍も大きい、世界レベルで見ても有数の巨大ダンジョン。ただし、危険度は最低のEランクとされている、わりと安全なところだ。
発起人は、まさかの日本No.1Dライバーである、カルマ業《ごう》。
「このイベント、ヤバいな……!」
「安全なダンジョンで、一斉に大勢のDライバーが配信を行うことで、ダンジョンは危険な場所ばかりじゃない、ってのをアピールするのとともに、日本中の視聴者にダンジョン規制法案のことを知ってもらって、反対の輪を広げよう、ってところなんだろうな」
「あのカルマ業が発起人、って時点で胸熱だって! 配信はあまり見たことないけど、名前だけなら、HIKAKINなみに有名だろ、この人」
「こいつに参加してみたら?」
「だけど、今日、学校で禁止されたばかり……」
「お前の場合、生活がかかってるだろ。学校側の言い分なんて消し飛ばすくらい、かえって堂々とやりゃあいいんだよ、堂々と。それで、学校から何か言われたら、言い返してやればいいんだ」
確かに、生活がかかっている。
病気の妹のこともある。
俺はこんなところで一攫千金の夢を諦めるわけにはいかないんだ。
「ところで、カンナは収益化の申請は出したの?」
「ああ。すんなり通ったよ」
「じゃあ、ますますこのデモ配信に参加しないと、だな」
「よし、さっそく、ナーシャに連絡する!」
LINEの画面を開き、ナーシャへ、デモ配信の情報を送ってやった。
一旦、彼女からの返信が来るのを待とうと思って、スマホの画面から顔を上げると、なぜか、リュカがふてくされたように座席にもたれかかって、バニラシェイクをチュウウと飲んでいる。
「どうした? 何かあったか?」
「あのさあ、ひとつ聞きたいんだけど、御刀アナスタシアとはどういう関係?」
「? パートナーだけど」
「それはまたどういう意味のパートナーだよ」
「?? 配信を共にする、戦友的ポジション、ってところかな」
いったい、リュカが何を聞きたいのか、よくわからない。
「ま、それならいいんだけどな」
「なんだよ。何か言いたそうだな」
「別に」
「急にどうした。怒ってるのか」
「怒ってねーよ」
ぷう、とリュカは頬をふくらませた。
そんなやり取りをしている内に、ナーシャから返事が来た。
快諾だった。
さらに、最新型のドローン配信機を一台提供してくれるらしい。レンタルではなく、プレゼントしてくれる、というのだ。さすがお嬢様、やることが太っ腹である。
青木ヶ原樹海ダンジョンには、きっと多くのDライバーが参加することだろう。そういった人達と知り合いになれるかもしれない、と考えると、すごくワクワクしてくる。
こうして、次のダンジョンは、青木ヶ原樹海ダンジョンに挑むことで決定したのであった。
バニラシェイクをストローで吸い込んでから、リュカは肩をすくめた。
放課後、近くのマックで俺達は作戦会議を行うことになった。最初、リュカは「なんでオレが」と渋っていたけれど、何度か頭を下げたことで、やっと折れてくれた。
とにかく、校則のことで困っているのだから、同じ高校の友人に相談するのが一番だ。アナスタシアだとか、キリク氏だとか、そのあたりは相談されても困るだろう。
とはいえ、リュカもまた面倒くさく感じているようだ。
「頼むぜマイフレンド」
「校則のことはオレにだって、どうにもできねーよ」
「つ、月見バーガーをおごるので、どうだ」
「お前んちの経済事情を知っていておごってもらうほど、オレは鬼畜じゃない」
「その御仏の如き慈悲の心で、どうか、お知恵を」
「だーかーら、思いつかない、って言うの」
やれやれ、と呆れた感じで、リュカは頭を掻きむしった。
「時代の流れ、ってやつだろうな。ダンジョン規制法が通るのより先に、色々と縛りが入ってくるのは間違いない。ちょっと遅いくらいだ」
「まあ、普通に配信サイトで人死にの様子とかリアルタイムで映ったりするしな……」
「一応、それ系の動画は、運営が気付き次第削除しているけど、それでもリアルタイムだったら止めようがない」
「ダンジョン配信で荒稼ぎ、っていうのは、もう夢まぼろし、になるのかな……」
うーん、とひとしきり悩んだ後、俺はアイスコーヒーを飲んだ。カフェインを入れれば、少しは閃くものがあるかもしれない、と思ってのことだったけど、何も思い浮かばなかった。
そうしている間に、リュカはスマホを操作して、情報収集してくれている。ありがたいぜ、マイフレンド。
「お」
リュカが声を上げた。何か見つけたようだ。
「見ろよ。こんなイベントがあるぜ」
そう言って、リュカが見せてきた画面には、「ダンジョン規制法に反対するデモ配信」というタイトルのページが表示されている。
どうやら、ダンジョン規制法案が通るのに待ったをかけるため、このようなアクションを取るようだ。配信を通して、広く世間一般にダンジョン規制法の問題点を認知してもらおう、という考えらしい。
場所は、青木ヶ原樹海ダンジョン。面積30平方キロメートルと、新宿ダンジョンより約1.6倍も大きい、世界レベルで見ても有数の巨大ダンジョン。ただし、危険度は最低のEランクとされている、わりと安全なところだ。
発起人は、まさかの日本No.1Dライバーである、カルマ業《ごう》。
「このイベント、ヤバいな……!」
「安全なダンジョンで、一斉に大勢のDライバーが配信を行うことで、ダンジョンは危険な場所ばかりじゃない、ってのをアピールするのとともに、日本中の視聴者にダンジョン規制法案のことを知ってもらって、反対の輪を広げよう、ってところなんだろうな」
「あのカルマ業が発起人、って時点で胸熱だって! 配信はあまり見たことないけど、名前だけなら、HIKAKINなみに有名だろ、この人」
「こいつに参加してみたら?」
「だけど、今日、学校で禁止されたばかり……」
「お前の場合、生活がかかってるだろ。学校側の言い分なんて消し飛ばすくらい、かえって堂々とやりゃあいいんだよ、堂々と。それで、学校から何か言われたら、言い返してやればいいんだ」
確かに、生活がかかっている。
病気の妹のこともある。
俺はこんなところで一攫千金の夢を諦めるわけにはいかないんだ。
「ところで、カンナは収益化の申請は出したの?」
「ああ。すんなり通ったよ」
「じゃあ、ますますこのデモ配信に参加しないと、だな」
「よし、さっそく、ナーシャに連絡する!」
LINEの画面を開き、ナーシャへ、デモ配信の情報を送ってやった。
一旦、彼女からの返信が来るのを待とうと思って、スマホの画面から顔を上げると、なぜか、リュカがふてくされたように座席にもたれかかって、バニラシェイクをチュウウと飲んでいる。
「どうした? 何かあったか?」
「あのさあ、ひとつ聞きたいんだけど、御刀アナスタシアとはどういう関係?」
「? パートナーだけど」
「それはまたどういう意味のパートナーだよ」
「?? 配信を共にする、戦友的ポジション、ってところかな」
いったい、リュカが何を聞きたいのか、よくわからない。
「ま、それならいいんだけどな」
「なんだよ。何か言いたそうだな」
「別に」
「急にどうした。怒ってるのか」
「怒ってねーよ」
ぷう、とリュカは頬をふくらませた。
そんなやり取りをしている内に、ナーシャから返事が来た。
快諾だった。
さらに、最新型のドローン配信機を一台提供してくれるらしい。レンタルではなく、プレゼントしてくれる、というのだ。さすがお嬢様、やることが太っ腹である。
青木ヶ原樹海ダンジョンには、きっと多くのDライバーが参加することだろう。そういった人達と知り合いになれるかもしれない、と考えると、すごくワクワクしてくる。
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